楽曲について
2019年8月6日の夏の日に公開された楽曲『風薫る空の下』。
この楽曲は2020年2月19日にリリースされたアルバム「やっぱり雨は降るんだね」の収録曲。
ツユにとって初のアルバムとなっています。
誰しもが耳を傾けてしまうような独特のリズムが癖になる一曲。
はたしてどのような意味が込められているのでしょうか。
夏とあなたへの想い
あの夏へ抱く気持ち
初夏の日差しに縋っても
立ち止まってはくれないから
後ろ姿を追うだけで精一杯なんだけど ねぇ
朝焼け夕焼けこやけの中で
二人遠のいてくなら
テントウみたいになって
僕らは
出典: 風薫る空の下/作詞:ぷす 作曲:ぷす
まず押さえておきたいのが、歌詞6行目の単語についてです。
これはまさしく「天道虫」を表していると考えられます。
活動時期は春から秋と、まさにこの楽曲のテーマである夏を想起させます。
そして、幸せを運んできてくれる象徴であり、海外では聖母マリアの化身とされる。
そのような背景を加味しながら紐解いていきます。
ここでは、夏の風景を背後にあなたのことを恋憂いている主人公の様子が描かれています。
歌詞から読み取れる感情は以下の2つ。
- 照り付ける太陽への煩わしさ
- あなたの隣にいられなかったことに痛恨している様子
よって私たちが夏を聞いてイメージする「カラッと晴れ渡った心地良い夏」ではありません。
さらに、歌詞後半で述べられている状況を解釈していきます。
先程も示したように、幸せをもたらす天道虫が遠のいていく情景が描かれています。
まさにこれは幸福から不幸への転落を意味している。
自分だけが夏に乗り切れていない焦燥感を感じる1番のAメロです。
ここから主人公の心情はどのように変化していくのでしょうか。
「ごめんね」の先に
熱されて溶けた道ばたのアイスだって
元は誰かが買ったよ
そんなことばっか考えて
身が入んなくて
ごめんね
出典: 風薫る空の下/作詞:ぷす 作曲:ぷす
歌詞からその状況がすぐに想像できます。
アイスクリームが溶けて無くなっていく様子を傍観している。
これは、万物が時の流れに逆らうことは出来ないことを意味しています。
そして主人公は自身がこのような思考をしていることに対して落胆しています。
どうして主人公はアイスクリームからこのような無常さを想起したのでしょうか。
ここでは2通りの解釈を提示します。
- 自分とあなたの離れゆく関係性も抗うことが出来ないということ
- 自分の中で大きな存在だったあなたがいないことで意味無いことばかり空想してしまうこと
どちらにせよ、主人公を取り巻く感情に共通するのは「虚無感」。
そんな中で零した一言は「ごめんね」でした。
ここではまだ誰に対して、何に対しての謝罪の意かは不明です。
しかしながらここまでの文脈を辿っていくと、複数の想いが見られます。
- 夏にも負けてただ呆然としている自分への詫び
- あなたを追いかけていたのがわたしだったことへの詫び
後者の解釈は後に歌詞に登場する「劣等生」という言葉からの見解です。
続けて歌詞を追っていきます。
自分自身への想い
過去と今の対比
せいぜい
手とか繋いではしゃいだって
それだけでも見上げたものね
正解とかよく分かってないけど
まだ早いよ ちょっとまって
劣等生だい
出典: 風薫る空の下/作詞:ぷす 作曲:ぷす
あなたと手を繋いでただ無邪気に喜んでいた頃の自分を感心しています。
何故、今の自分が過去の幸せな自分を立派であると見つめているのでしょうか。
それは、現在では「劣等生」というスティグマに囚われている自分だから。
歌詞の5行目では、何かを必死に拒んでいる様子が伺えます。
これは様々な解釈が出来ると思いますが、今回は「別離」として解釈していきます。
歌詞の4行目の「正解~」には、正解だけではなく不正解という単語も隠されているのではないでしょうか。
あなたと一緒になってから別れるまでが速すぎた。
そのせいで、何がマルで何がバツなのかさえも分からないままなのです。
そして、ただ別れだけが残った不甲斐ない自分の事を「劣等生」と表現しているのでしょう。
あなたとの恋は炭酸のように淡い
心配したって損得に眩んで
この言葉の先 想像してみたって
見えてこないままのキモチを汗に流したんだ
君と夏の背を迎えてしまいそうな
風薫る空の下
サイダーみたいな恋だね
出典: 風薫る空の下/作詞:ぷす 作曲:ぷす