Mr.Children『ファスナー』をピックアップ
一見しただけでは気づかないような、深い意味が込められた歌詞。
Mr.Childrenのボーカル・桜井和寿が作る歌詞の真骨頂ではないでしょうか。
彼が表現したかったことは何なのかが分かった瞬間の爽快感たるや!
今回ご紹介するのも、そんな一曲です。
10thアルバム収録の『ファスナー』
Mr.Childrenのメジャー10枚目、デビュー10周年にリリースされたアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」。
今回取り上げる歌詞は、記念すべきアルバムの7曲目に収録されている『ファスナー』です。
軽やかに刻まれるギターの音から想像するのは、爽やかで明るい世界。
しかし歌詞をじっくり追ってみると、胸を締め付けるような空気が漂っています。
子どもたちのヒーローに隠された背中の秘密、ファスナー。それは私たちにもついている?
『ファスナー』の歌詞を深く掘り下げます!
裏表の裏側にいる君の姿
一見するとどこか性的な匂いがする冒頭の歌詞。
しかし隅々まで読み解くと、フェイクのような気がしてくるのです。
彼を締めつけるのは切ない「あれ」
昨日 君が自分から下ろしたスカートのファスナー
出典: ファスナー/歌詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
人間には表の顔、裏の顔があるといいます。
裏表が少しもない、という方もいるかもしれません。
しかし「誰でも裏表があるよね」と言われてギクリとする方のほうが多いことでしょう。
この曲の「君」もその一人。彼女の「裏」は「秘密」と読み替えることもできます。
彼女はまるで無意識だったのかもしれませんが、隠し持っていた秘密をぽろりとこぼしてしまったようです。
例えばお酒に酔っていて、他にも好きな人がいるのだと言ってしまったり。
彼を呼ぼうとして、別の人の名前を呼んでしまったり。
「僕」が言わせたわけではありません。
ですから、例えそれが「事故」であっても彼女が自ら秘密をもらしたといえるでしょう。
ファスナーを下ろしたのは、彼女自身です。
およそ期待した通りのあれが僕を締めつけた
出典: ファスナー/歌詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
「期待」は、それ通りに事が進んだら喜びにつながるはずの言葉です。
しかし彼は「期待通りのあれ」のせいで心を締めつけられてしまいました。
これは一体どういうことなのでしょうか。
彼は少し前から彼女の秘密にうすうす勘付いていたのでしょう。
その秘密は、知れば彼自身が傷付くような内容なのです。
本当は心の中で「勘違いであってくれ」と願っていたのではないでしょうか。
しかし自分の願いが大きければ大きいほど、叶わなかったときの傷は深くなります。
だから彼は「秘密を知っていたよ」「俺の勘は間違いないと思ったよ」と強がったのではないでしょうか。
誰かに向けて強がったわけではありません。自分自身に向けて強がってみせたのです。
それでも「強がり」は思いのほか弱く、胸が苦しくなりました。
大切にしなきゃならないものが
この世にはいっぱいあるという
出典: ファスナー/歌詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
二人は恋人同士であり、お互いに大事に思い合う関係です。
ですから、家族やペット、過去の思い出など彼にとって大切なものの中に、彼女がいました。
しかし昨日、彼女の秘密が秘密ではなくなり、胸に大きな傷がついた彼は一晩考えたのでしょう。
彼女のことは大切だから、どうにかして今までの関係を続けていけないか。
自分にできることは何なのか。どんな顔をして彼女に接したらいいのか。
色々と考えるうちに朝が来て、結論がでたようです。
でもそれが君じゃないこと
今日 僕は気付いてしまった
出典: ファスナー/歌詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
誰かを傷つけるような秘密をファスナーの中に隠し持っていた彼女。
そんな人をこれからも大切にする必要はないのだと、彼は気づいたのです。
彼女以外にも、もっと大切にすべき人・物があるはずだと思い至りました。