「東京絶景」は2016年の同名アルバムに収録
東京タワーのイラストが「京」に当てはめられている、アルバム『東京絶景』のジャケット。
建物の屋上で純白のチュールドレスに身を包んでいるのは吉澤嘉代子。
ちょうどアルバムタイトルに目の焦点を合わせているかのようです。
物怖じをしない、凛とした佇まいが印象的なショットですね。
2ndアルバム『東京絶景』は、日々のさりげない気づきを歌に落とし込んだ吉澤嘉代子の意欲作。
今回紹介する「東京絶景」はラストトラックに収録されており、アルバムを象徴する名曲です。
東京を舞台に、生活感のある風景や見過ごされがちな風景を吉澤嘉代子が絶景に変えていきます。
サニーデイ・サービスの曽我部恵一を起用
青春を歌った『東京』の名アルバムで知られる
曽我部恵一
香川県坂出市出身。香川県大手前中学校・高等学校卒業。1992年、立教大学法学部在学中に、サニーデイ・サービスを結成。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/曽我部恵一
「東京絶景」でアコギを弾いているのは曽我部恵一。
「東京絶景」を読み解く上で、ぜひ知っておいてほしいアーティストです。
今回のレコーディングでは、吉澤嘉代子が曲のテーマに合わせて彼に演奏を依頼しました。
曽我部恵一といえば90年代の伝説的バンド、サニーデイ・サービスのギターボーカルとして有名です。
バンドは2000年に一度解散したものの復活し、現在もライブ活動を行っています。
サニーデイ・サービスの名アルバムの一つに、1996年にリリースされた『東京』が挙げられます。
収録されているのは「東京」や「青春狂騒曲」、「恋に落ちたら」などの甘酸っぱい青春ソング。
曽我部恵一は香川県出身。大学で東京にやってきたという上京組。
さらに東京をテーマにアルバムを作っている彼は、確かに「東京絶景」にぴったりですね。
吉澤嘉代子の歌に寄り添ったアコギの演奏が、ベテランの職人技とも言うべき味を出しています。
それでは「東京絶景」のMVをご覧ください!
東京の一日を切り取った生活感のあるMV

早朝から始まる「東京絶景」のMV。
東京の日常風景と吉澤嘉代子の自然体な演技で構成されています。
白のタンクトップを身に着け、リラックスした様子で部屋のベッドに寝転がる吉澤嘉代子。
少女のようでもあり、大人の女性のようでもあり、不思議な存在感です。
MVに出てくる河川や団地、国道などは東京に住んでいれば誰もが見るよくある風景。
他に映し出されるのは電車で揺られる人々、ゴミ捨て場、室内で干されるランジェリー、電線など。
生活感に溢れた景色も、吉澤嘉代子のボーカルとともに聴くと気にならなくなり、癒やされてしまいます☆
夕暮れ時になり、線路を力強く走る電車。人々はエスカレーターに乗り帰途につきます。
まだ踊り足りなさそうな吉澤嘉代子を残してMVは終わるのでした。
続けて、気になる歌詞を読み解いていきましょう。
地方から上京した者の心境を綴る歌詞
東京で始まる新生活
東京の窓に流れてく光と影はせわしい
ダンボール山積みのなかであたらしい朝にハロウ
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
地方から東京へ上京してきた主人公。
夜になって窓から地上を見下ろせば、目に飛び込むのは車のヘッドライトや煌々と明るい街並み。
夜になれば真っ暗でひっそりと静まり返る田舎と違い、遅い時間でも人々は活発に動いています。
引っ越してきたばかりの部屋にはまだ開封していないダンボールが積み上がり...。
新しい環境で始まる新生活はこれからどうなっていくのだろう。
不安と期待が入り交じる中、夜明けとともに都会での新しい生活が幕を開けます。
慣れてくると東京の生活も悪くない
ゆくえ知れず 心配してないでしょう
夜汽車の匂い 遠くなって
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
一昔前に行われていた、夜行列車での上京。
現在では夜行バスの感覚に近いかも知れません。
道中で心細く不安に感じた夜の記憶は、時が立つにつれ次第に薄れていっています。
東京での生活に慣れるにつれて、地元を思い出す機会は減っていきました。
地元に居たときは近所の人は顔見知り。友達も多くいましたが、東京へ来ればゼロからのスタート。
アパートの隣人は素性のわからない他人だし、言葉はみんな標準語を使っています。
最初は大変でホームシックにかかったけれど、主人公はだんだんと環境に適応してきました。
親密な付き合いを望まない人にとっては、誰も知らない他人でいられる東京は暮らしやすい街。
東京の良いところも実感するようになり、今はそれなりに楽しくやっています。