心の叫び「メーデーメーデー」
何から逃げ出したくて誰に助けを求める?
石崎ひゅーいはアコースティックギターが似合うアーティストですね。
白い長袖のシャツと黒いパンツというスタイルもまた、よく似合っていると思います。
ギターの弾き語りには静かに自分の想いを伝えるイメージがあるのですが、「メーデーメーデー」は違います。
もどかしい心の叫びを吐き出すような激しさを感じるロックな曲なのです。
SOSを叫ぶ彼は何から逃げ出したくて誰に助けを求めているのでしょうか。
助けを求める「メーデーメーデー」と「SOS」
遭難信号「メーデー」とは?
飛行機が墜落しそうになったとき、パイロットが「メーデー!メーデー!」と無線で叫ぶ緊迫した場面。
映画やテレビでご覧になったことがあるかもしれませんね。
航空機などが緊急事態に陥った場合に、助けを求める言葉が「メーデー」だそうです。
メーデー(Mayday)とは、無線電話で遭難信号を発信する時に国際的に使われる緊急用符号語。フランス語の「ヴネ・メデ(venez m'aider)」、すなわち「助けに来て」に由来する。一般に人命が危険にさらされているような緊急事態を知らせるのに使われ、警察、航空機の操縦士、消防士、各種交通機関などが使う。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/メーデー (遭難信号)
曲名が「メーデーメーデー」なのに歌詞の中に何度も出てくるのは「SOS」ですが、これはなぜでしょう。
石崎ひゅーいは「SOS」のほうが言葉として響きが良いと考えたのではないでしょうか。
どんな言葉を選び、どんな曲名をつけるかというのはシンガーソングライターにとって大切なことです。
「メーデー」という言葉は1回だけ出てきますが、これには意味があるのです。
それに「メーデーメーデー」と叫んでしまっては、辛い想いが伝わらないような気もします。
電車に乗ってどこへ逃げ出す?
居場所を見つけられない苛立ち
天国行きの小田急線に乗って
楽園行きは中央線に乗って
ノスタルジーの幻は常磐線
僕には帰る場所なんてないんだ
新聞紙は命の終わりを告げ
ロックスターはこの島から消えた
女子高生たちはセンター街であぐらをかいて
何も見えない夜空を見ていた
悲劇も喜劇も炎上しちゃってる
出典: メーデーメーデー/作詞:石崎ひゅーい 作曲:石崎ひゅーい
居場所のない主人公は電車に乗ってどこかへ逃げ出したいようです。
電車は小田急でもJRでもどれでもよくて、とにかく今いる場所を離れたい。どこか遠くへ行きたい。
そんな追いつめられたような気持ちを感じさせる最初の歌詞ですね。
なにげなく手に取った新聞には誰かが死んだという記事があったのでしょう。
明るい記事よりも暗い記事がまず目に入ったり気になったりするのは、あまり良い傾向ではないかもしれません。
精神的に落ち込んだりモヤモヤしているときは、悪いニュースや嫌なことが普段より気になります。
彼はロックに憧れているようですが、苛立ちをぶつけるには激しい音楽が相応しいのでしょうね。
自分は狭い島国に閉じ込められているんだという閉塞感のようなものも感じます。
あまりお行儀のよくない女の子たちのことは、どうも好きではないようですね。
だけどそんな彼女たちの姿に少し同情を感じているようにも思えます。
最後の歌詞には現実を見る冷めた目と、すべて壊れてしまえばいいのにという願望も見えるような気がします。
心の叫びと助けを求める言葉
孤独で切ない心の叫び
SOS SOS SOS SOS
もう逃げ出したい朝から ああ死にきれない夜から 這い上がってゆく
青春も 情熱も 感動も 友情も
全部なくしてしまっても 全部忘れてしまっても
愛してるって叫びたい 生きているって叫びたいんだ
出典: メーデーメーデー/作詞:石崎ひゅーい 作曲:石崎ひゅーい
ここで我慢しきれない、というように最初のSOSを叫びます。
絶望に打ちのめされた夜が終わり、朝になればまた一日が始まって学校や会社へ行かなければならない。
それでもすべてを終わりにしたいわけではなくて、生命力を感じさせる部分でもあります。
生きていくのに大切な4つの言葉を置き去りにしてでも自分はここにいると彼は叫ぶのです。
孤独で切ない心の叫びが迸るような歌詞ですね。