星のかけらは壊した
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
このラインは意味するところを考えるよりも言葉の美しさを率直に感じたいですね。
作詞家・チャムを支える文学的素養
嘘とカメレオンのインディーズ盤「予想は嘘よ」の収録曲には「ヤミクロ」というタイトルの曲があります。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹 新潮文庫」を想起します。
「ヤミクロ」はおそらくこの作品内に登場する謎の生命体「やみくろ」にあやかっています。
チャムという女性の読書量の多さ、文学的素養の高さを物語っています。
「N氏について」の一筋縄ではいかない歌詞の深さや文学的センスの秘密もこの辺りにありそうです。
巧みに言葉を操るチャム
いや、『1+1=2』じゃないかもね
嘘つきはぐれた夜に、おいでよ
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
2回目のサビの冒頭部分です。
1回目のサビでは「嫌。」であったところが「いや、」という同音異義語に置き換えられています。
確信的な言葉の戯れが楽しいです。
歌詞自体は相変わらず常識よりも嘘がもたらしてくれる享楽に身を任せたい思いを伝えます。
創造力と想像力への賭け
愛に迷って散る花が咲いた
遊んで生きてたいの
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
もちろん現実において散った花がまた咲くことはありません。
文学的修辞においてしか散った花は咲かないでしょう。
それでも創造力と想像力の方に賭けてみて遊びましょう。
チャムには音楽が持つ「ここではない、どこか」への引力に絶対的な信頼があるのかもしれません。
終盤に向けてカメレオンのように変化する歌詞
歌詞は終盤に向けて大きく軌道修正をします。
カメレオンのようなその変化を見ていきましょう。
ああ『1+1=2』って本当?
信じていたいの
大人になってもずっと
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
これまで当たり前だとしてチャムが耳を傾けてこなかったのが「常識」という存在でした。
チャムはそれを終盤になって大人になっても信じ続けていたいと言葉にします。
この心変わりは曲がクライマックスに向かってゆく中で現れます。
手紙の宛名N氏へのある種の信頼などが鍵なのでしょうか? 不思議ですね。