新時代を担う嘘とカメレオン
ほぼ順不同のランキング
2019年5月29日発表、ミニ・アルバム「ポストヒューマンNo.5」の発表ともにワンマンツアー。
2016年に発表したMVから人気に火が付き翌々年にはメジャー・デビューを勝ち取った実力派です。
卓越した演奏力とボーカルのチャム(.△)の独特な歌詞の世界が絡み合い唯一無二の個性を放っています。
そんな彼らのおすすめ人気曲を10曲選んでランキング形式で発表するという企画です。
あまり奇を衒わない人気曲を選びましたがランキングにするのに苦心しました。
どの曲も魅力にあふれてすこぶる個性的。
そんな作品たちを序列化することは非常に胸が痛かったです。
ほぼ順不同のランキングという矛盾した結果になりました。
また選外に漏れた作品もぜひ聴いてください。
嘘とカメレオンの魅力的な世界への入り口になれば嬉しいです。
それでは第10位から発表いたします。
10位 モームはアトリエにて
2018年9月12日発表、嘘とカメレオンのメジャー・デビュー・アルバム「ヲトシアナ」収録曲。
アニメ「SNSポリス」オープニング曲「モームはアトリエにて」。
タイトルのモームはイギリスの小説家サムセット・モームのことです。
チャム(.△)の読書遍歴が知れるのはファンにとっては嬉しいことでしょう。
サウンドはやはり渡辺壮亮のカッティングが気持ちいいです。
これは嘘とカメレオンの全作品に共通する傾向でしょう。
歌詞を見ていきましょう。
サムセット・モームに宛てた
既成概念は そんなに
「壊せないの?」
耳を失っても 判断基準 君らしく
月へ飛べ 6ペンスを手に
鳥かごの先 鍵を探す
君はもう
ブリキじゃない
出典: モームはアトリエにて/作詞:チャム(.△) 作曲:渡辺壮亮
チャム(.△)が書く歌詞は一見難解なものが多いです。
それでも噛み砕いてゆくとその深い意味にたどり着けます。
凝り固まった常識を覆して自分自身の判断や価値基準に従うことで囚われた檻から脱出できる。
リスナーを勇気付けるチャム(.△)からのエールです。
サムセット・モームの代表作「月と六ペンス」がモチーフに使われています。
この先も見ていきますがチャム(.△)の歌詞には時折文学作品が登場するのです。
「モームはアトリエ」にてはアニメ「SNSポリス」との短いコラボ動画がYouTubeで公開されています。
リンクを貼りましたのでぜひご覧ください。
9位 ヤミクロ
2017年9月6日発表、嘘とカメレオンのファースト・ミニ・アルバム「予想は嘘よ」収録曲「ヤミクロ」。
ライブでの定番曲ですので必ずチェックしてください。
タイトルの「ヤミクロ」はおそらく村上春樹の「世界の終わりと、ハードボイルド・ワンダーランド」から。
この小説の中で東京の地下鉄に潜む謎の生物「やみくろ」が登場します。
地下世界と地上の人間の意識がどこかで繋がっているという暗喩。
もしくはチャム(.△)が単純に暗黒の別字「闇黒(あんこく)」を訓読みにしただけかもしれません。
いずれにしてもダークな世界観です。
歌詞を見ていきましょう。
深く眠る「闇黒」
宵、夢、まどろみの奥で沈む
心の底から這い出す
人はこれ“ヤミ”と呼ぶ
その名を失った
鐘の音を合図に 足元に忍び寄る
影 迷い者
出典: ヤミクロ/作詞:チャム(.△) 作曲:渡辺壮亮
人の潜在意識の中に眠るヤミは顕在意識とつながっているので注意せよと歌います。
上述の村上春樹の「やみくろ」の設定と親和性があるものです。
チャム(.△)が村上春樹を好きかどうかは分かりませんが「闇黒」について考えだすと同じ道にたどり着く。
人はそのヤミを視ないで済むなら幸運ですがいつか必ず飲み込まれてしまうよという指摘をします。
ヤミは闇であり病みでもあるでしょう。
人が生きている限りは逃れられない裏面に潜む奴らです。
村上春樹の「やみくろ」はホラー小説家H・P・ラブクラフトにモチーフを得ています。
太古の世界から人間の動向を伺っている闇の世界の生き物たち。
チャム(.△)の書く歌詞は読書案内にもってこいです。
ファンタジーのお話ではなく現実においても「闇黒」に気をつけないといけません。
日々のニュースで「闇黒」に飲まれた人の話題は事欠かせないものです。
8位 Lapis
2017年9月6日発表、嘘とカメレオンのファースト・ミニ・アルバム「予想は嘘よ」収録曲「Lapis」。
ライブでの定番曲です。
極端にフェイザーかオートワウを掛けたようなイントロのギターが印象的。
嘘とカメレオンにしてはテンポが遅めの曲かもしれません。
それでも青山拓心のドラミングには疾走感があります。
嘘とカメレオンの魅力は高い演奏力とチャム(.△)のボーカルの卓越した能力との絡み具合です。
歌詞は世相から宇宙規模の話題まで遠大。
実際の歌詞を見ていきましょう。