「アイドル」の枠を超えた伝説
「山口百恵」という人
アイドル、歌姫、名女優、スター…。
山口百恵さんを表現するとき、どんな言葉を当てはめていいか困惑します。
全ての要素を兼ね備え、そして伝説となった百恵さん。
アイドルという枠組みを飛び越えた、現代日本を代表する人物の一人です。
1973年に「花の中三トリオ」としてデビュー。
そこから1980年に引退するまで、活動期間はわずか7年。
その7年という短い期間の中で、百恵さんは数々の伝説を生み出しました。
そんな彼女の最後の曲であり、同時に金字塔ともなった「さよならの向う側」。
今回はその曲にクローズアップしてみたいと思います。
当時の彼女を知る年代の人達にとって、特に山口百恵ファンを自認する人たちにとっては伝説の一曲。
昭和を代表する歌謡曲「さよならの向う側」を深く掘り下げてみましょう。
「さよならの向う側」
「さよならの向う側」は百恵さんが発表したラスト・ソングです。
作詞は阿木燿子さん、作曲は宇崎竜童さんの鉄板コンビ。
数々の名曲を生み出したお二人です。
この曲は1980年10月5日の武道館ライブで最後に歌われた曲としても知られています。
涙ながらに「さよならの向う側」を熱唱したあと、マイクを床に置いて去る姿は有名です。
百恵さんにとっても重要な曲である「さよならの向う側」はファンに向けた曲としても知られています。
今まで応援してきてくれたファンにどうしても伝えたいことがある。
そんなメッセージをこの曲に託して歌っていたのかもしれません。
ところで「さよならの向う側」というタイトルにはどんな思いが託されているのでしょうか。
当然ですが「さよなら」は別れの言葉ですからこれで終わりという意味です。
もちろん引退のラストソングですから当然その意味も含まれるでしょう。しかし「向う側」が少々気になりますね。
例えば「さよなら」を成長のための扉と考えてみてはどうでしょう。
さよならという扉を通り抜けた先、それが向う側です。
とすると、さよならを告げる時点ですでに次の世界を予感させたかったのではないでしょうか。
山口百恵さんにとっての次の世界とは言わずもがなの結婚生活ですが、ファンにとっても向う側はあります。
それは山口百恵というスターが消えた後の世界です。
新たな星を探す人もいれば、消えた星の残像を大切にする人もいるでしょう。
どの道を選ぶのかは自由です。
ファンに何を伝えたのか、何を遺したのか
今回の記事ではファンへのメッセージソングとして歌詞を分析していきます。
支えてくれたファンに対して、百恵さんは何を伝えたのか。
また、ファンの心に何を遺してステージを去ったのか。
そんなメッセージを一つ一つ紐解いていきましょう。
彼女の強い意志をもった生き様や、スターゆえの孤独や愛。
それら山口百恵という歌姫を作っていたすべてを知るとより深い意味を感じることができます。
もちろん直接彼女が作詞したわけではありませんが、素の山口百恵を理解し支えたあのご夫婦の作品です。
それは山口百恵そのものといっても良いほどの作品といえるでしょう。
ファンへのメッセージを徹底分析!
「儚さ」と「永遠」が込められた冒頭
何億光年輝く星にも 寿命があると
教えてくれたのは あなたでした
季節ごとに咲く 一輪の花に無限の命
知らせてくれたのは あなたでした
出典: さよならの向う側/作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童
これは冒頭部分の歌詞です。
冒頭ですが、この部分に百恵さんの「儚さ」と「永遠」が全て詰め込まれています。
「輝く星」とはまさにスターである百恵さんを表しています。
どれだけ光輝く星も、最後には爆発し、姿を消してしまう。
百恵さんの歌手としての活動も、永遠ではありません。
いつかは潰えてしまうものです。
百恵さんの歌手としての命は、そんな儚さを持っています。
それに対して、そのあとの「一輪の花」も百恵さんを表しています。
花は季節ごとに必ず枯れ、散っていきます。
しかし、一度美しく咲いた花はそれを見た人の心の中で永遠に咲き続ける。
つまり、百恵さんは引退という散り際を経て、永遠にファンの心の中に生き続けるのです。
桜の花も、散らなければ普通の花です。
散るからこそ、その美しさは人の心に深く刻み込まれる。
そんな儚い永遠性を百恵さんに教えてくれたのは、紛れもない「あなた=ファン」でした。
「またね」とは言わない
last song for you. last song for you.
約束なしのお別れです
last song for you. last song for you.
今度はいつと言えません
出典: さよならの向う側/作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童
ここでは何気ない言い方で「永遠の別れ」をファンに告げます。
「これは私にとって最後の歌です」と繰り返します。
「またね」という言葉を言えば、希望が持てるかもしれない。
しかし、百恵さんは「またね」とは歌いません。
そこに百恵さんの引退への強い決意がうかがえます。