「でしょましょ」は無邪気な女の子が主人公?
多彩な才能を持ち得るアーティスト
それはまさに彗星の如くと言っていいほどではないでしょうか。
平成最後に出現した謎多きアーティストの楽曲、 「でしょましょ」を今回はお届けします。
ミュージシャン以外にもイラストレーターとしての顔をもち、本作品のジャケットは自身で制作しているのです。
リリース前の新曲発表ではタイトルだけが先行し、「米民」なるファンの間で可愛いらしいと評されていました。
おそらく2018年8月にリリースされた、「パプリカ」の影響が色濃く世間に残っているからではないでしょうか。
子供から大人まで、幅広い年齢層に支持されロングヒットしている楽曲です。
「でしょましょ」は現代社会の象徴
このところの米津玄師の楽曲の中でも、より興味をかき立てられる作品「でしょましょ」。
「でしょましょ」?一見タイトルからすると、女の子が無邪気に振舞っている可愛らしい様子が頭に浮かびます。
裏切りともとれる本作品の全貌は、尖ったナイフが見え隠れするような内面が潜んでいるのです。
昨今の凄惨で嘆かわしい事件や事故などを憂い、米津玄師自身の想いを自己投影した作品といわれています。
あえて象徴されるように「でしょましょ」という表現をしたのではないでしょうか。
シングル「馬と鹿」に収録
2019年9月にリリースされた10枚目のシングル「馬と鹿」。
「でしょましょ」は3曲目のカップリング曲として収録されています。
記録的なシングル売上の上位を飾り、収録されている3曲のうち2曲は主題歌になっているのです。
「馬と鹿」はテレビドラマ「ノーサイド・ゲーム」に。
2019年ラグビーW杯が日本開催ということで、曲も勢いに乗り一層盛り上がりを見せました。
「海の幽霊」は米津玄師自身、以前から長年の夢であったアニメ映画「海獣の子供」の主題歌になっています。
2曲も併せてお聴きいただけば、「でしょましょ」の鬼気迫る世界観があなたにも伝わるでしょう。
短く凝縮された一語一句を余すところなく解説!
短すぎる楽曲に吸い込まれてしまう
「でしょましょ」は3分弱と、これまでの米津玄師にしては極端に短い楽曲です。
歌詞も少なく、それでいながら言葉遊びを連想させるかのような構成になっています。
短い歌詞の中には「人間のエゴというエゴ」がこれでもかというくらいに凝縮されているのです。
ゆるい歌詞と曲調はどこか虚無的とすら感じてしまいます。
それは昨今の世を憂いだ米津玄師からのメッセージなのでしょう。
皆さんが主人公です
情感たっぷりの「馬と鹿」とは真反対で、「でしょましょ」とは相交わることのない陰と陽な関係性を覚えます。
不気味とすら感じる要所に聞こえる多様な声音。
様々な年齢層の声や笑い声などがバックに入っています。
なにか後味が悪く薄気味悪ささえ感じてしまい、更に増幅させる演出に思えてなりません。
言うまでも無く、今の社会がどうあるべきかを全年代の聴衆に突きつけ問う楽曲なのではないでしょうか?
米津玄師自身あるインタビューで「とんでもない時代に突入した」と語っていました。
生産性で人を評価する世の中を否定し、論争を駆り立てているのかもしれません。
「でしょましょ」での主人公とは、皆さん全てが対象なのです。