正当な評価と適した仕事
浮かばれたいよ
いずれは
頑張ってるって
明け暮れたいよ
いますぐ
天職はなに?
出典: 労働者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
資本主義の世の中で経済生活を営む限り、労働の対価はお金です。
ただ、評価のポイントは様々あるので、一生懸命働いたと思ってもすぐさまお金に反映されるとは限りません。
また、IT(情報技術)社会で、5G(第5世代移動通信システム)が普及。
あるいはAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が一般化すると、増える仕事と減る仕事が出てきます。
思いっきり働いて、その分遊ぶ。
そんな理想がありながら、仕事でも報われず、余暇も充実しないケースが多いのかもしれません。
どれほど成果を上げても認めてもらえないなら転職したほうがいいのでは?
疑念が頭をもたげているようです。
労働者が欲しいものは働いた分の正当な報酬であり、自分にぴったり合った仕事そのものではないでしょうか。
理想と現実
一体何時つながるの
止め処ない充足まで
仕合わせになりたい
だれか肋けて頂戴!
したいことだけしてたい
痛いのは余り好きじゃない
期待通りに思惑通り
夢を叶えて
出典: 労働者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
あまりにも便利な物が増えすぎて、あれも欲しいこれも欲しいと欲望が膨れ上がっているのでしょうか。
それともささやかな満足にすら到達しないという意味なのかもしれません。
今ある物や環境、人間関係で幸せ。
なかなかそうは思えないわけです。
どのような人生でも、実は有難い奇跡の連続なのですが、格差が広がるほど隣の芝生が青く見えてしまいます。
要するに、望む通りの暮らしになっていないと悲鳴を上げているわけです。
なるべく苦痛を避けて、夢見る理想の暮らしを手に入れたいということ。
深読みすると、椎名林檎さんはレキシとのコラボによりブラックミュージックの要素を強めたとも考えられます。
やりたい音楽と売れる音楽は必ずしも同じではなく、その辺りの問題を提起しているのかもしれません。
2番の歌詞をチェック
法廷に直談判?
乗り込みたいよ
おしらす
公平にどうぞ
手を組みたいよ
お偉がた
鞭撻をどうぞ
出典: 労働者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
1998年にデビューした椎名林檎さんは、2004年から東京事変としてバンド活動に移行されました。
そしてソロ活動を2006年に再開し、東京事変は2012年に解散、2020年に再生という流れです。
「労働者」は2009年リリースのアルバム収録曲なので、ソロ活動もバンド活動も行っていた時期に相当します。
多忙を極めたでしょうし、名義の使い分けによる課題にも取り組む必要があったはずです。
東京事変ではより音楽性を追求しやすいものの、ソロ名義ではより大衆性や経済効果が求められるのでは?
こうした深読みも可能です。
お白洲(おしらす)は、江戸時代の奉行所など訴訟機関における法廷が置かれた場所。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/お白洲
ソロ名義の1stアルバムのタイトルは「無罪モラトリアム」、2ndアルバム名は「勝訴ストリップ」です。
どちらも裁判に関わる言葉が入っていて、今回の歌詞にある「江戸時代の法廷」を意味する言葉と重なります。
椎名林檎さんにとっては音楽が仕事。
その為、音楽をもっと評価して欲しいと直談判する姿も想像できます。
お金で買えない幸せ
一体何処で買えるの
初回投資よろこんで
相殺ラクしておトク
美味しい薔薇色人生
出典: 労働者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
椎名林檎さん自身の音楽性にまつわる解釈は、あくまでも深読みのひとつ。
この曲を聴く方、そして働く方すべての気持ちを代弁してくれているという流れに戻りましょう。
ただ、あまりにも理想の暮らしが叶えられないばかりに、お金で手に入るものならば払うと主張し始めています。
もちろん、どこにも売っていないことをきちんと認識したうえでの話です。
最初にお金を出せば、後々プラスマイナスゼロになるからお手軽だし、むしろ儲かるという皮肉。
幸せはお金では買えないことがかえって強調されるのではないでしょうか。