cho cho 蝶になりたい cho cho 蝶になりたい
そう想像してた未来 もう何も怖くはない
何事も上手くはいかない 簡単には羽生えない
頭の中 青い空 耐える今は SANAGIだから
出典: SANAGI feat.SANTENA/作詞:FARMHOUSE,SANTENA 作曲:SUSHIBOYS
『SANAGI feat.SANTENA』のテーマは「蛹(さなぎ)から蝶への羽化=成長」です。
SUSHIBOYSの歴史の中でここまでストレートに苦悩を綴った曲は非常に珍しいといえるでしょう。
EVIDENCEの脱退という転換点を迎えたSUSHIBOYS。
そのことを悲劇ではなくむしろ好機と捉えリリックに反映させているのが『SANAGI』なのです。
この曲でFARMHOUSEとSANTENAのバースはより一貫したストーリー性を得ることに成功しています。
これまでのSUSHIBOYSを蛹、つまり寒空の下でじっと羽化するのを待つ期間。
そして新体制となった2人が蝶に羽化し広い世界に飛び立つ未来を宣言する曲です。
大都会の真ん中で
FARMHOUSEは街の音色に耳を傾ける
暗い部屋で1人きり
俺がイモムシだった頃の話
地ベタを這って 歩いてたAllday.
それはそれでまぁ楽しかった毎日
出典: SANAGI feat.SANTENA/作詞:FARMHOUSE,SANTENA 作曲:SUSHIBOYS
渋谷のスクランブル交差点。
横断途中でFARMHOUSEは立ち止まります。
目を閉じ都会の喧騒に耳を傾けてみる。
生まれ育った越生町にはなかった様々な音が聞こえてきます。
リアルを追及するのがラッパーという生き方を選んだ者の宿命です。
これまでFARMHOUSEはギャグと紙一重の、綱渡りのような楽曲を数多制作してきました。
しかし彼らがお笑いを追及しているわけではないことを一番知っているのは自分自身です。
誤解を受けやすいのは分かっているけれど...。
評価が上がるにつれ自身の表現していることと受け手のギャップに悩んできたことでしょう。
『SANAGI feat.SANTENA』はこれまでのキャリアを振り返る非常にシリアスな楽曲なのです。
シリアスな表情で歌を紡いでいくFARMHOUSE
進んで行く時間に置いて行かれる気持ち
固まったままの感情じゃ 羽はえない
昔はイモムシ 今はもうサナギ
意思は固まったはずなのに形はない
出典: SANAGI feat.SANTENA/作詞:FARMHOUSE,SANTENA 作曲:SUSHIBOYS
ヒップホップの聖地ともいえる渋谷の真ん中でFARMHOUSEは何を想うのでしょう。
コアなヒップホップリスナーほどThugでSwagなスタイルの作品を好む傾向があります。
しかし彼らには信念があるのです。
若者に向けた娯楽のない場所・越生町をレペゼンするラッパーとして主張すべき道。
それは何もないところからリアルなトピックを見つけ出しヒップホップに昇華させることでした。
農業・軽自動車・ママチャリ・ゲートボール・スーパーマーケット...。
彼らがありえないトピックを魔法のようにリリカルにラップする様はようやく一般層にも届くようになりました。
しかし誰よりもヒップホップを愛する若者の一人としてFARMHOUSEは常に孤独と闘い続けてきたのです。
暗い地中でじっと耐え忍ぶ芋虫のような日々、ようやく評価が追い付き認められるようになった現在。
大都会の路上でバースを刻んでいくFARMHOUSEの表情はいつになくシリアスです。
羽を見つけ自由になったあいつ
EVIDENCEを想う
あいつは飛んでいった 羽を見つけて自由になった
世界の楽しみ方知っていた 俺も羽にしたいもの見つかった
でも進まない every day
こっちの方が大変だけどもやっぱり楽しい
自分の人生が1番好き 何より愛してるmy life
出典: SANAGI feat.SANTENA/作詞:FARMHOUSE,SANTENA 作曲:SUSHIBOYS
FARMHOUSEは路肩に座り込み目を閉じます。
脳裏をよぎるのは自由を手にし巣立っていった仲間のこと?
このバースではFARMHOUSEの実弟EVIENCEの脱退について想像せずにはいられません。
SUSHIBOYSが地方のイチYouTuber「梅Tube」としてキャリアをスタートした当時。
やはり主力メンバーは現在と同じFARMHOUSEとSANTENAの2人体制でした。
EVIDENCEが加入したことでSUSHIBOYSはこれまでにない深みを表現することに成功します。
オンボロの軽自動車を運転しカニを食べにいったこと。
アヒルボートに乗って、ショッピングカートに乗って自由に遊び回っていたこと。
様々な思い出が脳裏を過ります。
もう迷わない
蝶になるのにサナギにならない
なんて事は絶対ないからさ大丈夫
My job もう逃げない 前傾姿勢で生きていたい
俺の羽が音楽だと 言えるその日が来るまでは
暗い部屋の片隅から 音を流し続けるのさ
出典: SANAGI feat.SANTENA/作詞:FARMHOUSE,SANTENA 作曲:SUSHIBOYS
しかし決意を決めたように立ち上がり再び軽快にリリックを刻んでいきます。
自分で選んだ道に後悔なんてないから。
MVの撮影が終われば彼らは再び地元に帰っていきます。
越生町に構える通称「SUSHI HOUSE」と呼ばれる住居兼スタジオ。
FARMHOUSEの目に迷いの色は見えません。
薄暗いスタジオで再びオリジナルなリリックを発明する日々に想いを馳せる。
その音は羽を広げより多くのリスナーの下に届く、そう確信しているようです。