米津玄師 MV「メトロノーム」歌詞解説

MVでは、皿に乗った食べ物を憂鬱な顔で見ているイラストが使われている「味気ない風景だ」という歌詞のパートですが、このことから、「あなた」がいなければ、どんな景色を見ても綺麗ではないし、どんな料理を食べても美味しくないという「僕」の心情が伺えます。

「きっと僕らはふたつ並んだメトロノームみたいに」からの歌詞が、この曲を作ることになった米津玄師の気づきが一番表れている部分です。

息がぴったりと合っていた二人が、「いつしか少しずつズレ始めていた」ことに気づけず、「時間が経つほど」二人の距離が離れていっていることに気付いた時にはもう止められなかったという歌詞。

最初は本当に些細な言い争いだったのかもしれません。

少しでも「ズレ」が小さいうちに二人の「メトロノーム」を揃えることができていたならと後悔してもしきれない「僕」の心情に共感してしまいますね。

「あなた」の幸せは「僕」にとっても幸せであるはずなのに、どこかで「忘れないでほしい」と思っている「僕」の心情が歌われています。

「全て忘れて生きていけるのかな」という歌詞には、今はまだ「あなた」のことでいっぱいな「僕」の心細さが表れていて、切なくなりますね。

今は何をしていても「あなた」のことを想ってしまう「僕」ですが、一方で「あなた」といない時間が増え、物理的に遠ざかっていくことを感じています。

すれ違ったが最後、ずっと背中あわせに歩いていく「あなた」ともう二度と一緒に歩いていくことはできないと心のどこかで感じている「僕」。

しかし、背中合わせでも同じ速度でずっと歩いていればもしかしたら地球のちょうど裏側で出会えるかもしれないと、ほんのわずかな、再び「あなた」とともに人生を歩んでいける確率に賭けて、「僕」は生きていこうとするのでした。

「今日がどんな日で 何をしていようとも」という歌詞には、何度生まれ変わってもという意味もあると思います。

何度生まれ変わっても「あなたを愛してしまうだろう」と言えるくらい、別れてからもずっと「あなた」を思い続けている「僕」は自嘲気味に「笑い飛ばしてほしい」と思うのでした。

しかし、「僕」の本音は最後の歌詞の「あなたがいてほしいんだ」という一言に尽きるのです。

「メトロノーム」のMVで一番気になるところといえば、メインキャラクターである女の子が何度も小刻みに姿を変えているところではないでしょうか。

サビの「今日がどんな日で何をしていようとも」に何度生まれ変わってもという意味もあるのではないかと書きましたが、その大きな理由も、MVに出てくる女の子が何度も姿を変えていることです。

MVの全編に渡って、女の子が、ある時は悪魔のように、犬のように、宝石のように、箱のようにと次々に姿を変えているのはどんな姿になっても、大切な人のことを想い続ける、つまり、何度生まれ変わっても「あなたを愛してしまう」ということを象徴しているのではないでしょうか。

「メトロノーム」は、別れてもずっと別れた相手を想い続ける気持ちが、とても切なく描かれた歌詞の曲でした。

メトロノームに例えたことも斬新なのにしっくりきますし、言葉の選び方も美しく、多くの人の心を掴んでいるのが納得できますね。

それぞれ別の道を歩むことになってしまった二人の歌で、決してハッピーエンドとは言い難いのですが、こんなにもたった一人のことを愛し続けられる相手と出会えたことは幸せなことなのではないかと思えるくらいの「愛」が歌われる歌詞は聴いていて素敵だなと思うはずです。

大切な人のこと、もしくは、これから出会うべき大切な人のことを思い浮かべて、聴いてみてはいかがでしょうか。