「痛み」で表現される心の叫び
2011年6月1日に発売された3枚面のアルバム「素。」に収録されています。
鋭い切れ味や前のめりのノリは、アルバムの一曲目を飾るのにふさわしい楽曲といえるでしょう。
歌詞の内容としては、タイトルどおり「痛み」を生々しく表現。
怒りや葛藤とともに心の軋む様子が非常にリアルです。
また、その歌声からは感情の荒ぶる様が伝わり、阿部真央さんの表現力の高さを実感できますよ。
アルバム「素」の中での「痛み」の役割
アルバム「素。」は、「素を出す」とか「素直」といった阿部真央さんの人柄が適確に表現されたタイトル。
彼女は喜怒哀楽や愛情を、抑制することなく炸裂させることができます。
そんな情熱的な阿部真央さんの音楽が詰まったのが「素。」というアルバムなのです。
その中でも「痛みに悶える楽曲」を1曲目に選んだのが、素晴らしいセンスだと筆者は感じました。
後ほど歌詞の解説をしますがこの楽曲、本当に苦しそうなのです。
決して王道や一般受けを狙った印象ではないのです。
「阿部真央さんの個性全開の楽曲」から始まる「素。」は、彼女の魅力を知る第一歩として最適だと思いますよ。
ここで、「素。」に収録されている他の楽曲もチェックしてみましょう。
「素。」に収録された楽曲の個性
1. 痛み
2. じゃあ、何故
3. モットー。
4. 19歳の唄
5. なめとんか
6. ヤだ
7. もう
8. TA
9. 走れ
10. ロンリー
11. for ロンリー
12. ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~
13. 光
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/素。
「痛み」で感情を爆発させ、「じゃあ、何故」でやるせない気持ちを吐露。
そして、パワフルで前向きな自由奔放さ。
研ぎ澄まされたアーティストとしての信念。
ちょっとひねくれた怒りや、抑えきれない嫉妬心。
決断を下した後の虚しさ。己の意思を呼び覚ます躍動感。
甘ったるかったり、とめどなく溢れる愛情。狂ったストーカー心理。
様々な要素が表現されている「素。」は、人間の持つ多面性そのもの。
実は「心を開放した人」ってたくさんの可能性を秘めているのではないか。
まだ見ぬ自分にも出会えるんじゃないか。
そんな考えを与えてくれるアルバムです。
それでは、次は今回のメインである歌詞の解説に移っていきましょう!
過去の経験が胸を騒めかせる
フラッシュバックする
Na-nananananananana….
またよみがえる残像が廻り始めた
あの日の僕に劣等感で心殺(そ)いでんだ
出典: 痛み/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
前奏とともに始まる「nanana…」という歌唱。
非常にキャッチ―で前のめり感が強くて、印象的ですね。
まだ歌詞を歌っていないのに「高まった気持ち」がヒシヒシと伝わってくる印象を受けます。
そして、過去に経験した辛い記憶が湧き出て、頭の中を支配しようとしているようです。
「また」と言葉をつけているところから、何度もフラッシュバックのように思い出していることがうかがえますね。
その過去の記憶から植え付けられた屈辱は劣等感を生み、心を痛みつけています。
「削(そ)ぐ」という言葉と「殺める」という言葉を掛け合わせているところにも注目。
「心を削ぐ」と聞くと、生々しい光景が思い浮かびますね。
「希望」とか「自信」とか…そういったポジティブな感情を抉(えぐ)り取られているかのよう。
その痛烈な痛みを「殺める」ことに等しいと表現しているのでしょう。
短いフレーズの中でもたくさんの意味合いを拾うことができますね。
失ってしまったもの
Na-nananananananana….
二度と戻らぬ純情に涙流れた
かり立てらるる焦燥感に心裂いてんだ
出典: 痛み/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
「純情」…つまり純粋で無垢で真っすぐな気持ち。
これが先ほどの辛い経験で削ぎ取られてしまった「感情」なのでしょうか?
もう戻らないという点からは「深い人間不信」や「自分は汚れてしまった」などの認知が想像できます。
「悲しみ」の涙を流しているうちに、心の奥から湧き上がる強い苛立ち。
負の感情が思考を支配し、コントロールがきかない状態。
内側で暴れまわる感情に心が張り裂けそうになっています。
さまざまな気持ちが巡っているようですが、その結果生み出されたのは「痛み」です。
ここまでのフレーズは「痛み」を感じるまでの心の過程を描写していたのでしょう。
一人で頑張っている
誰に理解るだろう この胸突き刺し続けるような
出典: 痛み/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央