再生する
mol-47が夜と朝をどのように捉えているのか見てみましょう。
2015年のアルバム「まるで月をみていたような」から「フローイング」の一節。
暗い部屋
光る置時計が眠れない夜を彩るんだ
それは哀しみ
途絶えた君との約束だって
続かない僕の強がりだって
それは哀しみかな
つまらない深夜のテレビチャンネル
それをただただ見つめてる僕は
それは哀しみ
何をしたって埋まりはしないや
それを分かってて繰り返すんだ
それは、それも哀しみなんでしょう
出典: フローイング/作詞:武市和希 作曲:mol-74
夜明けの魔法を唱えるように
答を失った僕が待っていた
歪な形をした想いと
夜明けの魔法を唱えるように
答を失った僕が待っていた
きっと僕らは生まれ変われる
再生の朝に
出典: ▷ (Saisei)/作詞:武市和希 作曲:mol-74
ここでは自分を見失った「僕」が夜明けを迎えて再生(Saisei)すると歌われているのがお分かりでしょう。
「Morning Is Coming」はこの「再生」を歌っていると見ることもできそうです。
どんな朝を迎えるかは人によって違うはず。
夜明けを迎えても心は闇の中のままに沈んでいる人だっているかもしれません。
自分を苦しめて来た感情が儚いものだと気付けたならどうか。
夜が明けて星があった空は光に包まれます。
その時、自分が狭い視野で物を見ていたことが分かるのです。
mol-74の眼差は闇に沈む「君(私たち)」に優しく向けられています。
夜と朝の対比
触れて痛む古傷は君と僕とを繋ぎ合わせて
濡れて滲んだ君の歌を歌うよ
君が笑うまで
さあ、行こう
夢見た場所へ
夜明けの向こう側へ
出典: Morning Is Comin/作詞:武市和希 作曲:mol-74
歌詞はこの前の一節で区切りが付けられました。
このパートはリフレインとそれに続く希望に満ちた言葉で締めくられています。
mol-74の歌詞は心を突き刺すような厳しい言葉とともに救をもたらすパターン。
これを闇と光を夜と朝として対比さる傾向があるようです。
朝日の中で疾走する男たち
「Morning Is Coming」にはMVが公開されました。
この曲の場合、収録アルバム「mol-74」のジャケ写に使われているレインボー・カラーがそれ。
虹色は赤から紫までの七色がグラデーションで連なっています。
ジャケ写はこの虹色を朝焼けとして表現しているのです。
ベール
アルバム・タイトルはバンド名にしています。
それは彼らのメジャー・デビューを意識して付けたのでしょう。
しかし、新曲である「Morning Is Coming」のイメージ・カラーとの共通性を考えてみてください。
この曲は歌詞の内容からも分かるように、タイトル・チューンと位置付けてもよさそうです。
MVは朝焼けの中をひたすら疾走る男たちをスローモーションで写し出しています。
男たちの頭の上には薄いベールが覆っています。
これをなんと捉えるか。
男たちを歌詞に出てくる「君」と解釈するなら自己嫌悪など負の感情と見ることができそうです。
このベールに付きまとわれながら朝日に向かって走り続ける私たち。
そんな光景に見えてくるでしょう。
そしてベールは光が強くなるにつれて消えていきます。
これは歌詞の終わりに、いなくなったと語る部分を視覚的に表現しているのではないでしょうか。
サウンド
曲は朝焼けの映像に合わせて沸き立つようなサウンド・エフェクトが響きます。
ピアノとホーンに続いて歌詞のAメロへ。
サウンド・エフェクトは変化しながら立ち現れては消えていく。
澄み切った朝の空気感を見事に表現しています。
ドラムとベースも武市和希の浮遊感のあるボーカルと一体になって心地よい。
mol-74のMVで人物が登場するのは女の子を主人公にしたイメージビデオの様な作品が多いんですよ。
舞台が都会であったり田舎であったり森で会ったり。
「Morning Is Coming」みたいに人物がいながら抽象的な表現のMVは初めてでしょう。
繰り返し何度も見返してしまいました。