来るべき朝

平成が終わりを迎えた2019年春、メジャー・デビューを果たしたmol-74

その記念すべきメジャー1stアルバムは、インディーズ時代のナンバーに新曲を加えたもの。

そして「Morning Is Coming」はこれまでとはまた違ったmol-74の魅力を聴かせてくれます。

「Morning Is Coming」は「来るべき朝」とか「朝が来る」という意味。

一日の始まりをどんな気持ちで迎えるかが重要です。

どんな朝を迎えるか

 朝起きて一日を過ごし夜寝るという活動と休息のサイクルは生きていることの証しなのです。

しかし、体調や感情によってこのサイクルは常に同じではありません。

朝をさわやかに迎えるか、憂鬱に迎えるか。

その時々によって常に違います。

「朝を迎える」、そんな当たり前の日常。

だけど、一日をどんな気持ちで過ごすか重要な時間です。

この曲は人が意識することもない、ありふれた日常をテーマに、私たちの心の闇と希望を歌いあげています。

心の闇

mol-74歌詞を見ていくとあるパターンがあるように思われます。

もっと理解するためには視点を広げてみることにしましょう。

自己嫌悪

口だけだった
強がりだった
浅はかだった
妬み嫉みを
餌にしていた
虚しさだけが肥えていった

出典: Morning Is Comin/作詞:武市和希 作曲:mol-74

この歌詞は誰しも持っているであろう心の闇を私たちに突き付けてきます。

ここで注目したいのは「」という言葉。

僕が見ていた愛の風景はどうやら偽物だったみたいだ
拾い集めた破片で傷付いて妙に痛むな

飼い殺しの孤独を餌にして僕ら生き続けようとするんだ
薔薇の棘みたいなこの幸せが嫌い

出典: rose/作詞:武市和希 作曲:mol-74

2017年のアルバム「colors」に収録された「rose」の一節です。

自分が幸せだと思っていた愛は「孤独」によって育まれていたものだったと。

「Morning Is Coming」では妬みや嫉みが自分を突き動かしていたと語っています。

つまり、自分の心の在り方が負の感情を原動力にしていることを「餌」と表現しているのです。

それは自己嫌悪や虚しさしかもたらしません。

心の比喩

音楽の歌詞や詩歌で使われる手法にRhyme(韻)があります。

言葉にリズムや一定の調子を持たせるやり方。

日本語や英語の楽曲でもしばしばみられますが、mol-74はこの韻を多用しているのです。

君と僕

卑屈になった
逃げたくなった
沈んでいった
暗い底から上を見ていた
君に僕が見えてるかい

出典: Morning Is Comin/作詞:武市和希 作曲:mol-74

ここまでの歌詞を見て気付くのは「だった」「いた」「いった」という言葉の繰り返し。

歌詞としては同じ音を重ねる「韻を踏む」使い方をしています。

言葉の意味としては過去形にすることで、これまでの自分を否定的に振り返っているのが分かるでしょう。

「暗い底」は否定的な感情に捉われた心の比喩と見てよいです。

そして、ここで「君」と「僕」が相対しています。

「僕」(mol-74)が「君」(私たち)に向けた眼差があるのです。

「君」は自己嫌悪が自らの心の在り方が原因だとは気付いていません。

期待と現実