自分の非を庇う彼に冷めていく気持ち

あなたが八度七分の声を 使うときは
必ずあたしに 後ろめたいことがあるとき

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

まず「七度八分の声」というのは、37度8分の熱があるときのような苦しそうな声を表したものではないでしょうか。

彼がその声色を使うのは、主人公に対して後ろめたい気持ちがあるときだといいます。

いかにも体調が優れないというような演技をして、自分の非を庇っているような印象ですね。

それすらもお見通しの主人公を見ると、こういったやり取りが何度も行われていたことが垣間見えます。

汗ばんだって 恥らったって
理由もなく触れたがったりした
凍えたって甘えたって
只の刹那に変わった2人

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

いくら好きな相手でもくっついて欲しくないというシチュエーションもあります。

ここで言うそれは「汗をかいているとき」や「人前で恥ずかしい」といったところ。

それでも七度八分の演技をする彼はお構いなしで、凍える素振りで甘えてきた様子が伝わります。

自分の非を庇ったそれは、主人公が嫌がるシチュエーションでも行われていたのです。

「刹那に変わった」という言葉の通り、この繰り返しが2人を別れに向かわせていたことがわかりますね。

お互いの行動が関係を終わりへ導いた

その時全て流れ落ちた
冷たい秋は たった2度目でも
砂場の砂も気持ちも全部
2人の手で滑り落とした

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

「全て流れ落ちた」というのはお互いの気持ちが冷めてしまう様子を表現したものではないでしょうか。

2年一緒に過ごした相手だということもこの部分から伝わりますね。

2年という月日で築いてきた絆が、文字通り砂のように崩れ落ちていってしまう姿が想像出来ます。

自分の非を隠すように甘えてくる彼の行為と、それを嫌がる主人公の態度。

2人がそれぞれ自分の手で関係を終わりへと導いていったのです。

簡単に解決しようとする彼

あなたが脈略も無く キスをくれるときは
必ずあたしの機嫌を 損ねた様なとき

汗ばんだって 恥らったって
理由もなく触れたがったりした
凍えたって 甘えたって
只の刹那に変わった2人

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

主人公が機嫌を損ねると必ずキスをしてきたという彼。

そこに見え隠れする想いは「こうすれば機嫌も直る」という浅はかな考えです。

機嫌を損ねた理由を解決しようとするのではなく、簡単に事を済ませようとする彼の姿もまた2人を別れに近付けていったのですね。

ケンカすることよりも大きな問題

その時全て壊れ落ちた
激しい雨には 慣れていたけど
お得意の嘘や詮索ごっこが
最後の遊びへ導いていた
Ah… Ah…

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

「激しい雨」は主人公と彼のケンカを表しているように感じます。

ケンカには慣れていたという主人公。

このことから読み取れるのは、ケンカすること自体は問題ではなかったということ。

ケンカするよりも、それを避けるために嘘をついたり、相手への伺いを入れたりする方がよっぽど気持ちを冷めさせていたのです。

それらを遊びと表現しているのは「意味のないこと」とでも言うかのよう。

皮肉めいた言葉の選び方が主人公の強がりを感じさせ、より一層切なく響きます。

別れを後にして感じる気持ちは

今の自分ならきっと違った

このところ 悔やんでばかり居る
口には決して出せないけど
今のあたしだったら
あなたと退らずに済む様な 気がする

出典: すべりだい/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎