繋がれた鎖、シンクロするダンスの意味
Break Up 動けない自分と
Wake Up 隠された自分が
今走り出す
出典: P.S. RED I/作詞:TK 作曲:TK
4人のダンサーは黒い仮面を纏いTKの周囲を踊ります。
彼女たちが黒い鎖に繋がれた姿で登場する場面には同調するように心臓のアニメーションが挿入されます。
この鎖はスパイダーマンの手首から発生する糸を表現すると同時に主人公の弱い心の象徴でもあるのです。
MVの終盤、黒い鎖が切れると同時にアニメーションの心臓が爆発します。
それは主人公マイルス・モラレスが葛藤を乗り越えヒーローとして戦う決意を固めた瞬間です。
またTKの周囲での4人のダンスは常にシンクロした振り付けで統一されています。
このダンスが表現するのは異世界からやってきたスパイダーマンが共闘し巨悪と闘う姿です。
「1人じゃない、この世界には仲間がいる」
これが映画「スパイダーマン：スパイダーバース」のメインテーマなのです。
カラーコーディネイトの意味
次に検証したいのがMVを通じて統一された色についてです。
制作スタッフの中には照明だけで6名、さらにカラーリストとして1名がクレジットされています。
このことから『P.S. RED I』のMVにおいてカラーコーディネイトが重要な要素であることが分かるのです。
“青”と“赤”で統一された世界
青が目覚めて僕を侵すんだ
赤が僕の孤独を壊すんだ
出典: P.S. RED I/作詞:TK 作曲:TK
『P.S. RED I』のMVは全編を通して暗闇に浮かび上がる“青”と“赤”に支配されています。
その第1の理由は語るまでもなく「スパイダーマン」の衣裳との一体感です。
同時にこの2色は生命の根源ともいえる色といっても差し支えありません。
“青”はこの地球の7割を占める海の色であり“赤”は地下深くに蠢くマグマの色。
また“青”が想起させる精神状態は憂鬱、そして“赤”は情熱の色でもあるのです。
TKは『P.S. RED I』の歌詞で上のように歌い叫びます。
恐怖と不安のため立ち尽くすしかできない弱さ、それを打ち破るのが仲間との情熱なのです。
TKは照明・衣裳・アニメーションにいたるまで徹底的に“青”と“赤”で塗りつぶしました。
あらゆる労力をもって「スパイダーマン：スパイダーバース」の世界観を表現したのです。
初回盤に収録されたスタジオライブ映像
横浜ランドマーク・スタジオで開催されたスペシャルセッション
TK from 凛として時雨 - Studio Live Session & Documentary at LANDMARK STUDIO / Digest Trailer
『P.S. RED I』のプロモーションの一環として公開された映像もチェックしてみましょう。
初回限定盤に付属されるDVDには横浜ランドマーク・スタジオでの4曲のセッション映像が収録されているのです。
YouTubeではそのトレイラー映像が公開されておりファン必見であることは間違いありません。
相棒であるBOBOに加え元ZAZEN BOYZの凄腕ベーシスト吉田一郎。
さらにヴァイオリンの佐藤帆乃佳らを加えた5人編成での豪華スペシャルセッション。
『katharsis』を含む全4曲のスリリングな演奏はぜひDVDにてお楽しみください。
最後に
今回はTK from 凛として時雨の『P.S. RED I』のMVについて解説させていただきました。
4人のダンサーの華麗な舞い、そして“青”と“赤”に彩られた異空間のような映像美。
そこには「スパイダーマン：スパイダーバース」の世界観が見事に投影されていました。
本来は歌詞の内容にも踏み込みたいところですがそれはまた別の機会に...。
また『P.S. RED I』にはカップリングとしてSalyuをゲストに迎えた『moving on』も収録されています。
こちらもぜひ音源にてお楽しみください！
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本稿で『P.S. RED I』の解説をするにあたってTKの過去の楽曲にも触れさせていただきました。
興味のある方はぜひ以下の解説記事もご覧ください。
