『P.S. RED I』
アナグラムで「S・P・I・D・E・R」
今回スポットを当てるのはTK from 凛として時雨の『P.S. RED I』です。
2019年3月6日にリリースされたこの壮大な組曲はあるキーワードを基に制作されています。
それは「通過儀礼=成長」「仲間との絆」そして「青と赤」です。
なぜTKはこのようなテーマを据えたのでしょう?
その理由は曲名『P.S. RED I』のアナグラムに隠されています。
アナグラムとは言葉の綴りを変えることによる暗号のようなもの。
そして「P・S・R・E・D・I」を並べ替えると「S・P・I・D・E・R」になるのです。
「スパイダーマン:スパイダーバース」日本語吹き替え版の主題歌!
もう皆さまご存知の通り『P.S. RED I』はあの大ヒットアメコミ作品の世界観を表現しています。
それが第91回アカデミー賞受賞作「スパイダーマン:スパイダーバース」です。
過去に幾度も映画化されてきた「スパイダーマン」史上最高傑作と名高い本作。
すでにご覧になった方も多いことでしょう。
その日本語吹き替え版の主題歌として書き下ろされたのが『P.S. RED I』なのです。
今回は「スパイダーバース」の世界観を見事に表現したMVについて解説させていただきます。
MVの詳細をチェック!
演奏者はTK & BOBOのみ、ダンサーたちが彩る異世界
硬質なギターリフと交響曲のような構成はTKの得意とするサウンドです。
今回『P.S. RED I』のMV制作に際してTKは「スパイダーバース」の世界観を明確にイメージしています。
監督を務めるのは新進気鋭の映像作家の荒伊玖磨(あら・いくま)。
凛として時雨『DIE meets HARD』のMVや広瀬すず出演の「ポケモンカード」のCMで実績をあげています。
演奏者として出演するのはTKの他には彼の盟友であるドラマーBOBO(54-71)のみ。
しかし「スパイダーバース」の世界観を再現するために様々な分野のスペシャリストが集結されています。
特に重要視されたのがダンサー+振り付け師、カラーリスト、アニメーション、カメラワークの専門家です。
ここからは『P.S. RED I』のシーンごとにどのような意味が込められているのかを解説していきます。
4人のメイン・ダンサーが表現するものとは?
4人のスパイダーマンを表現?
まず最初に『P.S. RED I』のMVの中で重要な位置を占めるキャラクターについて検証してみましょう。
それはASANO、Mei Matsuura、SHIORI、kannaの4人のメイン・ダンサーです。
様々な分野で活躍する4人の女性ダンサーの動きには綿密な振り付けが施されています。
そのことは振り付け師として五十嵐拓人氏の名前がクレジットされていることが証拠です。
彼女たちは大別して2つのシーンで登場します。
黒い仮面を被りTKを取り囲むシーン、そして真夜中の東京を自由に駆けめぐるシーンです。
そして当然彼女たちが演じるのは4人のスパイダーマン。
すなわちマイルス・モラレス、ピーター・パーカー、グウェン、ノワールの4人です。
またダンサーに女性のみを起用したことについても言及しておきましょう。
「スパイダーバース」は人種・性別・国籍の壁を取り払ったヒーローです。
ヒーローは男性が演じるという固定観念を取り払いたい。
そんな想いがダンサーのキャスティングに表れているのではないでしょうか?
TKの作品に寄り添った楽曲制作の姿勢
TKには多くのアニメ作品に寄り添った楽曲制作の実績があります。
そのもっとも典型的な例が石田スイ原作の「東京喰種」シリーズです。
同シリーズのOPに使用された『unravel』『katharsis』の2曲でTKは主人公の内面の苦悩を描きました。
特に『katharsis』のTV edit版では歌詞を変更してまでシリーズに寄り添っていたのです。
当然その制作プロセスは『P.S. RED I』にも引き継がれています。
PeaceもTimeもPerfectもKarmaも消えた時
出典: P.S. RED I/作詞:TK 作曲:TK
例えば2番のAメロで使用された上のフレーズ。
この歌詞の中にはピーター・パーカー、つまり初代スパイダーマンの名前が隠されています。
詳細は明かせませんがピーター・パーカーは「スパイダーバース」でも物語の重要なキーマンです。
またダンサーが東京を舞い踊る場面に現れるグラフィティ・アートはマイルス・モラレスの象徴と推察できます。
そして真夜中の東京を高所から見下ろす視点は4人のスパイダーマンの視点であることは一目瞭然です。