エレファントカシマシ【新しい季節へキミと】歌詞の意味解釈!簡単なはずの答えとは?二人の関係性を紐解くの画像

春夏秋冬彩る光を心に全部集めたら
ここから始まり!!のグラデーション
新しい季節へキミと

出典: 新しい季節へキミと/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次 亀田誠治

季節というものは通例、春夏秋冬という四季に分類できると考えられています。

俺はこの四季だけでは物足りないと歌っているのです。

春夏秋冬という区分のどれにも当てはまらない新しい季節の創設を望みます。

誇大妄想的で大胆な発想です。

しかし俺はキミと生きてゆくためにはこの新しい季節こそが必要だと考えます。

追い詰められてもいる俺の出口戦略のようなものはこのように非常に大胆なものなのです。

ここでも光というモチーフにこだわります。

四季の中で現れるあらゆる光を一時期にすべて重ね合わせてグラデーションがあるような新しい季節。

春も夏も秋も冬もそれぞれに光が降り注ぎます。

しかしその光の加減は季節ごとにバラバラでしょう。

そのバラバラな光を集めると彩度などに変化があるグラデーションが登場します。

俺が望む新しい季節はこの光のグラデーションによって彩られると宣言するのです。

スケールの大きなビジョンでしょう。

宮本浩次の発想は歳を重ねることによってむしろ柔軟な感性を魅せてくれるのです。

この季節にはまだ名前もありません。

いまこの瞬間からスタートしたばかりの季節ですからどんなものともいい難いです。

ひたすらに光のグラデーションで多彩なまぶしさや色を魅せてくれることにこだわりました。

俺がキミと一緒に生きてゆくには既存の季節では物足りないから新しいものをクリエイトしたのです。

夢と現実の間で

アーティストの夢と苦難

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夢を追いかけたり追い越されたり
焦げついちまった心震わせて空見上げた時
いつもキミを感じていた
答えなんてきっと簡単なのに

出典: 新しい季節へキミと/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次 亀田誠治

アーティストの生活は夢こそが資本になって現実を生み出します

大きな夢、小さな夢、大それた野望、ささやかな希望。

夢の形も大きさも様々ですが、あらゆる夢を元手にして実現させることが俺の歓びです。

ただ、夢との闘いがデッドヒートになると心は疲弊してしまうでしょう。

オーバーヒートを起こして心が焦げることさえあると歌います。

辛い状況にあるならば空を見上げるのです。

この空の下にはキミがいてくれると思えるからでしょう。

アーティストとはいえビジネスが絡んでくるのが資本主義社会の宿命です。

夢の内容はよりよい音楽を生み出したいというものだけではなくなります。

音楽バカでいられた頃の純粋さは後退してセールスというものも考えざるをえません。

クリエイターはいいものを創ることにこだわって欲しいものです。

売るという仕事は営業マン・セールスマンに任せればこれほど楽なことはありません。

しかし肝心の売り物が市場で通用しないものならば記憶にも記録にも残らない世界です。

一方でユニバーサル・ミュージックはアーティストと一緒になって会議をして作品を送り出します。

宮本浩次はこうしたレーベルの協力体制を心強く思ったと語っているのです。

夢について語り合う土壌があるのですから頼もしいでしょう。

その分だけ何とかしなくてはいけないという思いがまさに焦げることもあったのかもしれません。

愛する人がいるから前向きに

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仕事は充実していますが生活に関しては二の次になっている状態が続きます。

キミと会っていっぱい会話をして現状を打開したい思いが俺の心の中で渦巻くのです。

どうすればいいかは分かっているはずでしょう。

恋愛に関しての処方箋はダイレクトなコミュニケーションに任せることが第一です。

そう、俺はこの解答をすでに自分の中で導き出しています。

あとは行動に移すだけだということも理解しているでしょう。

こうしたことは百も承知なのだけれどもという歯痒さが歌詞の中に滲んでいます。

しかし俺の言葉には固有の前向きな姿勢も感じられるのです。

あくまでもすべての問題を一度に解決したがる性格まで伝わってきます。

俺のこうしたひたむきさを支えているのはキミという存在です。

愛する人の存在ほど私たちに勇気を与えてくれるものは他にありません。

自分だけの人生ならば自暴自棄にすらなりかねないでしょう。

しかし他者の幸福までにも責任を負っているという気概こそが人を前向きにさせるのです。

人間というものとその幸福の追求について動機になるのは愛の存在でしょう。

俺も真剣にキミとの未来について考え続けているのです。

答えだってすでに見当がついています。

最後に 俺の答えに応えよう

気ままな選択さえ許されなくなっても

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春夏秋冬彩る風のように日々生きられたら
俺しか知らない明日へ今すぐ飛んで行けるはず

変わりゆく東京の街にふたりの姿重ねていた
季節は巡りいろんな風を感じてきたこの街でもう一度はじめよう

出典: 新しい季節へキミと/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次 亀田誠治

宮本浩次は詩人として風というモチーフにもこだわり続けてきました。

エレファントカシマシの最初の日本武道館公演のサブタイトルは「風に吹かれて」です。

名曲でもある「風に吹かれて」をそのまま引用しました。

ミュージシャンならば必ず夢に見る日本武道館でのライブに風というモチーフを掲げたのです。

四季それぞれに吹きゆく風の気ままさというものへの憧れをのぞかせます。

風というものの規則性は気象予報士でさえ苦戦するくらいに把握しづらいものです。

そこにはある種の勝手さのようなイメージを重ね合わせることができます。

俺ももう自由気ままに生きられたら時空すら超越できるのにと願うのです。

俺の未来は自分で選び取るものだという頑固な想いも表明します。

私たち人間存在は絶えず選択を繰り返して自分の人生を決裁してゆく存在です。

俺の向かう先はその選択に委ねられていて本来は他者が口を挟むべきものではありません。

一方で宮本浩次の命運というものはもはや彼だけのものではなくなりました。

彼の一挙一動で様々な方面に影響が及びます。

昔みたいに興奮した女性ファンが客席で黄色い声援を送っただけで演奏を中断することもなくなりました。

彼なりに大きく成長して多くの人の人生を背負っている自覚も生まれてきたのです。

そのために風のようには生きづらくなってしまいました。

それでもキミとの生活をきちんとやり直すという意志は確かなものです。

宮本浩次の幸福追求権を誰も阻害できません。

歌詞の中の俺も東京という舞台でいちからやり直す決意をするのです。

東京という街は過酷な土地ではあります。

しかし多くの人がこの街を舞台にして人生を再構築してゆこうと願う不思議な土地でもあるのです。

そう決意したのならばもう答えがどうのといった次元ではありません。

いよいよ実行に移して未来を切り拓いてゆくしかないのです。

いよいよ歌詞はクライマックスに向かいます。

改めて関係を結び直すために

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いくつも流してきた涙は輝く明日からのメッセージ
ここから始まり!!のグラデーション
新しい季節へキミと
彩るぜ明日のグラデーション

出典: 新しい季節へキミと/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次 亀田誠治

いよいよクライマックスの歌詞です

まばゆく輝く光のグラデーションがまた登場します。

既存の四季のどれにも当てはまらない新しい季節を生み出そうと改めて心に決めるのです。

歌い出しでは月さえ見られない俺でしたがクライマックスでは明るい表情をしています。

これまでの涙の日々だって新しい時代の到来によって報われるようになるのです。

エレファントカシマシの歴史は苦難に満ちたものでしたからファンはこの言葉に感動を覚えました。

エピックソニーレコードから契約を切られてクラブやライブハウスからやり直します。

それはドサ回りともいうべきスタイルでした。

これまでホールや野外音楽堂でワンマンライブをしていた彼らが対バン形式のライブをします。

それも小さなハコであっても厭わないで地道にライブ活動を続けました。

それこそ俺が流した涙の痕が遺る健気な姿です。

ポニーキャニオンから再デビューして一躍スターダムにのし上がります。

しかしその後にも苦難は彼らに付き纏っていたのは熱心なファンならご存知でしょう。

いよいよもう一度の再スタートをしようという想いが強く滲むこの歌詞はいつ書かれたのでしょうか。

実際の歌詞には結晶しなくても宮本浩次は何度も何度もこのアイディアを脳内で再生していたはずです。

温めておいた言葉に固有の力強さがこれほど鮮烈に漂ってくることにファンは感謝しました。

宮本浩次はキミについてその実像を描いていません。

誰もがこのキミになりかわれるように人物像を空白のままで提出したのです。

私たちは誰しもこの曲のキミになることができます。

俺とキミの関係性はアーティストとファンの姿と相似性があるものなのです。

エレファントカシマシと新しい時代の扉を開いたのをいまでもファンは鮮烈に思い出せるでしょう。

新しい季節へキミと

エレファントカシマシや宮本浩次の再再々出発の合図になった楽曲です。

いまのバンドやソロの活動の起点にもなりました。

俺が見出した答えとはおそらく「実践」と呼ばれるものです。

そしてバンドにとっての「実践」とは新しい楽曲に結晶するものであります。

答えとはこの曲とその発表そのものだったのではないでしょうか。

キミたるファンはこの曲によって俺との関係を結び直すことを決意したのですから間違いないです。

発表からすでに十年以上のときを経ました。

しかしいまでもこの曲はキミであるファンとバンドの関係を結び付けてくれます。

若いリスナーも初めて触れるときに同じ思いをすることでしょう。

文句ない傑作をご紹介できて本当に幸せです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。