文学的な表現

ゴッチさんはご自身で本も出版しているほどの文才の持ち主です。

文学的表現が特徴的な歌詞が数多くあります。

これがアジカンの魅力の一つでもあります。

「新しい世界」でもゴッチさんらしい表現がたくさんあります。

二番目のAメロ

批評的なスタンスやアンチテーゼだとか

能書きに満たされた世界にはウンザリだよ

自分の立ち位置なんて何処だって良いから

目の前の景色を全部塗り替えるのさ

出典: 新しい世界/作詞:後藤正文 作曲:後藤正文

『スタンス』とは物事に対する姿勢、立ち位置のことです。

『アンチテーゼ』とは対立命題のことです。簡単に言うと反対意見のことです。

こちらの単語は特に普段の生活の中ではなかなか使用しない単語ではないでしょうか。

『能書き』とは自分自身の優れている部分を並べ立てることです。

この2行から読み取れることは、ネット社会に対してウンザリしているということではないでしょうか。

ネットをのぞいてみると様々な人がそれぞれの主張をしています。

もちろん言論の自由がありますので、それぞれの主義主張をするのはいいことです。

しかし、その多くの主張は『アンチテーゼ』が非常に多いのです。

そしてその主張する人はあたかもそれが正しいかのように『能書き』を垂れてそれを証明しようとします。

そんな世界はもうウンザリだから、目の前の景色を塗り替えて『新しい世界』にしようといっています。

一番目のサビ

変わりない日々の

逃げ入るその地下室の片隅から
さぁ
始めよう

胸躍るような新しい世界

出典: 新しい世界/作詞:後藤正文 作曲:後藤正文

ここでいう『地下室』とは何のことでしょうか?

『変わりない日々』から『逃げている場所』です。

これはおそらく自分の部屋を比喩しているのでしょう。

地下室と表現したのは暗く閉鎖的であることを表したかったのではないでしょうか。

しかもその『片隅』というのは部屋のどの部分でしょうか。

一つ前の歌詞ギターを弾いている描写がありますので、ギターを弾いているその場所のことでしょう。

そんな暗く狭い小さな場所から『胸おどるような新しい世界』を始めようと歌っています。

二番目のサビ

何もない君が

逃げ入るその自意識の片隅から
さぁ
飛び出そう

胸躍るような新しい世界

出典: 新しい世界/作詞:後藤正文 作曲:後藤正文

『自意識』に逃げるというのはどういうことでしょうか。

『自意識』とは自分自身についてどう意識しているかということです。

『何もない』と自分で自分のことを意識している『君』がいます。

『何もない』と決めつけているのは自分自身で、本当はそうでもないかもしれません。

しかし自分に対しての諦めは、ある意味で気が楽なことでもあります。

諦めさえしていたら、他人にどうこう批判批評されてもどうってこともないのです。

でもそれは現実に対しての逃げです。

自分で自分を決めつけることで『現実』から『自意識』に逃げているといっているのでしょう。

『片隅』というのは『自意識』の中でも『何もない』と意識している部分のことを指しているのでしょう。

そんなところに引きこもっているのではなく、新しい世界に飛び出そうと背中を押します。

新しい世界とはどんな世界のこと?

詳しく歌詞の解釈を述べさせて頂きましたが結局『新しい世界』とはどんな世界でしょうか?

変わりない日々、アンチテーゼばかり気になるネット、自分には何もないという自意識。

それぞれから飛び出した未だ見ぬ『新しい自分がいる世界』

それが『新しい世界』のことなのでしょう。

歌詞の中ではその飛び出すキッカケはギターであり『音楽』です。

音楽で世界が変わることを強く訴え、そして強く願っている楽曲です。

おそらくゴッチさんがそうだったように。

ロックの世界に引きずり込まれる楽曲紹介

「遥か彼方」