響き渡る悲痛な懇願
悲しみや絶望を美しく彩った、Aimerの『I beg you』。
劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lostbutterflyの主題歌となっています。
触れれば壊れてしまいそうな繊細さと、胸を締め付ける悲痛な願い。
狂気すら感じる美麗な世界に引きこまれること間違いなしです。
美しく妖しげな夢の世界
MVに出演しているのは女優の浜辺美波さん。
憂いを帯びた表情とミステリアスな視線に、ドキッとした人も多いでしょう。
耽美な映像が曲の持つ妖艶さをより強くしていますね。
おとぎ話の中のようなこの世界は、浜辺美波さん演じる少女が見ている夢なのでしょうか?
奇妙な動物たちに誘われて迷い込んだ深い森。
そこで見つけたメリーゴーラウンドが、また妖しい雰囲気を強調します。
暗闇の中で回り続けるメリーゴーラウンドの光は、まるで夢と現実をごちゃ混ぜにしているかのよう。
しかし、美しく妖しげなこの夢は、少女が吐き出した”黒い何か”によって崩壊を始めます。
その”黒い何か”に少女は、がんじがらめにされ……。
夢の中に逃げ込んでも、絶望から逃れることは叶わない。
MVのラストシーンは、それを暗示しているのかもしれません。
悲しみを欲しがるのは何故?
同情に縋りつく
憐れみをください
落ちた小鳥に
そっと触れるような
悲しみをください
涙汲んで 見下ろして
可哀想だと口に出して
靴の先で転がしても構わないわ
汚れててもいいからと
泥だらけの手を取って
出典: I beg you/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
憐れまれたい。それは、愛されたいと言い換えることもできるでしょう。
飛べなくなった小鳥を両手ですくい上げるように、私のことも抱きしめてほしい。
可哀想と思う気持ちは、相手を慈しむ気持ちに似ているのかもしれません。
か弱い生き物は多くの人の庇護欲を掻き立てます。
自分に向けられる感情が、同情であっても構わない。
相手と同等の存在になることよりも、相手から情けをもらうことを望む。
それは酷く歪んだ願望のように思えます。
しかしこの曲の主人公にとっては、その願望だけがすべてなのでしょう。
同情に縋りついて生きる姿を想像すると、なんだか虚しい気持ちになりますね。
現実では味わえない刺激が欲しい
ねぇ 輪になって踊りましょう
目障りな有象無象は全て
食べてしまいましょう
スパイスは耐え難い位がいいわ
出典: I beg you/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記
サビの歌詞はまるで現実味がありません。
聴いている人を夢の中に迷い込んでしまったような感覚にさせます。
輪になって踊る相手は誰なのか?
それは、MVに登場した奇妙な動物たちのことかもしれません。
もしくは、聴いている人それぞれが夢の中で出会ったことのある架空の生き物かも。
自分にしか見えない生き物たちと、夢の世界をつくり上げる。
きっと現実にはもう期待していないということなのでしょう。
また「目障りな~」の歌詞は、現実世界に自分を縛り付けている常識のことを意味しているのだと思われます。
夢の世界に邪魔なものは、すべて食べてしまおう。
味付けには、耐え難い位のスパイスをかけて……。
主人公は現実では味わえない刺激を求めている様子です。
どこかへ逃げたい
ここではないどこかへ逃げたい。
そう思ったことはありませんか?
2番では、そんな漠然とした願いが鬱々と歌われています。