【OBSCURE】とは
DIR EN GREYの衝撃作
【OBSCURE】は、2003年発売のアルバム『VULGAR』に収録されています。
MVが製作されるも、あまりにもグロテスクだったために発売規制がかかったという彼ららしいエピソード付きの本作。
歌詞の世界にもDIR EN GREYらしさが詰めこまれています。
歌詞の世界とは
この楽曲で描かれているのは、望まぬ男女の関係です。
愛のない相手に求められる1人の女性と、そこから誕生した小さな命。
淡々とした情景描写が続く中、唐突に登場する女性からの呼びかけには多くの人がドキッとさせられるでしょう。
自分自身も、そしてそんな自分から生まれてくる生命もまさに「OBSCURE」=曖昧。
様々な比喩で表現された女性の心模様、そして歌詞中に登場するたくさんの色の意味も紐解いていきましょう。
1つ目の色
吊るした紅月今宵で幾つ「…」
出典: OBSCURE/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
現代的、というよりはどこか古めかしさを感じさせるフレーズです。
おそらくそのイメージ通り、この楽曲が舞台にしているのは少し前の時代でしょう。
主人公の女性は遊女。望んでその仕事に就いたというよりは、仕方なく勤めていたのだと考えられます。
さて、この冒頭のフレーズで早速1つの色が登場していますね。
この意味を紐解く上で重要なのが、その前にかかっている「吊るした」という表現。
つまり、どこかに吊り下げられるほど軽いものであるとわかります。
さらにフレーズ後半ではその紅月を数えていることから、1つだけのものではない様子。
一体何を意味しているのでしょうか。先に続く歌詞とともに探っていきましょう。
望まぬ関係の中で
このフレーズがイメージさせる情景
合わない肌と肌を食して深みのどこへ沈む
開けた布をかき分けながら蛇は胎内へ深く
出典: OBSCURE/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
この楽曲の歌詞はこれまで見てきてわかる通り、客観的な視点で綴られていますね。
比喩表現を使いながらも多くの人がイメージしやすい言葉を並べること。
そしてあえて客観的な視点から淡々と情景描写だけをすること。
このような表現をされているが故に、この楽曲を受け取る側は主人公の感情を自由に想像できるのです。
解釈の自由さをたっぷり残している表現は、まさにこの楽曲の1つの魅力といえるでしょう。
さて。この楽曲は遊女、つまり女性が主人公だと述べました。
ここの歌詞では主人公が客である男性と身体を重ね合わせている様子が描かれています。
先ほど述べた通り明確に主人公の感情が表現されている箇所はありません。
つまりこの関係に対して主人公の女性が何を感じているかはわからないということ。
しかし唯一、1行目の最初にある「合わない」という言葉がネガティブな感情をイメージさせるのです。
となるとここの歌詞は、「望まぬ男女の関係」を表現しているのだと判断できそうですね。
ただの「遊女」と「客」の関係性ではおさまらないのかもしれません。
桜と月が意味するのは
ひらりひらりと悲しげに舞う染井吉野には成れる
汚れは満ちた糜爛の月と嘔吐の夜抉り取れ
出典: OBSCURE/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
1行目「染井吉野」は桜の品種名です。
桜の魅力といえば可愛らしい花はもちろんのこと、すぐに散ってしまう儚さもそうでしょう。
歌詞中でも満開の桜というよりは、既に散り始めた様子が描かれています。
先ほどの「望まぬ男女の関係」と重ねてみれば、男性が夢中になってくれる時間の短さを表現していると考えられます。
この楽曲の主人公は男性から、「欲望を満たしたらそれで用無し」といわんばかりの対応を受けたのでしょう。
そうしてすぐに使い捨てられる自分自身を儚いものに例えました。
せめて去り際くらいは美しくありたい。そんな想いで「染井吉野」の名前を出したのかもしれません。
続く2行目、「糜爛」はただれて崩れている様子を表す言葉です。
となると重要なのは「月」の意味。冒頭のフレーズに登場した「紅月」とも関係がありそうですね。
月の意味は、この楽曲に登場する唯一の英語詞部分から読み解いていきます。