今ごろ どうしておいでだろうか
今夜は 煙草が目にしみる

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

ここでは、自分の元を去ってしまった恋人を想う様子が描かれています。

もう別れてしまって会えない元恋人。

今ごろはどこで何をしているのだろうか、元気だろうかと思いやっています。

元恋人のことを思うとがあふれてきてしまうのでしょう。

それほどまでにまだ未練があるのです。

しかしそんな自分を認めたくなくて、煙草が目にしみて涙が出ているだけと表現。

泣いている主人公を見ている人などいないのに、それでも言い訳をせずにはいられない心境なのでしょう。

わたしは元恋人を想って泣いているわけじゃない、と自分に言い聞かせているのです。

自分自身にも虚勢を張っていないとつらい気持ちを耐えられないのでしょう。

それが主人公の性分なのかもしれません。

素直に悲しい、別れたくないと言えなかった主人公なのです。

どうしても捨てきれないプライドや意地があったのでしょう。

自分自身でもわかっていたはずです。

しかし根づいてしまっている性分はどうしようもできなかったのでしょう。

「男運は悪くなかった」に込められた意味

男運は 悪くなかった
あんないい人 いやしないもの
男運は 悪くなかった
Made in tears woo

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

男運は悪くなかった」はどのような意味が込められていると思いますか?

他はいろいろだめだったけれど、本当に男運だけはよかった、という意味なのでしょうか。

それとも、男運がいいというのも、本当は悪かったということを隠した虚勢とも読み取れます。

この歌詞はおそらく後者でしょう。

そのカギは歌詞最後にある「Made in tears」です。

涙でできているのは、元恋人との恋愛

涙でできた恋愛とは、主人公はずっと泣かされ続けてきたのでしょう。

浮気をされるなどの裏切りもあったのかもしれません。

いい女のふりをしている主人公であれば、浮気も笑って許すふりをした可能性もあります。

とてもつらい恋だったのでしょう。

しかし男運が悪いなんて認めたくないのです。

元恋人はとても素敵な恋人だった。

他では見つからないほどの良い人で、男運はよかったけれどさよならをしただけ

それだけのことだと言いたいのでしょう。

そのように自分を鼓舞しないと、生きていけないといった切実ささえ感じられます。

プライドばかりが高く中身のない自分を嘆く

自分は所詮、どこまでも安い女

陽に焼けた サンルーフのたもとから
季節終わりの雨が したたってる
安っぽい格子が うるんで見えるのは
安っぽいシェリーが まわるせいね

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

サンルーフとは、車の天井についている天蓋窓のことです。

その窓は開閉できるようになっており、顔を出して外の空気を吸うことができるでしょう。

天蓋窓がある車に憧れを持つ方もいるのではないでしょうか。

そのような豪華仕様の車に乗っている主人公。

これもまた、主人公が見栄とプライドで購入した車なのかもしれません。

元恋人とこの車に乗って楽しい時間を過ごしたことでしょう。

しかしそれも今は思い出の一部となり、一人で乗っている現実

季節終わりの雨とは、夏から秋にかけて降る雨のことでしょう。

夏の天気がよい日はサンルーフでいつでも気持ちのよい風を感じられたけれど。

雨の季節になれば、単なる窓に。

歌詞からは、哀愁が漂う雰囲気を感じられます。

 「安っぽい格子」とは、サンルーフの窓枠のことでしょう。

サンルーフ付きという見た目に惹かれて購入した車だけれど、実際は安い車なのかもしれません。

中古で購入した意味合いが含まれている可能性もあります。

シェリーとは、安いお酒のこと。

主人公はお酒に酔っているのです。

仕事でお酒を飲み、その帰りなのかもしれません。

中身が安い女は所詮、安いお酒に酔って煙草を吸い、安い車に乗っている。

どこまでも自虐的で、自身の運命や性分を嘆いているような雰囲気さえ伝わってきます。

別れから時間がかなり経過している

きれいなビルに変わった このあたり
出会った日には さえない街だったね

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

ここでは、時間の経過を表しています。

主人公が元恋人と出会ったころは、さえない街だったのにきれいなビルに変わっている。

都市開発などがなされたのでしょうか。

さえない街がきれいなビルに変わるまでには、相当な時間の経過が感じられます。

主人公と元恋人が付き合っていたのは、もうだいぶ前の話なのでしょう。

そんな昔の恋を、主人公は今でも引きずっているのです。

それほどまでに大きな未練を抱えている恋だったのでしょう。

続いてほしかったけれど叶わなかった恋

だめかもねと 怯えていたんじゃないの
やっぱりねと 哄えば筋が合うわ

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

身分違いの恋は、最初から長くは続かないとわかっていたのでしょう。

相手はどのように思っていたのかはわかりませんが、主人公からすれば劣等感を抱きつつも真剣な恋だったのです。

一生に一度出会うかどうかわからないくらいの、奇跡といってよい程の恋だったのでしょう。

釣り合わないと分かっていたけれど、両想いになれたのなら誰でももっと好かれたいと頑張るはず。

けれど、どこかで主人公はきっとこの恋はうまくいかないということが分かっていたのかもしれません。

だって、自分は本当は上っ面だけの安い人間だから。

だからやっぱりうまくいかなかった、と笑ってしまえば納得がいく話、といいたいのです。

強気な言葉とは裏腹に切ない恋心が伝わってくる歌詞でしょう。