そしてサビの3行目には“朝”というワードがでてきます。

朝と聞いて、みなさんは何をイメージするでしょうか。

暗かった夜に日が昇っていく景色は「希望の朝」とも表現されるほど、朝は前向きに捉えられることが多いです。

イギリスのことわざに「夜明け前が一番暗い」という言葉があります。

実は夜の長い時間の中で、一番暗くなる時間帯は夜が明ける直前なのだそうです。

今は真っ暗で先が見えなくても、実はすぐそこで光が待っているかもしれない。

朝という言葉が、選んだ道の先に後悔が待っていたとしても、必ず夜明けはくるのだということを表現しています。

笑うことの意味

優しい人にはなれない僕らが
悲しい記憶を許せないように

わかったふりなら出来なくていいさ
笑ったぶんだけ先へ進むんだ

出典: アッシュ/作詞:TAKESHI HOSOMI 作曲:TAKESHI HOSOMI

二番はこの歌詞から始まります。

そしてELLEGARDENを代表する曲のひとつである「金星」の中で、こんなことを歌っています。

最後に笑うのは正直なやつだけだ

出典: 金星/作詞:TAKESHI HOSOMI 作曲:TAKESHI HOSOMI

細美にとって、笑うとは正直に生きた証。

だからこの「アッシュ」でも、自分の気持ちを誤魔化すのではなく正直に生きようと歌っているのです。

一人だけじゃない

そしてこのフレーズで印象的なのは二人称から三人称へと変わったことでしょう。

これまでは「君」に対して、語りかける姿勢で歌われていましたが、二番では僕も君と同じなんだよ、と歌っているようにも聞こえてきます。

自分の人生は自分で決められる

二番のサビでも一番と同じ歌詞が歌われます。

そのあとに登場するのがこの歌詞

My name is Jack
Just tell me you are ok
My name is Jack
I've been standing next to you
In the storyboard
You can draw another one of your own

出典: アッシュ/作詞:TAKESHI HOSOMI 作曲:TAKESHI HOSOMI

これまで日本語で綴られてきましたが、ここにきて英詞が登場します。

和訳

“僕の名前はジャック

大丈夫だって言ってくれよ

僕の名前はジャック

いつも君の隣にいるからさ

絵コンテの中になら

君はもう一人の自分を描くことだってできるんだ”

僕=ジャックは、君のことをいつも見守っている、だから安心して生きて欲しいと願っているのでしょう。

そして自分の人生は思うままに自分で決めていくことができるということを歌っています。

ジャックという名前に込められた思い

唐突に明かされたジャックという名前。

これには何か意味が込められているのでしょうか。

実はジャックとは、英語圏ではよく付けられることが多い名前なのだそうです。

日本でいう「太郎」のような存在で、不特定の人物を名付ける際に用いられることもあるようです。

作詞者である細美は英語も堪能で、アメリカで働いていた過去もあるので、このことは知っていたはずでしょう。

その上で「アッシュ」の主人公にジャックという名前をつけた。

二番の歌詞で、二人称から三人称に変わったという解説をしました。

そしてジャックというたくさんの人に付けられている名前。

それはつまり誰もが「君」と同じように迷い苦しんでいる、独りじゃない

そんなことを細美はジャックという名前に託したのではないでしょうか。

全てがつながっている

最後は再びこの歌詞で、「アッシュ」は終わりを迎えます。

一番、二番、そして最後のサビも一言一句違わず、同じ歌詞で歌われてきました。

そのさまは「諦めるんじゃねえぞ」と、力強く言っているようです。

もしかしたらこの楽曲を聴いた人の中には、歌詞に共感しなかった方もいるかもしれません。

「別にそこまで悩んだことないから…」という方もいるでしょう。

ですがこれまでの人生を思い出してみてください。

進路をどうするか、就職するのか、進学をするのか。

どんなことを学び、その先で何をしようとしているのか。

何気なく暮らしているようで、実は私たちは何度も自分の人生を選択し、今を生きているのです。

今まさに岐路に立っている方もいるでしょう。

もしかしたら「アッシュ」のように、夜明けはすぐそこまで来ているかもしれません。

今はまだ苦しくても、振り返ったときに無駄ではなかったのだとやっと気づくことができるのではないでしょうか。

番外編:「アッシュ」というタイトルに込めた思い