ELLEGARDEN『No.13』の切ない物語に迫る!
メジャーコードで進行するサビと疾走感あふれるフレーズのロックチューン。
誰もが「ポジティブで明るい曲」だと信じて疑わない典型ではないでしょうか。
ELLEGARDENの『No.13』もまた、軽快なテンポで走り抜けていくメロコアといった印象です。
しかし、歌詞を紐解いてみると意外や意外、切ない物語が描かれているのでした。
門出のとき
いつまでも一緒にいられると思っていた人が、突然の旅立ち。
あなたはその背中を押しますか?シャツを引っ張って引き止めますか?
それとも背中をそっと見送りますか?
君は何のために何をしに行くのか
September 9th It's a sunny day
The smell of summer is still in the air
Your pirate ship has sailed away
I'm not so sure what you've been up to
出典: No.13/作詞:細美武士 作曲:細美武士
【和訳】
9月9日、晴れ
まだ夏の匂いが漂っている
君の海賊船はずっと遠くを航行している
君が今まで何をしてきたのかはよく分からないな
【考察】
最近は9月の初めといえばまだまだ夏が終わっておらず、いつまで暑さが続くのかと途方に暮れる時期ですね。
暦の上では秋ですし、一般的には秋に片足を突っ込んでいる時期かもしれません。
まだ夏独特の湿った匂いが空気の中に残っているのだと、主人公の「僕」は歌っています。
そんなある日、「君」の船がどこかに向かって出航したようです。
海賊船、と歌われていますがどういう意味なのでしょうか。
海賊たちは、ただ旅行のために海を航行しているわけではありません。
例えば金銀財宝を見つけるため、新しい大陸を見つけるため、グランドライン云々…。
場合によっては海賊王を目指している少年もいるわけです。
つまり、何かしらの目的があって船を動かしています。
しかし僕は、君がなぜ海賊船に乗っているのか、どういう経緯があったのかを知りません。
恐らく、その船がどこを目指しているのか、どんな目的なのかも知らないのでしょう。
君のためにできることは何か
I give up trying to stop you
Instead I keep watching over you things
You always have a home here
出典: No.13/作詞:細美武士 作曲:細美武士
【和訳】
君を止めようとしたけれど諦めたよ
代わりに君を見守り続けることにしたんだ
君が帰る場所がいつだってここにあるように
【考察】
僕にとって君の出航は、必ずしもおめでたいことではなかったようです。
本音を言えば、行かないでほしかった。「行かないで」という言葉が喉元まで出かかっていたのです。
しかし「諦めた」と歌います。
きっと、少しずつ遠くなっていく君の横顔や眼差しを見て、止めても無駄だと悟ったのでしょう。
手出しも口出しもせず、ただ君の背中が小さくなっていくのを見届けることにしました。
そして君が疲れたり傷ついたり、心が折れて帰還するときのことを考えます。
失意の底にいる君がもし戻って来ても、今までのように安心して過ごせるように、僕は今の暮らしを守ろうと決意しました。
僕は君のために何ができるだろうかと考えた結果、この答えに行き着いたのでしょう。
You won't fail me though
you come back with empty hands
出典: No.13/作詞:細美武士 作曲:細美武士
【和訳】
僕は別に失望なんてしないよ
例え君が手ぶらで帰って来てもね
【考察】
この歌詞は二通りの解釈ができます。
一つは、旅行に行ったわけではないのだからお土産なんて要らないよ、という意味です。
堅苦しくなりがちな別れの描写を、少しでも和らげようとする僕の気持ちが伝わってくる解釈です。
もう一つは、必ずしも結果を出さなくても良いよ、という意味です。
何も結果が残せないまま元の場所に戻って来るのは、君にとっては情けないことかもしれません。
しかし僕は、君がどんなに多くの成功を運んでこようとも、結果が残せなくても同じように受け入れるつもりです。
とにかく、何かがあったらすぐベースキャンプに戻っておいでという暖かな思いを感じます。
本当は何も手につかない
僕の言葉にはいくつかの矛盾があります。
きっとそれは、君の旅立ちに対する動揺なのでしょう。
便りのないのは良い便り
I'm waiting here You might not be back
I don't think I'm irrational
出典: No.13/作詞:細美武士 作曲:細美武士