思い出したくない過去も今を生きる糧になる
響は母親を亡くし、父親までも蒸発してしまったという暗い過去を抱えています。
決して好意的に見ることのできないそんな過去でも、何の役にも立たないということはないのです。
人は「過去」を下敷きにして、「今」の上に立っています。
今ここにいること、それはすべて、過去が今に繋がっている結果と考えられます。
そうすると過去に負った傷もまた、後になって何らかの救いになる可能性もあるのです。
その夜を越えた先に見えるもの
辛い過去を救いに変えられるかはあくまで可能性であって、断言はできません。
それでも、自分が成長できていたとしたら、可能性は決して低くはないと思います。
平凡な毎日を送っていた響は、ある日突然、無秩序な世界に投げ込まれました。
ただ恋人を愛していればよかったという、甘えた自分は捨てざるを得なかったでしょう。
そこで生き抜いた経験は、彼をずっと成長させたはずです。
そのことが、辛い過去をも救いに昇華してくれるのかもしれません。
愛の言葉すら口にできないままに
「愛してる」すらもまだ言えず
僕はさ、 君に何をあげられるだろうか
いつも何かが星に変わる
君もそうかな
出典: 星を仰ぐ/作詞:Mega Shinnosuke 作曲:Mega Shinnosuke
「僕は君には何もあげられないだろう」
ドラマの中で、響は恋人を探し続けます。
プロポーズを計画していた日に事故に巻き込まれた彼は、恋人に未だ想いを伝えられていません。
そのたった一言、ささやかな日々の中で伝えておくべきだった言葉を贈る相手を探し続けています。
引用歌詞の2行目にある問いかけは、単なる疑問のようにも見えます。
しかし考え方によっては、「反語」とも捉えることはできないでしょうか。
反語とは、そこに本来の意味とは反対の意味を持たせる表現方法のことを指します。
つまりこのフレーズには、「いや、何もあげられないだろう」といった言葉が続くと考えられます。
恋人に愛を伝えることもできていないのに、他に何をできるというのだろうということでしょう。
「星」が表現するもの
「あの人は星になった」などという言葉は、その人の命が失われたことを暗に示した言い回しです。
それを念頭に置いて歌詞を解釈すると、「君も命を落としてしまうのかな」といった意味になりますね。
ゾンビだらけの世界だから、君もやがては死んでしまうのか?では、解釈としてお粗末な感じがします。
永遠に存在するものは、この世にはありません。
どんな物もいつかは壊れるし、人もいつかは必ず死を迎えます。
引用3行目のフレーズには、そんな意味が込められているのではないでしょうか。
そして続く4行目で、「君もいつかはそうなってしまうのか?」という流れになると思われます。
自分はまだ愛の言葉すら伝えられていないのに…という思いすら見えてくるようです。
恋人を探し求める男性の、切ない思いが垣間見えるフレーズといえるでしょう。
命ある限り君と一緒に居たい
星が降る夜をただ仰ぐ
いつかの傷も今宵の君も
限りあるものが星になってゆくまで居れたら
君と居れたら
出典: 星を仰ぐ/作詞:Mega Shinnosuke 作曲:Mega Shinnosuke
いよいよ、【星を仰ぐ】も最後のパートを迎えます。
ここでも、恋人を強く想う男性の気持ちが歌われています。
辛い過去もとある夜の中にある「君」も、等しくいつかはこの世から消えてなくなる存在です。
ある一定の「限り」を持ったものたちは、一度は消えて星に姿を変えます。
せめてそれまでは一緒に居られたらという、彼の思いが胸に迫るパートです。
「今宵」という言葉が使われていますが、それは実際に今迎えている夜ではない気がします。
傍らにはいないけど、いつか一緒に過ごしたあの晩にいた彼女のことを思い出しているのでしょう。
それは悲しみでもあり、同時に希望のようにも思えてなりません。
不器用でも自分の気持ちに素直でいること
不器用でも自分に素直であること。
【星を仰ぐ】の中にいたのは、そういう心情を持った男性のように思えました。
あるいは彼自身に自覚はなくても、そのように行動している人のなのかもしれません。
ただ恋人を愛して、彼女と一緒に居たいという思いに、彼は素直であり続けるのでしょう。
聴き手としては、その思いが叶うことを祈りたいですね。
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