初デートからしばらくすると二人の恋はさらに盛り上がりをみせます。
札幌の町で始まった大人の恋の幕開けはどんなものなのでしょうか。
本物の恋
異性として惹かれ合い、大人の男女としての関係に踏み込んだ二人。
主人公が顔を上げるとそこには昨日まではなかった彼の優しい笑顔があります。
初めて体験する大きな愛に包まれながら、幸せの涙を流す主人公。
さっきまでは知らなかった世界が開けていたとしても怖くはありません。
何故ならば、新しい世界の自分は一人ぼっちではないから。
男性の温かい腕の中で主人公は「本物の恋」を体感しています。
この恋について先のことはわからないし、お互いの運命すらもわかりません。
しかし、今ここにあるのはかけがえのない幸せであり、優しさなのです。
散りゆく日に
アカシアといえば春先から初夏にかけて咲く黄色の小さな花。
輝くような黄色の花が群生する姿は金色に輝いているように美しいものです。
アカシアには「秘密の恋」「友情」「気まぐれな恋」といった花言葉があるそう。
アカシアが散ってしまった、ということは秘密の恋の終わりを意味しているのかもしれません。
もしくは、二人の間にあったのは気まぐれな恋だったのか。
今更、終わった恋の重さを量ってみても仕方がありません。
どちらにしても、恋は終わり思い出だけが今も主人公の胸の中に息づいています。
主人公の女性について
この歌の主人公そしてお相手の男性はどんな人なのでしょうか。
仕事または学業の理由で札幌にいる人。
お互いにまだ恋に慣れない若い年頃。
そんな二人が想像できます。
札幌という町、そこに何らかの理由で住み、特別な人に出会い、恋に落ちた二人。
軽い恋ではなかったけれど、様々な理由と運命が絡み合って一緒にはなれなかった。
嫌な思い出であれば、恋のかけらの感じられる場所に通常は足を踏み入れることはありません。
主人公にとって、たぶんお相手にとっても、良い恋だったことが連想できます。
この町は特別だから
淋しい時 むなしい時
私はいつも この町に来るの
どこかちがうの この町だけは
なぜか私に やさしくするの
恋人なのね ふるさとなのね
ありがとう私の 恋の町札幌
出典: 恋の町札幌/作詞:浜口庫之助 作曲:浜口庫之助
恋の思い出に浸りながら、主人公の気持ちは札幌の町への思いに傾いていきます。
主人公にとっての札幌とはどんな町なのでしょうか。
時間が経っても
主人公は初めての恋をこの札幌の町で体験しました。
浮き立つような高揚感、女としての幸せ、そしていろいろあっての別れ。
その一連の出来事は全てが終わった今も、心にしっかり焼き付いています。
その後、彼女はまた違う恋をしたでしょう。
札幌の町やそのほかのどこかの町で恋をし、その時々に何かしらストーリーが生まれたはずです。
そして、それぞれの恋が終わったとき、彼女は必ず札幌の町に想いを馳せます。
そこにあるのは、初めて恋をし、初めて愛された若き日の自分の姿。
思い出の町に帰るとき、彼女は優しい気持ちに包まれるようです。
初恋とは
初恋と聞いて思い出すことは、人によってさまざま。
幼き日の恋心を思い浮かべる人もあれば、青春の甘酸っぱい恋が思い出される人もいるでしょう。
初めて真剣に愛し合ったという恋も、初恋といえます。
大人になり、相手を認めそして認められた恋。
精神的にも肉体的にも許し合い、信じあった恋。
そんな初恋は時間が経っても自分の中で人を愛する姿勢の基礎になっていたりします。
主人公の女性は、何かしら寂しいときや悲しいときに札幌の町を訪れるよう。
そこにいけば、初めて人を愛したときのピュアな自分に出会えるからかもしれません。
また、同じく真剣に純粋に自分を愛してくれたお相手の心に触れられるから。
大人になると、思惑や計算が働き「愛」や「恋」が一番とは言えなくなります。
純粋に愛し、愛されていたころの自分。
主人公にとって札幌という町はそんな自分に戻れる心のふるさとであるようです。
この歌が愛される理由
札幌を題材にした曲の代表の一つとして、発売から40年以上経ってなお愛されているこの曲。
「恋の町札幌」には誰もが経験したような懐かしい恋の思い出が詰まっています。
大人になり、移り住んだ町で経験した初めての燃えるような恋。
緊張し、おっかなびっくりながらも飛び込んだ男女の世界。
それは、恋をする人が通る儀式のような出来事です。
恋の思い出と一緒に刻まれている町の風景。
こちらも、何かしら蘇る景色を誰しも持っているのではないでしょうか。
進学で親元を離れて住んだ町の景色。
社会人としてデビューし緊張しながら見た風景。
それらは、そのときの気持ちと一体となって何かの折に蘇ります。
そして時間を経てその町を訪れるとき、ふと懐かしいあのころの自分に戻れるような気がするもの。
恋や仕事に疲れると人はふとそんな場所に戻りたくなるのかもしれません。
「札幌」という町は誰の心の中にもある、あの頃の自分を思い出させてくれる優しい場所の代名詞なのです。