実際にヘヴィメタルとハウス・ミュージックの融合を図ったこの曲。

ライブ会場を巨大なディスコ/クラブのように揺らすでしょう。

ただその揺れ動く姿態はハウス・ミュージックに身体を任せるときと同じではありません。

あくまでもヘヴィメタルの伝統的なモッシュの在り方に忠実だと思われます。

それでも他のメタル・ミュージックに比べると随分、自由な踊りになるはずです。

ステージ上ではSU-METALの横でMOAMETALや鞘師里保などが踊ります。

メタルの未来の姿というものを彼女たちが身体で表現してくれるのです。

ワタシはあくまでも音楽に没入して心と身体を委ねて踊ることをリスナーに要求します。

旧来のメタル・ミュージックも踊ることと相性がよかったはずです。

この点に気付いて作られたユニットがBABYMETALなのですから。

彼女たちにとってメタル・ミュージックで踊ることはあくまでも自然なことなのです。

繰り返し訴える

アイドル・ビジネスの否定か

BABYMETAL【DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)】歌詞を解説!の画像

夢物語ばかりじゃ イヤ
とどろけ 愛の
セレナーデ!

出典: DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)/作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima, MEGMETAL

ここでもBABYMETALは現実しか相手にしないと歌います。

他のアイドルが競って青春期の夢を語っているのを横に現実に対してこだわり続ける彼女たち。

「DA DA DANCE」で歌われることはアイドル稼業一般への批判にもなりかねないものです。

確かにBABYMETALというアイドル批判精神があったからこそ生まれたユニットでしょう。

イリュージョンのような不確かなものに信頼を置かないでとも歌う彼女たち。

そこに若いレジスタンスたちの力強い思いというものがあふれています。

アイドル批判でありメタル批判でもある訳ですから賛否両論が渦巻くのは仕方ありません。

しかし評論家たちが頭を悩ませようとも世界中のリスナーを夢中にさせている事実は揺るがないのです。

実際には夢を持たずに生きる若者は空虚な存在でしょう。

その点で彼女たちには野望も夢もあるのです。

ここでSU-METALがこだわっているのはもっとふわふわしたイメージ戦略への批判でしょう。

アイドルは夢を売るものなんていう暗黙の了解を疑問に付す姿勢を鮮明にするのです。

反復という手法へのこだわり

BABYMETAL【DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)】歌詞を解説!の画像

DA DA DANCE DA DA DANCE
ゆめ まぼろし
DA DA DANCE DA DA DANCE
目を覚ませ
DA DA DANCE DA DA DANCE
譲れないシルエット
DA DA DANCE DA DA DANCE
いざ踊れ!

出典: DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)/作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima, MEGMETAL

リフレインを含む箇所です。

「DA DA DANCE」は反復を基本とするハウス・ミュージックの影響を受けています。

歌詞の方もミニマムなサイズで届けられるのです。

これはテクノ/ハウス・ミュージックの伝統からくるものであります。

踊るために創られた音楽であるハウス・ミュージックは音楽に没入させるために反復を多用するのです。

歌詞はときに一心不乱に踊る際にじゃまになることがあります。

歌詞の内容に気を取られて踊れないということがないようにできるだけ言葉を軽量化するのです。

また反復という音楽技法はドイツの音楽家、クラウス・ディンガーがこだわったものでしょう。

NEU!を率いた彼は徹底的に繰り返しが呼び起こす恍惚感に傾倒しました。

ヘヴィメタルの伝統の中ではギター・リフの反復というものがあります。

ただ、この曲での松本孝弘のギターはどちらかというとリフというものを無効化しているのです。

「DA DA DANCE」はヘヴィメタルの伝統ではなくハウス・ミュージックからの移入が目立ちます。

とてもよく練られた楽曲ですので感服するしかありません。

ABBAを思い出す

もう迷わない
誓いを両手に
かがやけ 愛の
DA DA Dancing Queen!

出典: DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)/作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima, MEGMETAL

SU-METALことワタシは盛んに愛という価値に訴えかけます。

ここでは具体的な恋愛が描かれる訳ではありません。

もっと普遍的な価値として考えられている愛にこだわるのです。

BABYMETALは確かに伝統的なラブソングを歌っているようなイメージが湧きません。

その分、「DA DA DANCE」では全世界への愛情というものを示します。

ハウス・ミュージックやダンス・ミュージックではこうした愛の表現が普通に歌われるものです。

特に肉感にこだわるような愛を歌い上げることが多いでしょう。

さすがにSU-METALはそこまで踏み込めません。

その代わりに人類への普遍的な愛を訴えるような女神のように歌います。

ダンスの女王という表現はディスコ/クラブ文化ではお馴染みのものです。

特にABBAの名曲にその名も「ダンシング・クイーン」というのがあります。

ABBAはハードロック/ヘヴィメタルの先駆者であるリッチー・ブラックモアが大好きなバンドです。

リッチーはハードロック以外の音楽にも造詣が深いアーティストなのは有名でしょう。

その中で特に意外だと思われたのがABBAへの愛です。

ハードロックの大立者が太鼓判を押したのでABBAのファン層は非常に広いものになりました。

そんなエピソードがこの歌詞に反映されているのかもしれません。

「ダンシング・クイーン」は週末にディスコでダンスの女王になりなさいと少女に語りかける楽曲です。

周りをよく見て踊るのよと教えてくれる素敵な楽曲であります。

そうしてABBAに語りかえられた少女こそBABYMETALであるという設定かもしれません。

最後に メタルの未来のために

モッシュの嵐の中で覚醒せよ

BABYMETAL【DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)】歌詞を解説!の画像

DA DA DANCE DA DA DANCE
ゆめ まぼろし
DA DA DANCE DA DA DANCE
目を覚ませ
DA DA DANCE DA DA DANCE
譲れないシルエット
DA DA DANCE DA DA DANCE
いざ踊れ!
舞い踊れ!

出典: DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)/作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima, MEGMETAL

いよいよクライマックスの歌詞になります。

ここでも反復という手法を見ることができるでしょう。

繰り返されるごとにその意味を掴めるようになるのですから不思議です。

いつまでも紛い物の夢に囚われていないでと歌います。

そして覚醒した状態で踊りましょうと宣言するのです。

これまでのBABYMETALの歩みすら否定しかねない歌詞になっています。

たとえば日本のkawaii文化の象徴のようなパブリック・イメージを自ら引き裂くようです。

踊ることで身体というものを思い出しましょうという訴えのようにも聴こえます。

無心になってモッシュする中で自分を見つけ出しましょうというような呼びかけが聴こえるようです。

メタル・ダンス・ユニットですから身体性へのこだわりは徹底しています。

この立場は他の誰にも務まらないから見ていてと歌っているようなのです。

現実こそが大事なのだから