大震災に影響を受けた楽曲

槇原敬之『Appreciation』賛否両論ある楽曲です。

一見すると「当たり前のことが大切」というよくあるテーマを歌っているように思えます。

注目したいのが『Appreciation』が収録されているアルバムを出したタイミング。

収録アルバムHeart to Heart』は2011年7月27日に発売されました。

2011年の3月には東北地方で大きな災害がありました。

長く揺れる地面、止まるパイプライン、海から押し寄せる「津波」という名の怪物。

原子力の平和利用のはずだった原子力発電所の事故も起こりました。

多くの人に影響を与え、それ以前とは人々の価値観も変わったといわれる大震災。

『Appreciation』は特に原子力発電所の事故を主題として取り扱った作品です。

原発擁護?賛否両論の楽曲

槇原敬之【Appreciation】歌詞解説!何に「感謝」すべき?考えさせられる歌詞に触れてみようの画像

とりわけ物議をかもしている部分がこの歌詞

壊れた原子炉よりも
手に負えないのはきっと
当たり前という気持ちに
汚染された僕らの心
ほら「有り難う」も言えない

出典: Appreciation /作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之

「有り難う」の部分が、原発の擁護ではないかと批判を受けています。

そうでなくともこの曲の1番は電気を称賛する内容。

その点からも原発擁護という声が上がっています。

同時に原発擁護と取るのは歌詞を読み込んでいない証拠、この曲は原発批判だという声も。

どちらの意見を読んでもどちらも最もだと感じたり、おかしいと感じたりと抱く感想も色々です。

本人の見解は次のようであり、少なくとも原発擁護は否定しています。

東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所事故を主題として、当たり前に思っていたものが失われた時に、「感謝」することと、「当たり前に思わないこと」ということがどれだけ大事なのかがこの曲のテーマとなっている。それにより、東京電力・福島第一原子力発電所および事故そのものを擁護しているとネット上で批判されたが、槇原はそれらの解釈を「全くの誤解」であるとしている。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Heart_to_Heart_(アルバム)

実際のところこの曲は擁護とか批判とかはあまり関係がないように思えます。

単純に当時思ったことを素直に言っている、そんな風にも取れるのです。

「Appreciation」は「感謝」、「評価」、「正しい認識」といった意味を持つ言葉。

正しい認識とは、感謝とは。

歌詞を通じて考えていきましょう。

私たちの生活は、電気によって成り立っている

槇原敬之【Appreciation】歌詞解説!何に「感謝」すべき?考えさせられる歌詞に触れてみようの画像

電気は人類の進歩の過程で生まれた重要なエネルギーです。

電車を動かすにしても工場の機械を動かすにしてもデータを入力するにしても。

電気がなければあらゆる仕事が立ち行かず、私たちの生活に混乱を巻き起こします。

たとえ私たちの先祖が電気なしで生活できていたとしても。

電気を知ってしまった私たちが不便な生活に戻るのは困難を極めそうです。

電車にも食卓にも

仕事場へ僕を毎日
運んでくれる電車を
動かしていたものを
どうして僕は悪く言える?

出典: Appreciation /作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之

場所から場所へ移動するための便利な機関の一つが電車です。

運転手、整備士、多くの人々の手によって快適な日常を過ごしています。

災害や事故で電車がストップするだけでも混乱を起こす、人々の日常になくてはならない電車。

ところで停電して、電車が動かなくなったというニュースを聞いたことはあるでしょうか。

電車は、電気によって動いています。

夕飯の食卓を囲む
大好きな人の顔を
明るくてらしてくれたものを
どうして悪く言えるんだろう?

出典: Appreciation /作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之

食事をつくるとき、明かりがなければ危なっかしくて料理できません。

包丁を扱うにしてもガスを扱うにしても手元がよく見えていなければ、大惨事につながります。

炊飯器に冷蔵庫、食卓をつくるために必要なものはたくさんあります。

夕飯ということは、外は日が暮れてすっかり暗くなっているでしょう。

一緒に食卓を囲む人の顔もそうですが、食事だって暗いままでは食べにくくて仕方がありません。

電灯1つでその場の雰囲気もパッと変わっていきます。

電気がなければ食卓1つ囲むことすら困難です。

電気があるからこその

 電車が動かなければ歩けばいい、電灯ではなくろうそくを使えばいい。

そんな風に言う人もいるかもしれません。

人工的なものに頼り過ぎといわれる昨今、そのほうが健全といえばそうでしょう。

しかし、この2つは一例にすぎず電気によって動いているものはそれだけではありません。

例えばクーラー。

40℃以上にもなる昨今の気候でクーラーもせず過ごしていたら死の危険があります。

仕事には必要不可欠な機械、コンピューターは全て電気の手によって動くものです。

食材の保管も冷蔵庫、冷凍庫がなければままなりません。

病院などの命をつなぐ機関でも電気は必要不可欠です。

人の手で負えないことを電気で動く機械が賄っているのですから。

便利な生活の根本には電気があり、電気がなくなればそんな生活ともお別れです。

1日2日ならば耐えられますが、ずっとは耐えられる気がしません。