まるで語りかけてくるような

never young beach「うつらない」MV解釈!あなたは”うつらない”ものを感じ取れるか?の画像

70年代の香りがしてくるような、スローテンポのフォークなサウンド。

西海岸のはっぴいえんど」とも言われる彼らの、10インチ・アナログ盤シングルです。

まるで何かを語りかけてくるような低音ボイスに、心地の良いコーラス。

曲からもどこか懐かしさを感じますが、MVも古いフィルムのよう。

今回は、このMVから彼らが伝えたかった”うつらない”ものを徹底解釈します。

映像だけでは補えない部分もあるので、その辺りは歌詞と共にご紹介。

まずは肝心のMVから見ていきましょう。

まずは実際の映像を見てみよう

どうも不可解なところが……

東京の街にチラチラと降っている雪。

そんな雪の中を、メンバーたちがまるで子どもに戻ったかのようにじゃれ合っています。

ですがこの映像、よくよく見てみると少し違和感。

雪が降っている街の風景が映し出されているのですが、道行く人たちはみんな薄着。

しかも薄着というよりは、もはや夏に近いような軽装。

登場するメンバーたちも、一貫してみんな半袖なのです。

どう見ても冬の映像ではありません。

そうなると、歌詞に出てくる”雪”というワードに何か意味が込められているよう。

都会を覆ってゆく”雪”とは、いったい何なのでしょうか。

みんなが知らず知らずのうちに踏みつけているもの

映像で出てくる街の様子は、どれもどこかで見たことのあるような風景。

自転車がせせこましく停まっている狭い路地、どこかの店先。

駅前のロータリー、駐車場、公園、野球場、線路の脇、住宅街。

そしてメンバーたちは、みんなで絡み合ったり、地面に落書きしたり。

釣り堀で遊んでみたり、どこかの遊具に登ってムリなポーズをしてみたり。

神社で影踏みをしてみたり、騎馬戦で戦ってみたり。

なんだか、まるで学生時代の放課後のような雰囲気。

昔へタイムスリップしたかのように、無邪気にじゃれ合っているのです。

でも不思議と、小学生や中学生の頃の自分を思い出しませんか?

身も蓋もないようなくだらないことで、延々笑っていられたあの頃。

今となっては何が楽しかったのか分からないけれど、時間を忘れて熱中できた遊び。

そんな誰にでもあった「子ども時代」が、このMVには映し出されています。

さらにもう1つポイントになりそうなのが、曲が終わったMVの終盤。

メンバーたちは何故か、スキー板を履いてスクランブル交差点を渡っています。

服装は依然として軽装のまま。雪の様子はどこにもありません。

彼らがスキー板でわざわざ踏みつけているものは、いったい何なのでしょうか?

この映像からは見えてこない、この踏みつけている「何か」。

これがおそらく、彼らの言う画面に”うつらない”ものなのでしょう。

より分かりやすくするために、次は歌詞も一緒に見ていきます。

歌詞から見えてくるもの

映像の最後、例の「スキー板」の部分を解明するために、歌詞もじっくり紐解いてみます。

冒頭から順を追って見ていきましょう。

自然と人工の対比

汚い街も 白い雪に 覆われて 覆われて
都市の灯りは幻のよう
虚しく光る 寂しく光る

出典: うつらない/作詞:Yuma Abe 作曲:Yuma Abe

”汚い”とは対照的な、純白の美しい”雪”。

映像の中でもハラハラと降り続いていました。

暗く淀んだ都会の街をキレイにしていくように、雪が積もっていきます。

真っ白になった街を、ネオンや街灯といった人工的な”灯り”が照らす。

ここで「自然」と「人工」が対になっています。                                 

しかしそんな幻想的な風景が、なんだか虚しく、そして寂しく見える。

せっかく自然の力でつくられたものに、結局は人の手が加わってしまう。

そんなところを”虚しく”・”寂しく”と表現しています。

かき消されてゆく何か

積もった雪は 道路の上で
還ることも 出来ないまま
車に轢かれ ガスに焼かれて
黒く汚れて 油に混じった

出典: うつらない/作詞:Yuma Abe 作曲:Yuma Abe

美しく降り積もった雪は、アスファルトの上で少しずつ溶けていく。

土に溶け込むのではなく、人工的な道の上で、ただ蒸発してしまうのです。

そして溶けずに残っているものは、車の下敷きになって黒く汚れていく。

都会の街を真っ白に染めたかのように見えたのに、どんどん元に戻っていきます。

自然の雪解け水になっていくはずなのに、油の中に混じってもう分からなくなる。

上手に自然を受け入れたようで、実は都会が大きく”雪”を飲み込んでしまいました。