- 撮影者&撮影機材:プロ以外
- SIRUPの笑顔:多い
- 過去:別れる前・誰かと一緒
2番は日常的な画質が数種類混ざることによって、SIRUP以外の存在が感じられるでしょう。
SIRUPが誰かと一緒にいて、SIRUPの姿を誰かがスマホなどで撮っている雰囲気です。
プロ以外が撮影した2番ではSIRUPはたくさん笑顔を見せているので、誰かと一緒の過去を意味するのでしょう。
1番と2番のフォーマットが混ざった3番は過去を振り返り、現在から未来へ……といったところでしょうか。
そもそも歴史的なデザインの建物は懐かしい空間、過去の生活や人間関係を彷彿とさせます。
そのうえ1番と2番では光も異なっているのです。この光の違いについて深読みしてみましょう。
暖かい光の意味とは?
自然光と電灯の違い
さらに光は1番が自然光で薄暗い、2番が電灯で明るいという違いになっています。
歌詞にじっくり耳を傾けてみると、一般的には切ない失恋ソングと思われる「Evergreen」。
ところがMVを見ると家族や友だち、仲間など幅広い人間関係との別れが描かれている印象です。
それはロマンティックな演出ではない、自然体のSIRUPの表情と光によるのかもしれません。
大きな光の玉が表すもの
1番と2番の<自然光と電灯>の対比は、<現在と過去>そして<ひとり・誰かと一緒>という状況を象徴。
そのうち1番は、電灯がついていないことで誰かがいなくなった喪失感が垣間見えます。
これが別れたあとの現在。ただし外から自然光は入ってきているので、薄暗いながらも真っ暗ではありません。
さらに2番は、電灯のおかげで明るくにぎやかな雰囲気が感じられます。これが誰かと一緒だった過去。
MVの設定としては撮影場所も登場人物も同じで非常にシンプルですが、微妙な違いで世界観が表現されています。
また2番と3番では、電灯のほかに大きな光の玉が浮かび上がっているように見える箇所があります。
1:50、2:15、2:27、2:34、3:27、3:35あたりをチェックしてみるとわかります。
これはレンズフレア(フレア)という撮影の際に強い光がレンズに反射して光が漏れる現象です。
このフレアはまるで誰かの魂を具現化したようなイメージに見えるかもしれません。
1番、あるいは3番のうち1番のフォーマットで撮影された部分ではこのフレアは出てきません。
これこそが暖かい光。今は別れているものの、かつて一緒にいた誰かの存在を表しているものと考えられます。
笑顔と暖かい光に象徴される別れた後の境地
「Evergreen」のMVが基本的にシンプルな作りになっているのは、ある部分を際立たせるためかもしれません。
そのある部分とは、SIRUPの自然な笑顔とフレアによる暖かい光。
この笑顔と暖かい光の意味をさらに深掘りしてみましょう。
別れても笑顔の関係性
2番の歌詞に<笑顔>という言葉が出てきます。
どんな時にも
側にいてくれたDays
今夜独りも悪くはない
Hand in my pocket
すれ違う人々の表情さえ
今なら笑顔に見えてしまいそうで
出典: Evergreen/作詞:KYOtaro 作曲:KYOtaro・Mori Zentaro
歌詞の文脈で解釈すると、すれ違うのは他人。駅や道、街などのどこかで偶然行き交う人々のことでしょう。
知り合いではない人とたまたますれ違っても、お互いが笑顔になることはほとんどありません。
おそらく無表情で歩いていると考えられる他人でさえ、笑顔に見えそう……というニュアンスです。
ここで重要なのは<今なら>というワード。以前はそうではなかったのかもしれません。
たとえば誰かと別れた直後は、すれ違う人すべてが泣き顔を浮かべているように感じられたとか。
他人は自分を映す鏡…という考え方があります。
まわりの人が怒っているように思えるときは、自分自身が怒りっぽくなっているのでは?と自戒するなど。
心の内側がわかるのは自分だけ。本心は他人にはけっしてわかりません。
つまり偶然すれ違う人が笑っているように見えるということは、自分が笑顔である証拠。
日常の何気ない風景とともに、別れの悲しさを乗り越え、今は笑顔でいられるという心情が浮かび上がります。
MVの2番でSIRUPの自然な笑顔が特徴的なのは、別れを乗り越えた穏やかな心境を表現したかったからでしょう。
暖かい光=暖かい記憶
シンプルなMVでひときわ目を引くフレアによる暖かい光を紐解く鍵は、サビの歌詞にあります。
思い出す君とのMemory
触れるとまだ暖かいけど
僕らはもう別々の道
歩みだしたそれぞれの日々 Oh
Ever Ever Ever
Ever Ever Evergreen…
出典: Evergreen/作詞:KYOtaro 作曲:KYOtaro・Mori Zentaro