劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」の挿入歌となったナンバー
Eve「心海」

今回ご紹介するのは、Eveの「心海」です
2020年12月23日に発売されたEP「廻廻寄諱/蒼のワルツ」に収録されている楽曲になります。
高く低く波打つように歌い上げるEveさんの歌唱や、穏やかかつ爽やかなサウンドなど魅力が詰まった1曲です。
「ジョゼと虎と魚たち」の世界観と照らし合わせて
「心海」は2020年12月25日に公開された劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」の挿入歌として制作されました。
劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」は1984年に発表された田辺聖子さんによる短編小説が原作となっています。
2003年には実写映画化もされました。
物語の主人公は、足が不自由なためほとんど外出したことのないジョゼ。
彼女が危険から助けてくれた大学生の恒夫と出会い、恋に落ちていく様子が描かれている作品です。
「心海」の歌詞は、この「ジョゼと虎と魚たち」の世界観と照らし合わせることができるものとなっています。
タイトルの「心海」の意味とは?
それでは順に歌詞を追っていくことで、この楽曲のもつ歌詞の意味を探っていきましょう。
タイトルの「心海」は、「しんかい」と読みます。
心の海とはどういうことを意味しているのか、すぐにはわからずに気になるタイトルですね。
自分だけの他者のいない世界
詳しく明らかにはされていませんが、この歌詞に出てくる主人公は、自分の殻に閉じこもっている状態です。
人と関わることなく自分だけの世界に生きてきたことが歌詞から読み取れます。
幾星霜 期待もないようなふりをした
恥ずかし気に でもわかってる
わかってる わかってる というだけど
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
幾星霜(いくせいそう)とは、苦労を経た上での長い年月を意味する言葉です。
長い期間、主人公はずっと誰かと関わろうとする意思を表面上は見せてはきませんでした。
ですが、心の底では人との関わりを持つことを望んでいたのだと思います。
長い間そのその望みを叶えられておらず、そのような思いを持ち続けている苦しい心情が歌詞では読み取れます。
双曲線 交わらないでいた
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
双曲線とは数学の関数グラフで描かれる点の軌跡の1つです。
切り口が両方に限りなく広がるため曲線が交わることはありません。
人と関われず、一定の距離を取りながらでしか過ごすことが出来ない主人公。
その様子を数学のグラフに例えて表現しています。
心を海に例える表現
ここでタイトルの「心海」の意味が読み取れる表現が出てきます。
今の状況を海に潜っている状態に例えて、息を吸うことが出来ないほど苦しい状態であることがわかりますね。
この場面で、タイトル「心海」と同じ読みを持つ「深海」を掛け合わせた意味合いが見えてきます。
人との繋がりを求めているけれど、孤独にひとりでいることしかできない主人公。
どうしたらいいかもわからず自分の声だけが聞こえる深い心の海の底で苦しんでいるような状況なのです。