その後のカットでは、街を往来する人々が映し出されます。
道端でタバコを吸う人や、立ち話をする人、歩いていく後ろ姿など。
その全ての人にそれぞれの人生があるということを私たちに教えるかのような映像です。
どんよりと曇った街の中を、そんな人々に混じって歩くMEGUMU。
彼女はどこか思い詰めたような表情で街を歩き回っているのです。
そんな東京の街を歩くもう1人の人物として、曽我部恵一が映し出されます。
彼もどこか思い詰めたような表情で、東京の街を歩いているようです。
MEGUMUと曽我部恵一の歩く姿が交互に映し出された後、曽我部恵一が道の途中でふと立ち止まります。
そして、どこかハッとしたかのように後ろを振り向くのです。
彼は何かの予感を感じ取ったのかもしれませんし、何か忘れものをしていることを思い出したのかもしれません。
歌詞にも注目
oh てきとうに笑って生きてた過去なんてないから
oh いま涙があふれるのとめることもできないから
oh ごまかすための道具も逃げ場所も持ってないから
oh いますぐにここで立ち上がることなんてできないから
出典: 雨が降りそう/作詞:曽我部恵一 作曲:曽我部恵一
そんな映像とともに、ここでは歌詞にも注目してみましょう。
ここに引用したのは、サビの歌詞です。
このパートから伝わってくるのは、主人公が今深い悲しみの感情を抱いているということ。
特に2行目からの歌詞にその悲しみの深さが描かれています。
自分では制御できないほど涙が自然と溢れてしまうのは心の深い部分まで悲しみに侵されているということでしょう。
3行目ではその悲しみから抜け出せずにいることを表しています。
自分ではどうすることもできず、その悲しみから逃げも隠れもできないことを自覚しているようです。
4行目の歌詞はその悲しみから立ち直れない自分を肯定するかのような言葉。
このパートから分かるのは、残されたサニーデイ・サービスのメンバーの今の気持ちです。
長年活動を共にしてきた仲間が急逝したことに対して、受け入れられないという気持ちなのでしょう。
彼らは今その悲しみの中に浸りながらも楽曲を作り続けることでその悲しみを芸術に昇華させようとしています。
どうにもできないほどの悲しみによって無気力になるのではなく、亡くなったメンバーの分まで音楽を作る。
それこそが自分たちに今できることだと考えているのでしょう。
彼らにとっては音楽を続けることが、今は亡き丸山晴茂の想いを継ぐことでもあるのです。
悲しみを昇華させて
街を徘徊する人々
街を歩いたり、路上に佇んだりしているMEGUMUとサニーデイの残されたメンバー2人。
その3人の様子が順番に映し出され、その誰もが手持ち無沙汰な様子で東京の街を見渡しているのです。
その間に入り込む散った花びらの映像などからは、時の無常さを感じさせます。
どんなものもいつかは消え去っていくということを、私たちに伝えたいのでしょうか。
MVは、拭いきれない悲しみの気配を携えながらサニーデイの2人がフェンスを背に虚空を見つめているシーンで終わります。
悲しみから抜け出すために
雨が降りそう
雨が降りそう
出典: 雨が降りそう/作詞:曽我部恵一 作曲:曽我部恵一
楽曲中何度も繰り返されるこの歌詞から伝わってくるのと同じように映像にも言い知れぬ憂鬱が漂っているかのようです。
そこにある雨の気配は止まっていた時間が動き出しそうな予感と、悲しみに染まる心模様の両方を感じ取れます。
街を徘徊することで、行き場のない自分の気持ちをその街の雑踏にぶつけているのかもしれません。
もしくは大切な人がいなくなったことで感じている孤独、都市のざわめきで満たそうとしているのでしょうか。
MVの中で街を歩くMEGUMUも、サニーデイの残されたメンバーのように悲しみを抱えているのでしょう。
誰かを亡くした悲しみから生じる怒りや、心の中の思い出を思い返しながら街を歩いている。
そんな中でMVの終盤、歩道橋の上にいるMEGUMUを曽我部恵一が目にします。
もしかしたら、同じ感情を持っているからこそ、何か通じ合えるものを感じたのかもしれません。
この楽曲でサニーデイは、これまでの思い出や彼らが抱えている今の悲しみを表現したのでしょう。
そしてこれはそんな悲しみの中でもがきながらも、新たな1歩を踏み出そうとする人々の曲。
「雨が降りそう」はそんな彼らの新たな門出を表した楽曲でもありました。
まとめ
今回は、Sunny Day Service(サニーデイ・サービス)の「雨が降りそう」のMVを解説しました。
楽曲に込められた意味を増幅するかのようなMVの世界観。
まるで短編映画を見ているかのような落ち着いた色彩の映像は大きなインパクトを持っています。
MVを見ながらこの記事をご覧になることで彼らが楽曲に込めたかった意味をより深く理解していただけたことでしょう。
ここまで、読んでいただきありがとうございました。
最後に、この記事を読んでいただいた方におすすめの記事をご紹介いたします。
サニーデイの初期の名曲「恋に落ちたら」。
そしてアルバム『Dance To You』より「セツナ」に関しての解説記事をご紹介します。
この機会に是非、こちらもご覧になってみてくださいね。
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