この曲の歌詞を読んでいて、もしかしたらこの部分はピンとこないかもしれません。
ダイヤル回して 手を止めた
出典: 恋におちて -Fall in love-/作詞:湯川れい子 作曲:小林明子
このダイヤルを回すというのはダイヤル式電話ならではの表現です。
家庭用電話や公衆電話ですら減ってきている最近ではなじみがないかもしれません。
1970年代までは電話といえばこのようなダイヤル式電話が主流でした。
Wikipediaには次のようなことも書いてあります。
1980年代後半は公衆電話がダイヤル式からプッシュホン式に替わったケースが多く、この歌詞を変えるべきか迷ったが、ダイヤル式は電話をかける時に時間がかかり、その時に迷う心理を表現するためにあえてこの部分を残して発表した
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/恋におちて_-Fall_in_love-
そうなんです。
ダイヤル式電話はダイヤルが戻る時間を待たなければならないんです。
「110番」や「119番」の最後の「0」や「9」はダイヤルが戻る時間に少し落ち着くためともいわれるように、ダイヤルから手をはなしたあとも時間があります。
筆者もその昔、ダイヤルを最後まで回して、戻るまでの時間に「やっぱりやめよう」と思って切った経験があります。
そういった、ダイヤルが戻るほんのわずかな時間の心の動きまで表現した繊細な歌詞に共感した人が当時多かったんだと思います。
英語では情熱的に
繊細な歌詞というのは歌謡曲などによく見られますが、この曲が単なる歌謡曲と違うのは2番以降にあるしかけのおかげです。
2番は歌詞がサビの前まではすべて英語で書かれています。
最近では日本人の楽曲でも全編英語で書かれたものもめずらしくありません。
しかし当時はサビが英語というのはあっても、ここまで英語をたくさん使ったものは聞き覚えがなく、驚きでした。
内容としては2番の歌いだしは1番とほぼ同じです。
ただ、途中から少しずつ変わってきます。
特に、一度日本語を使ったサビのあとにもう一度英語で歌い始めたフレーズが情熱的です。
Don't you remember
when you were here
without a thinking
we were caught in fire
出典: 恋におちて -Fall in love-/作詞:湯川れい子 作曲:小林明子
「一緒にいたとき、あんなに何も考えないで炎につつまれて愛し合ったのを忘れたの?」とダイレクトに歌います。
また、最後にも次のような歌詞があります。
Can't stop you, Can't hold you
Can't wait no more
出典: 恋におちて -Fall in love-/作詞:湯川れい子 作曲:小林明子
「もう待つことなんてできない」と切なく歌うのです。
この情熱的な英語部分を担当したのは、後にバイリンギャルとして有名になる山口美江さんだそうです。
クレジットされていないが、英語詞は山口美江が担当している。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/恋におちて_-Fall_in_love-
日本語と英語のミックス
この曲は切ない気持ちを日本語で繊細に歌い上げ、しかし英語では情熱的に歌い上げるという表現方法を使っています。
だからこそ、さっと聴いたときには女性の切ない気持ちが伝わってくるとともに、何かこみあげてくる強い思いも一緒に伝わってくる名曲になったのでしょう。
カバーも切なく
徳永さんの声質が、この曲にピッタリです。