はじめに
【母】カップリング曲
2020年2月2日でデビュー20周年を迎えた氷川きよしさん。
老若男女問わずの人気はとどまることを知りません。
そして、新しく21周年目に突入した2020年2月4日にニューシングル【母】をリリースしました。
こちらの楽曲の作詞は、なかにし礼さん。
作曲は杉本眞人さんです。
【母】は3つのタイプで展開しています。
以下の通りです。
- Aタイプ 【母】+カップリング曲【いつか会えますように】
- Bタイプ 【母】+カップリング曲【東京ヨイトコ音頭2020】
- Cタイプ【母】+カップリング曲【おもいで酒場】
そして今回ご紹介する楽曲は、Cタイプのカップリング曲【おもいで酒場】です!
作詞の九仁京介さんは、第48回日本作詞大賞を受賞、名だたる演歌の作詞をされているのですね。
2020年の氷川きよし
毎年、その年の代表となる楽曲をリリースされる氷川きよしさん。
歌手活動21周年目に突入する、記念すべき代表作は間違いなく【母】でしょう。
氷川きよしさんが、作詞家のなかにし礼さんに作詞をお願いしたのはなんと3年前。
じっくりと時間をかけ、磨き抜かれた楽曲に仕上がっていることは必至です。
その満を持した楽曲の、カップリング曲に選ばれた【おもいで酒場】。
「歌詞は、センテンスではなくフレーズであるべき」とは作詞家の九仁京介さんの言葉です。
短いフレーズの中に、歌世界が凝縮されているのが演歌の特徴でもあるのではないでしょうか。
さて、彼女の恋心と「おもいで」と称する酒場に繰り出す理由を紐解いていきたいと思います!
恋の事情
濡れた着物
雨に濡らした 裾(すそ)端折(はしょ)り
入ったあの日の おもいで酒場
出典: おもいで酒場/作詞:久仁京介 作曲:四方章人
夜の雨の中を1人の女性が歩いてきます。
彼女が目指すところは、1軒の居酒屋。
雨の夜に、独りで居酒屋を訪れる女性とはどんな女性なのでしょうか。
少し寂しげですが、敢えて他の人とは一緒に行きたくない理由がありそうです。
友人や家族では癒すことのできない事情をかかえて、彼女は独りの時間をつくることを選びました。
彼女は入ったお店のことを「おもいで酒場」と呼んでいます。
このお店には、「おもいで」と呼びたい特別な思い入れがあるようです。
おそらく、彼女が恋人とよく訪れていたお店なのでしょう。
だからこそ、だれとも分かちあえない「おもいで」を胸に独りひっそりと訪れたのでした。
あなたがよければ
わたしひとりが 身をひいた
それであなたは しあわせでしょう
出典: おもいで酒場/作詞:久仁京介 作曲:四方章人
突然ですが、彼女は不倫をしていたのでしょうか!?
そう思わせるようなドキっとしたフレーズです。
彼女は恋人を愛していたのに、彼の幸せを想って別れた。
彼女がいると幸せになれない関係、となるとやはり「道ならぬ恋」なのではないかと思うのです。
たしかに、そうでなくても恋から身をひくという状況は起こる場合もあります。
数えあげればきりがありませんが、大人の恋には様々な事情がありそうです。
その中で、彼女は自分が「彼と別れることによって彼が幸せになる。」という結論をだしたのでした。
自分を犠牲にしてまで、相手に幸せになってほしいという想い。
彼女は彼のことをとても愛していたのでしょう。
憎さいとしさ みれん酒
出典: おもいで酒場/作詞:久仁京介 作曲:四方章人
彼女は、自分の恋心を犠牲にすることで、彼を幸せにすることを選びました。
しかし、まだ彼への想いは残ります。
やはり自分の幸せをまっすぐに掴めないと、心残りがありそうです。
彼への愛情は、時に憎らしさに変化して彼女を苦しめます。
この愛情と憎しみが入り混じったものを、未練というのでしょう。
彼女のやりきれない想いは、お酒の味わいに彩りを添えています。
居酒屋という場所は、ただ飲んで食べるところではなくて、おもいでとともに味わう場所なのですね。