Alexandros人気曲「ムーンソング」の意味解釈とは？(ライブ動画あり)

思い出の中の花火の火は消えて、それとともに「僕」の回想も終わります。

現実に戻ると、月明かりのない暗闇の中に「僕」はいて、街灯を頼りに家に帰るのでした。

「眩しかったあの時代」は「君」がいた頃であり、暗闇の中にいる「僕」にとって「月」の明かりのようだった君を失ったことがわかります。

「胸の奥底痛む」という歌詞から、「君」を失った悲しみを表面上では乗り越えたはずだったのに、心の奥底で酷く痛く感じるほど、心の中ではまだ乗り越えられていないことがわかります。

「断片的でしかないくせして」と自嘲する「僕」ですが、楽しく眩しい時間ほど、思い返すと断片的にしか思い返せないものです。

しかし、「君」ともう会えない今となっては、本当は隅々まで思い出したいのでしょう。

辛い「僕」の心境がわかります。

“And all things we've done are slowly fading away from the memory”は僕たちがやってきた全てのことはだんだんと記憶から消えていくという意味です。

続きの歌詞も見てみましょう。

”Now we're dropped into the new phase gotta throw away all the history”は、僕たちは新しい段階に組み込まれて過去にあったことは捨てて行かなければならないという意味です。

つまり、時間が経つとともに世界は過去のことを捨て去って回っていくため、覚えておきたい記憶もだんだん消えて行ってしまう悲しみを歌っています。

新しい段階に組み込まれていくという歌詞のところで“phase”という単語を使ったのは、“phase”には月の位相という意味もあり、いやでも時間に巻き込まれていくという歌詞に、否応なく月が満ち、欠けていくこともニュアンスに含めたのでしょう。

Alexandrosの凄さがわかる歌詞ですね。

1番では、月が眩しいくらいに大きく輝いて、近く感じるけど手の届かない高いところにあるということを歌っていましたが、2番では主語が”It”から”We”に変わっています。

つまり、「僕」は今、「君」と一緒にいた時間を、とても遠く、眩しいものに感じているのです。

手を伸ばしたら届きそうに感じても、38万キロ以上も離れている月との距離のように、届かない記憶です。

「君がいなくなった世界で僕はどれくらい残るの？」という歌詞から、「君」がいた時間は断片的に感じられるくらい短く感じたのに、「君」を失ってからの時間は「僕」にとって途轍もなく長く感じられていることがわかります。

僕は、やりきれない思いで、水たまりでしょうか、月の映った水面を叩きます。

波紋で揺らいだ月は自分の心の中の不安を写しているようでした。

あんなに高くて決して届かない位置にあった月が、叩けるくらいに近くにあるのですが、それは、本物の月ではなく、水面にある月なのです。

それは、どんなに会いたくても本物の「君」には二度と会えず、叩けば揺らぐような自分の弱い心の中に映っている「君」としか会えないということを歌っているのでしょう。

「ムーンソング」は大切な人を失った悲しみを美しい月の描写で表現した切ない歌詞の曲でした。

スタイリッシュな楽曲の印象だけではない、深い歌詞の世界を持った「ムーンソング」、次聴くときは、歌詞の意味も考えながら聴いてみてはいかがでしょうか。