キリンジ【Drifter】と洋楽「○○」の関係が話題！意味深な歌詞を解釈☆YouTube動画も紹介！

“交わしたはずのない約束”、これは「良い人間になること」ではないかと思います。

どんな人であれ両親や家族、友人や恋人からは多少なりと“良い人間”であることを求められて生きているでしょう。しかし“良い人間”とは具体的にどんな人のことでしょうか？

真面目なひとであればあるほど、この約束に縛られ、自分の人生を虚しいもののように感じてしまう。そんな約束は放り出して、自由に生きてみたいと願っても、愛おしいひとの姿がちらついて手放せなくなってしまう。

そんな風に惑う様子を表現しているように読めるのです。

悪夢に目覚めて、寝付けなくなってしまう夜。自分のことばかり考えて、自意識に殺されるようになる明け方。

祈るように目を閉じても、カラスの声は朝を告げ、雨を連れた低気圧がひどい頭痛を呼び覚まします。

そんな、ひどい気分の毎日からも、“あなた”がいるから逃げ出すことなく生きている。

この歌詞の中の「逃げ」とは、真の意味での“死”を表現しているのではないでしょうか。

タイトルの“Drifter”は「漂流者」という意味。

自分の居場所を定めきれず、まるで漂流するように生きているひとを指します。キリンジはしばしば、自分たちこそ「漂流者」であると語っていました。

人形の家、つまり絵の中のように完璧な生活には、しかし人間らしい生々しさはありません。どんな生き方をすれば「良い人間」になれるのか、漂流者は迷います。

あるひとは言います、「お金がすべてだぜ」と。しかし、人生の価値はそんなもので決められるものなのでしょうか？言い切れないまま、漂流者はまた違う答えを探し、漂流を続けます。

「愛の歌」は理想の愛を歌い、理想像をでっちあげます。そんな歌を信じた誰かは、「愛しているならこのくらいできるでしょう」と、愛の証拠に多くのものを奪ってしまうのです。

そんな風に奪い合う先には、砂漠のように寂しい心の風景が広がるでしょう。

その先で心を枯らした自分の隣にも、彼女はいてくれるのでしょうか？

水を飲み、彼女を思い出し、なんとか答えのない不安に酔った鬱を振り払います。

そういえば、映画「ティファニーで朝食を」の中でヒロインを演じたオードリー・ヘプバーンが、窓際で歌う名曲「moon river（ムーンリヴァー）」の中でも、恋人たちを“two drifters（2人の漂流者）”と表現していました。

（ちなみにこの曲は映画のヒットとともに1961年のグラミー賞で三冠を達成しました。）

ふたりの漂流者が、世界を探しに出かけるの　たくさんの、見るべき世界があるから

あの歌の中の恋人たちのように、虹の足元にあるという宝箱を探すように軽やかに、絶望の日々を乗り越えてきたい。

そんな、朝焼けに似合う1曲です。

いかがでしたか？

キリンジの歌詞は、もちろん暗い内容を歌っているのですが（今回なんて鬱でしんどい深夜の歌ですし）妙にカラッと乾いていて、苦しくなりすぎないところが大変魅力的です。また、ちょっとしたフック（今回で言えば「moon river」）が隠されているところもオシャレですよね。

それではまた次回！