切ない恋を描く

シド【sleep】歌詞の意味を徹底解釈!恋が辛いのはどうして?後戻りできない思いに託す願いを紐解く!の画像

ビジュアル系ロックバンドシドのメジャー5作目シングルsleep】は、2010年3月にリリースされました。

1人の女性が愛する相手のことを語っているような歌詞が魅力的です。

しかし歌詞からは明るい印象を受けません。むしろ女性が抱く胸の苦しさ切なさが伝わってくるのです。

その女性がそこまで辛いのは、恋した相手が悪かったから。

今回は歌詞とともに主人公の女性の心中に迫っていきましょう。

2人を包むあたたかい時間

唇が渇く音さえも 聞き逃さない距離で いつも眠った
今日こそは後と決めたのに 包まれ 心地よく 先に眠った

出典: sleep/作詞:マオ 作曲:御恵明希

冒頭の歌詞です。眠っているのは主人公の女性と、彼女が心から愛する人

1行目にある通り2人は頭を寄せ合って横たわっていますから、親密な関係なのだとわかります。

主人公はきっといつも彼より先に寝落ちしてしまうのでしょう。でも本当は彼が眠るのを待ちたいのです。

愛しい相手の無防備な寝姿・寝顔を見つめたいという想いがあるのでしょう。

はたまた眠ってしまった彼を見つめたかった…。

そうすることで少しでも自分が優位に立っている気持ちを味わいたかったのかもしれません。

この恋の主導権は男性側にあり、主人公の女性はそれを受け入れつつも何かしらの不満を抱いている…。

平和そうに見えるこのフレーズからは、2人の関係に隠された秘密が見え隠れしているようです。

君との関係性

主導権を握らないで

君のことを知るたびに 知らない君を ひとつ 忘れる
そんな 君主導な恋 辛いよ

出典: sleep/作詞:マオ 作曲:御恵明希

冒頭のフレーズで感じた、どことなく柔らかで優し気な雰囲気はここでも健在。

1行目からはこの恋愛を純粋に楽しんでいるかのような雰囲気が漂っているのです。

大好きな君のことを知る。これは主人公にとってとても嬉しいことでしょう。

しかし2行目と続けてみてみると、彼のことを知れば知るほど主導権を握られている感覚になっている様子。

そんな状態を「辛い」と嘆く理由は一体どこにあるのでしょうか。

恋が辛い理由

男性がリードしてくれる恋愛。憧れる女性も多いことでしょう。

ただ主人公にとってはそれが辛いのです。その理由は2つ。

1つ目は、相手が優位に立つ恋愛・関係性を嫌っているから。ただこれが真実である可能性は低いでしょう。

2つ目の理由は、いけない関係なのに深い愛に溺れていくことが怖いから。

浮気相手なのかもしれませんし、ただ身体を求められるだけの存在なのかもしれません。

いずれにせよお互いに愛し合い、一途に想いあっている2人というわけではないということです。

こうなると、1行目のフレーズでさえ切なさを帯びているように見えてしまいませんか?

主人公は自分の目の前にいて、自分のことを愛してくれる君のことだけ知れればいいと思っています。

しかし関係が深く、長くなるほどに見たくない顔まで見てしまったのでしょう。

それは例えば本命の相手といる姿かもしれませんし、他の女の子と仲良くしている姿かもしれません。

自分にだけ見せてくれていると思っていた甘い顔を他の女性にも向けている。

知らなくてよかったはずなのに知ってしまい、苦しむのは主人公だけです。

彼女にとってはこの状態がまさに「君主導」。君のせいで心が痛み、余計なことを考え、苦しくなる。

相手への愛が深いからこそこのような状況に陥り、辛さを感じているのです。

それでも別れられないのは

さよならに 踏み切れるはずもないと わかってるけど
念の為に 抱きしめる
どこまでもずるい人と知って 近づいたのは そう
夢中の後 もう 戻れない

出典: sleep/作詞:マオ 作曲:御恵明希

ここまで傷ついていながら、主人公はまだ君を愛しています。

きっと君が自分以外の女性とも関係を持っていると知った時にはすでに、深い愛に溺れていたのでしょう。

だから事実を知ったところで、簡単に抜けだすことなどできないのです。

もちろん頭に別れがよぎったことは何度もあったはず。

もう最後にするつもりで、別れのあいさつ代わりに彼を抱きしめたこともあったのでしょう。

しかしそんなことをすれば、また君からの愛を感じて離れられなくなってしまいます。

だからこそ1-2行目の歌詞なのでしょう。何度も失敗しているからこそ、理解しているのです。

後戻りできないからこそ