ソリッドなギターのカッティング

スピッツ【見っけ】アルバム収録曲解説!「優しいあの子」「ラジオデイズ」などの名曲についても詳しく紹介の画像

タイトルの「YM71D」に何だろうと思うかもしれません。

シンセサイザーの銘機かななどと思いましたが歌詞を読んで正体が分かりました。

語呂合わせというものは楽しいものです。

草野正宗のスタンスからでしょうか、ときの政権批判のような言葉も登場します。

ギターのカッティングが印象的なサウンドでソリッドなサウンドです。

このアレンジは歌詞の世界を忠実に再現しています。

1980年代のイギリスのロックの薫りがするので懐かしく思う人もいるでしょう。

ニューウェイヴと呼ばれたあの時代のサウンドです。

実際にはどこから聴いてもスピッツの音楽でしかないように仕上がっているのも見事でしょう。

歌詞をご覧いただいてタイトルの「YM71D」の意味を知ってください。

希望を捨てないでという想い

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反則の出会いなんだし 目立たぬようにしてたけど
きまじめで少しサディスティックな 社会の手ふりほどいた
言霊を信じれば 開けるでしょ
王様は裸です!と 叫びたい夜
やめないで 長すぎた 下りから ジャンプ台にさしかかり
マグレにも 光あれ どこまでも 跳べるはずさ二人
uh... uh…

出典: YM71D/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

基礎はラブソングです。

しかし様々に付随する要素にハッとさせられるでしょう。

語り手の僕は君とこの世界で生きてゆく決意を固めます。

しかしこの世界の王様は裸です。

虚飾と捏造でできた権威から降りようとしないいまの日本の為政者を批判します。

肝心の「YM71D」はやめないでの語呂合わせだとこのラインで気付くでしょう。

残虐さを隠そうともしない社会の手から逃れたらふたりはどこまでも跳べると歌います。

だから希望を捨てないでというような想いを「YM71D」と叫んでいるのです。

逃避行は祈りとともにあります。

光あれと祈るしかありません。

これからが人生の本番なのだという想いを滲ませているのです。

9曲目「はぐれ狼」

クランチ・トーンで紡ぐギターロック

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こちらもギターロック・チューンです。

とはいえ歪は抑えられたクランチサウンドでザ・スミスのようなギター

軽やかな印象は相変わらずのものでしょう。

サビのメロディなどは黄金のスピッツ節が聴けます。

「はぐれ狼」とはいってもそこは隠喩です。

群れから離れて暮らす狼のように孤独な状況にいる男性を描いています。

輪からはぐれてしまったのは生命体としての弱さが原因だったようです。

足手まといだと社会から捨てられた「はぐれ狼」に草野正宗はむしろ希望を託しました

実際の歌詞を見ていきましょう。

希望だけは残してくれている

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はぐれ狼 擬態は終わり 錆び付いた槍を磨いて
勝算は薄いけど 君を信じたい 鈍色の影を飛び越えていく

はぐれ狼 乾いた荒野で 美しい悪魔を待つ
冬になっても 君を信じたい まどろみの果てに見た朝焼け

出典: はぐれ狼/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

群れからはぐれた狼のように生きる男性が復讐を企てているようです。

とはいえ誰かを殺めるような物騒な復讐ではありません。

信じられるのは君だけだという想いを口にします。

その君のためにもう一度社会の中で勝負を賭けてみようかと思索を練っているようです。

草野正宗は具体的な状況については明示してくれません。

隠喩や抽象の中から物語の核を見出してゆくのがスピッツの歌詞の読み方の醍醐味でしょう。

どこか希望に満ちた響きをはぐれた狼のために用意してくれました。

同じような境遇にいると感じるリスナーには励みになるでしょう。

一度社会から放逐されると勝ち目は薄くなってしまいます。

「はぐれ狼」でもそうした可能性についてきちんと触れているのです。

草野正宗は成功を約束してはくれないし、野望が叶った場面も描きません。

それでも希望だけは残してくれているのです。

10曲目「まがった僕のしっぽ」

カンタベリー・ロックのような薫り

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4分47秒と最近のJ-POPとしては平均的な長さです。

しかしアルバム「見っけ」では一番長い楽曲になります。

そして極めつけはロック・サウンドにフルートを導入していることでしょう。

イギリスのジェスロ・タルや日本のGHOSTのようなサイケデリック/プログレッシブ・ロックのよう。

展開も激しく変わりますし、ヘヴィ・ロックのような響きがある箇所だってあるのです。

スピッツの音楽的野心が結晶したような楽曲でしょう。

往年のカンタベリー・ロックのような薫りがします。

ロック・ミュージックが成熟してゆく中で生まれたサウンドとの共通点があるのです。

歌詞は旅をすることで狭いかごから抜け出すことの希望を描いています。

旅をすることによって獲られる見識で世界に新しい価値をもたらしたいと願うのです。

ねずみなのか猫なのか犬なのかしっぽの持ち主は分かりません。

そうした小動物に喩えられるような少年がモデルのようです。

実際の歌詞を見ていきましょう。

冷笑主義こそ嘲笑おう