曲の背景
ベースの亀田誠治が作曲を担当
アルバム名は「娯楽」。
東京事変では、今まで主にボーカルの椎名林檎が作詞作曲を行っていました。
しかし同アルバムでは挑戦的な試みをしています。
そして【私生活】の作曲はベースの亀田誠治が担当しています。
亀田誠治の楽曲は真っ直ぐで包容力のあるメロディが特徴です。
そしてその亀田誠治ならではのカラーが、同曲にも色濃く表れています。
聴く人をどこかホッとさせるような【私生活】。
歌詞はメロディのイメージを崩さないよう、椎名林檎が担当しました。
【私生活】というタイトルの通り、自分の生活を顧みた楽曲です。
共感する方も多い、隠れた名曲となっています。
テーマは「社会と自分」
曲のテーマはタイトルの通り、「自分の暮らし」についてです。
といっても、プライベートなことばかりを歌った曲ではありません。
暮らしの中でも特に時間の大多数を割く、「仕事」についてです。
大人になると、生活の大半が仕事で埋まってしまいます。
月曜日から金曜日の朝9時から17時まで。
もっと仕事の時間が長い人もいるでしょう。
そう、同曲は生活と切っても切れない関係にある「仕事」を歌っているのです。
社会の中で働き、生きている自分。
そんな自身の姿をふと客観的に見た楽曲といえるでしょう。
社会の一員である自分
消費して回していく日常
酸素と海とガソリンと沢山の気遣いを浪費している
出典: 私生活/作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治
早速歌詞を見ていきましょう。
最初のフレーズでは今の現状を表しています。
意味を考えると、「使い捨てていくものが多い」という趣旨のようです。
どちらかとネガティブなイメージですね。
私たち人間は毎日息を吸って呼吸を繰り返しています。
そして水を意味する言葉は「資源」の象徴でしょうか。
またせわしなく移動する私たちは車を使います。
その運転には燃料も不可欠です。
このように私たちはただ生きているだけであらゆるものを使っていることが分かります。
そして最後に重要なのが「気配り」。
社会に出ると色々な方面へ頭を下げ、配慮をしなくてはいけません。
気持ちは限りのあるものではありませんが、心がすり減るとはよく言ったものです。
物質的なものだけでなく、私たちは心も酷使して今を生きているということでしょう。
何のために働くのか
生活のため働いて僕は都会(まち)を平らげる
出典: 私生活/作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治
ありとあらゆるものを使い捨てて生きている私たち。
ではなぜそこまでして働く必要があるのでしょうか。
それは無論、家計を支えるために他なりません。
自ら働かなくては、お金が降ってくることもないのです。
最低限の生活を営むため、そして生活の質を上げるため。
私たちは努力しています。
それが働くということの、最も実態に即した理由でしょう。
仕事が嫌でも大人たちはそれを理解しています。
働かずとも生活できるなら、それに越したことはありません。
しかしそんな夢のような話はないのです。
静かな理解と諦めを抱えて、今日も大人たちは社会に繰り出します。
対照的な【私生活】
愛する人と穏やかなひと時
左に笑うあなたの頬の仕組みが乱れないように
出典: 私生活/作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治