ドラマティックな歴史
栄光と波乱の物語
インディーズ活動を経た1999年、シングル「the tripod e.p」でメジャーデビューしたm-flo。
女性ボーカルのLISA、MCのVERBAL、DJの☆Taku Takahashiによるダンス・ヒップホップグループです。
「3つの柱」「三脚」といった意味、まさに3人を表す「tripod」(トライポッド)を掲げたシングル。
まさに、栄光の物語の幕開けを告げる曲でした。
この年は、さらに3枚のシングルをリリース。
2000年には、1stアルバム「Planet Shining」がヒット。
2001年の2ndアルバム「EXPO EXPO」は80万枚の好セールスを記録し、さらなる成功を手に入れます。
しかし、そうした栄光の先に待っていたのは、波乱に包まれた物語だったのです。
2002年4月、LISAがソロ活動への専念を理由に脱退を発表。
以降、m-floはパーマネントのボーカリストを置かないまま活動します。
共に歩んできた、オリジナルの「tripod」の1つを欠いての活動でした。
もちろん、ゲストボーカリストを迎えた「Loves」シリーズが、mーfloの新たな可能性を切り開いたのは確か。
2005年には、日本武道館でのワンマンライブを成功させました。
一方、「Loves」シリーズは、2007年の5thアルバム「COSMICOLOR」で最終章を迎えます。
「never」のリリースが発表されたのは、それから10年後のこと。
切ない歌詞に万感の思いを込めた声の持ち主は、15年前に脱退したLISAでした。
再生
邦画の主題歌に
2014年の8thオリジナルアルバム「FUTURE IS WOW」以来、沈黙を守っていたm-flo。
2017年12月15日、突然のビッグニュースを発表します。
LISAの完全復活と、その年の12月31日の新年カウントダウンイベントでのパフォーマンス披露。
そして、オリジナルメンバー3人による書き下ろしの新曲「never」のリリース。
この曲は、翌年3月公開の邦画「去年の冬、きみと別れ」の主題歌であることも報告されました。
「LISAが帰ってくる」という、とてつもない高揚感に包まれたファンたち。
華々しい復帰作とあって、m-floらしいパワフルなダンスチューンへの期待も高まりました。
しかしそれは、いい意味で裏切られることになります。
万感の思いが込められた歌詞
すさまじい迫力のバラード曲
「去年の冬、きみと別れ」はEXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEメンバーの岩田剛典が主演。
人気作家、中村文則の同名小説が原作の「純愛サスペンス」です。
主題歌に起用されたきっかけは、岩田剛典自身がm-floのファンだったということ。
そして何よりも、この曲が、切なさや儚(はかな)さを表現したこの映画の世界観に合致したことでした。
m-floにとって久しぶりのバラード曲である「never」という曲。
m-floが得意としてきたEDMの音圧を強調しない、シンプルなサウンドメイクです。
そうして浮き彫りになったのは、LISAの万感の思いが凝縮された言葉。
胸がいっぱいになる言葉には、とてつもないリアルも込められていました。
オーバーラップ
全てを許して
時を越えて今
胸に押し込めていた想い’s now far away
孤独に耐えた日々と悔やんで泣いた夜も
あんなにも傷ついても愛おしい…
出典: never/作詞:m-flo 作曲:m-flo
「全てを許して」という、ストレートな懺悔(ざんげ)で始まる歌詞です。
この歌詞の意味は、もはや疑いようがありません。
m-floの人気が急上昇したタイミングでの脱退の裏に、何があったのか。
それは、メンバーの3人にしか分かりません。
しかし、それを意味深に物語っているのは「孤独に耐えた日々と悔やんで泣いた夜」。
そうした日々は、「あんなにも傷ついても」という内面の言葉とオーバーラップします、
LISAの切ない歌声から、ひりひりするような心の痛みが伝わる歌詞。
m-floの再出発というタイミングで、リアルな痛みを包み隠さず口にしたのはなぜなのでしょうか。
その答えは、「時を越えて今」というフレーズに凝縮されていると思えるのです。
苦しみを乗り越えたからこその強さを感じられる「never」という曲。
「絶対ない」という強い意味が込められたタイトルは、LISAの率直な心境のように受け取れます。
心のわだかまりを解消し、自ら脱退したグループに帰ってきた心境。
未来に向かってもう一度歩き出した3人の決意が、どれほど強いものであるかは、想像に難くありません。
「メンバーに書いたラブレター」
3人の絆が感じられる詞について、彼女自身はそう表現しました。
ストレートな思い
宇宙には光掛ける星もいて
目を伏せていたでも
凄く綺麗だった…
果てし無く続く空
君の名前を呼ぶよ
想うほど君のこと好き、好き
伝えきれないまま
心で抱きしめたよ
切なくて切なくて好き、好き
出典: never/作詞:m-flo 作曲:m-flo