楽しかった思い出や仲良かった人も、自分にとって「過去」になってしまうとつい忘れてしまうものです。
そしてふとした時に「あの人どうしてるかな?」と思ったり「何だったっけ?」と思い出したりもします。
しかし、またすぐに忙しい日常を過ごしているとつい忘れてしまう。
忘れるのは良い面もあれば、客観的に見ると悲しくも切なくもなります。
このフレーズが寝屋川で出会った人達だと考えると「ここじゃない場所=寝屋川説」は濃厚です。
『ここじゃない場所』から感じとる牛丸ありさの心の変化
「場所」というのは単に地名だけとは限りません。
なぜなら自分たちがおかれているまたはおかれていた環境を表すことも可能だからです。
牛丸ありささんはメジャーデビュー後、やりたいことと求められることのギャップで苦しさを感じていました。
アルバム『健全な社会』から垣間見える、牛丸さんの心の変化と『ここじゃない場所』について読み解いていきます。
メジャーデビュー後に感じた息苦しさ
牛丸さんはとあるインタビューで自分と曲の乖離を感じたと答えていました。
一見メジャーデビューというのはおめでたいことです。
さらに、インディーズ時代から応援していたファンにとっても嬉しいことに感じます。
しかし、本人にとってはギャップが生まれてしまう場合もあるのかもしれません。
牛丸さんにとって、作りたい音楽と求められる音楽が乖離していくのは息苦しかったことでしょう。
しかし『健全な社会』色々な人との出会いや刺激によって楽しく納得して作り上げたそうです。
だからこそ『ここじゃない場所』が出来上がったのかもしれません。
そう考えると冒頭のフレーズは、自分のやりたかった音楽の原点に戻ってこられたとも読み取れます。
ヒット曲『アボカド』『笑おう』と異なる世界観
yonigeは『アボカド』やauのCMに使われた『笑おう』をきっかけに注目されるようになりました。
しかし『ここじゃない場所』はもちろん、アルバム『健全な社会』の世界観が異なります。
どんなに聞く側にとって良い音楽でも、発信する側が楽しくなければ本人たちが辛いだけです。
そして、このまま続けたらつぶれてしまうかもしれないと、牛丸さんはわかっていたのかもしれません。
売れる音楽を理解したうえで『ここじゃない場所』を求め、自分たちの音楽を楽しみながら作ったともいえます。
つまり『ここじゃない場所』は故郷だけではないのかもしれません。
自分たちがやりたい音楽をやっていきたいという強い意思表示ともいえるのではないでしょうか。
なぜこんなにも『ここじゃない場所』が沁みるのか
この曲は故郷や故郷の友人を思い出して心をはせる経験がある方には、感情移入しやすい歌詞になっています。
どうしてこんなにも『ここじゃない場所』が沁みるのか考えてみました。
誰にでもある『ここじゃない場所』
ここじゃない場所を牛丸さんの故郷である寝屋川だと想定しました。
そしてその故郷は、どんな形であれ誰にとってもあるものです。
『ここじゃない場所』を聞いていると、なぜか自分の故郷を思い出すという方もいるのではないでしょうか。
良い思い出や嫌な思い出、時々ふとあの人やあの場所を思い出すからこそ心に沁みるのかもしれません。
口を持っているのに伝えられないもどかしさ
空がどれだけ青いかを言葉だけで伝えられずに口を持ったわたしたち
出典: ここじゃない場所/作詞:牛丸ありさ 作曲:牛丸ありさ
人間の口は物を食べるだけではなく、言葉を伝える道具としても使えます。
しかし、せっかく言葉を話せるのに言いたい事が言えなかったり、うまく表現できなかったりしませんか?
そして、うまく伝えられないもどかしく感じることがあるのではないでしょうか。
正しい言葉選びが出来ずに自分の思いとは裏腹に、相手を傷つけてしまうことだってあります。
そんなもどかしさをうまく表現している曲だからこそ、心に沁みるのです。