先の見えない今だからこそ
新レーベルを立ち上げたDaokoが2021年6月に発表したのが「fighting pose」です。
この楽曲は、Daokoが考えた強く生きることをテーマにしています。
急転直下といえるほどのスピードで変化した社会。
私たちの何気ない日常さえも簡単に奪われてしまうような出来事。
一分一秒、その先にどんな未来が待っているか分からない不安が多い世の中。
そんな中でも、光を大切にしよう。
多くの悩みや苦しみはあるけれど、日々の中になる光という名の希望を信じて。
過去の多くを羨む気持ちも起きるけれど、でも、今この時を楽しむことは大切。
そんな「fighting pose」には、意味深なリリックが沢山散りばめられています。
それでは、その魅力に深く迫っていきましょう。
温故知新というけれど
過去を振り返れば
何だか最近騒ついて落ち着かないよ心模様
子供の頃思い出すの純白の身体で
光取り込んでた きらきら透かして
ただただ私はきれいな眼で
自我に寄り添っていた
出典: fighting pose/作詞:Daoko 作曲:DJ6月 Daoko
振り返れば美しい思い出は沢山ある、多くの人が思うことではないでしょうか。
昔はよかった、幼い頃はもっと楽しかったなど。
このリリックでも同じような気持ちが表現されています。
今この時点での自分は、心が定まっておらず、ザワザワしたような気持ちにあるのでしょう。
自分の本心を自分でつかめない不安定感、そして、今という安定しない社会性。
その中で、どうするべきなのか、自分の道を定められず不安な気持ちでいる。
思い出すのは、幼い頃のこと。
小さな自分は全てに希望を感じていたし、純粋でキレイで自分を理解できていた。
ああ、あの頃はよかったな。
そんな風に今の自分と、過去の自分を比較して落胆しているようです。
過去と今のズレを
BTF 薄情な当事者 投じた儲蓄 命の価値
かくもをかし 昨今のジャポン 錯綜の過去
爆音の箱 咲かそうと咲かそうと必死な若者と
胡坐で固まる老人達
どうしようもありすぎてどうしたらいいの?
出典: fighting pose/作詞:Daoko 作曲:DJ6月 Daoko
今の日本にはどこかおかしいと首をひねる現象がいくつかあるようだ。
それは、時間も金銭にも、そして命にもいえること。
自分のことなのに、どこか他人事のような人々は多く存在する。
誰かに迷惑をかけるか否かよりも、自分が楽しいか気持ち良いかが左右される社会。
若き志ある人々は、自分達の夢を咲かそうと必死に生きている。
でも、そんな姿を横目に見ても老人達は知らんぷり。
むしろ楽な姿勢で、興味無さそうに動こうとさえしない。
過去には彼らだって、夢を持ち自分の花を「咲かそう」と動いたに違いないのに。
昔はきっとそんなことはなかった。
もっと、こんな薄情な世の中ではなかったはずだ。
変えたいけれど、みんなバラバラになってしまっているから、変える方法が見つからない。
珍重な言葉で表現しつつ、そんな社会を辛辣に描いているリリックともいえます。
やらかしてしまう毎日に募る悩み
戯れ言に振り回される日々に
最近どうなの?なにしてるの
安心しようにも素材がない
世迷言で濁る細胞
毎秒あっおー
出典: fighting pose/作詞:Daoko 作曲:DJ6月 Daoko
社会や価値観が大きく変わり、今、自分の平常心を守ることさえ難しい。
そんな世の中を生きるのは、とても大変なこと。
私は苦労しているけど、皆はどうしているのかな、なにしているのかな。
「安心」して生活したいけれど、そう思えるような根拠も「素材」も見つからない。
このリリックでは、そんな途方に暮れている心模様が描かれています。
そしてそんな途方に暮れている中でも、さらに追い打ちをかけられる状態があるようです。
「世迷言」つまり馬鹿馬鹿しく取るに足りないような戯れ言があふれかえる社会。
本来ならそれほど気に病む程ではない情報さえも私の心を侵食し、不安を募らせています。
そのため、毎日少しの瞬間さえも「あっおー」な状態だと表現しています。
これは「uh-oh」と表記する英語の感嘆詞。
失敗してしまったときや、やらかしてしまったときに思わず出る声が表現された言葉です。
つまり、毎日どのタイミングも失敗しているような気分だということ。
かなり気持ちがネガティブになっているのです。
やる気を見せても空まわる悩み
ファイティングポーズをとってみても
会心の一撃でないの
Lo-Fiの波を泳いでる
今日もあっおー
出典: fighting pose/作詞:Daoko 作曲:DJ6月 Daoko