音楽を演奏するのに技術は必要だけど…

ネット上であらゆる情報や映像が手に入る、便利とも情報過多とも取れる昨今。

そんな時代の煽りを受けてか、若くして演奏が上手なバンドというのも今は珍しくないように感じます。

演奏が上手いことが当たり前になって来たというのは、音楽業界にとっては追い風です。

良質なアーティストが増えれば、それだけシーンも盛り上がっていくというものでしょう。

初期衝動という言葉

演奏は上手いに越したことはありません。

しかし音楽というのはそれだけで計れるものではないというのもまた事実です。

ひと昔前、パンクロックが流行った頃なんかは、初期衝動という言葉がよく使われていました。

これはどういうことなのか、とても一言で説明出来るようなものではないのですが、要は「なんかよくわからないけど、すげえ!」みたいな感覚のことです。

音楽を演奏するのには技術ももちろん必要。

しかし音楽を演奏したいと思い至らせるのは、技術ではなく間違いなくこの気持ちです。

その気持ちを抱いたときというのは、アーティストたちも技術なんて意識していなかったはず。

そう考えると、やはり音楽には技術以外の面で人を感動させる力があるのです。

初期衝動がちょっと古い言葉に聞こえるようになってしまった今、今一度その言葉を体現するようなバンドが現れたことをご存知でしょうか。

そう、2016年に全く無名のところからスタートし、2018年現在一躍全国区の存在にまで上り詰めているバンドtetoです。

演奏技術を度外視した結成の経緯

まずtetoの結成の経緯を見ると、演奏技術を度外視しているような印象を受けます。

2016年1月、ボーカルギターの小池貞利が、職場の後輩であり、楽器未経験の佐藤健一郎をベースに誘い、埼玉でtetoを結成。 サポートメンバーを交え活動していたが、小池の弾き語りライブで偶然出会ったベーシストの山崎陸をギタリストとしてメンバーに招く。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Teto

全くの未経験者をベーシストに採用し、元々ベースをやっていた者をギタリストで採用する。

バンドを組むとなったら、普通は少しでも楽器経験がある人と組みたいと思うものです。

しかしボーカル、ギターの小池にそういう考えが少しもなかったことがこのことから垣間見えます。

演奏どうこうよりも、人間を見ていたということでしょうか?

そのときの背景は定かではありませんが、「なんとなくピンときたから誘った」のような印象が浮かびます。

果たしてバンドとはやってみないとわからないもの。

彼らが瞬く間に人気のバンドになっていったことを見ると、人の琴線に触れるものは理屈では語れないということにも頷けます。

バンドの知名度を押し上げた1曲「36.4」

【teto/36.4】歌詞&曲名の意味とは?酔った勢いの過ちがテーマ?!残ったのは頭痛と背徳心!の画像

そんな彼らの楽曲から今回紹介するのは2017年6月7日にHelsinki Lambda Clubとのスプリットシングルとしてリリースされた「split」の収録曲「36.4」。

この曲はSPACE SHOWER TVのパワープッシュにもなり、バンドの知名度をさらに押し上げた1曲でもあります。

一味違うかっこよさ…でも表現しがたい

カッコイイ!

そう、カッコイイのですが、最近流行っているようなバンドのかっこよさとは少し違う感じがしませんか?

恥も何もかも取っ払って本心をさらけ出しているかのようなそんなかっこよさです。

剥き出しの感情がヒリヒリと伝わってくる叫び声のような歌に、最後にはドラムセットも倒してしまうような荒々しいパフォーマンス。

まさに「なんかすげぇ!」という感じのバンドなんです。

楽曲を聴いていると、彼らがどんなことを考えながら演奏しているのかが気になって来ますね。

きっと歌詞の中から、そんな彼らの思考も垣間見えるのではないでしょうか。

ここからこの「36.4」という楽曲歌詞を順を追って解釈していきましょう!

自分はそうはならないと思っていたけど

快楽ジェットバスに浸った奴をぶっ飛ばす為のタイムマシーン
あぁはなるまいと誓っていた過去の自分が乗って来た気がしたんだ

出典: 36.4/作詞:小池貞利 作曲:小池貞利

目先の快楽にかまけて、後先考えないようなバカな真似はしないと思っていた主人公。

ここで登場するのは、そんなヤツをぶっ飛ばす為のタイムマシーンに気付けば自分が乗っていたという表現です。

つまり普段考えていた通りにはいかず、主人公に後先も考えず快楽にかまけてしまうような出来事があったのでしょう。

普段「バカだな」と思いながら見ていたその人たちと、今の自分が同じ状況にあるのです。

自分が思っていたよりバカだったということが露呈されたこの部分。

主人公の心情を表せば「やってしまったー…」といった感じでしょうか。