ジャパニーズパンクに「正解」を持ち込んだ「teto」

teto「高層ビルと人工衛星」の歌詞に込められた意味を解釈!今更気づいた失ったものとは?!の画像

かつてパンクロックはどこか道を外れたような危うさがありました。

かつてガレージロックは荒削りな精神を音楽で表現していました。

現在は、オシャレなパンクロックに合わせ、皆で手を挙げモッシュ・ダイブ!

有り体に言うと「ファッション」のように画一化されている印象があります。

しかし、そんな音楽大量生産消費社会に一石を投じるのが、4人組パンクバンドteto」(テト)です。

各方面から大注目のバンド

パンクロックとは、ガレージロックとは何ぞや。

J-POPとの境界線が曖昧な現代のロック界に「正解」を引っ提げてきたteto

音楽業界はもちろん、音楽ツウの著名人たちもこぞって「ヒット間違いなし」と太鼓判を押しています。

インディーズ1stEPの「Pain Pain Pain」は2016年10月10日のリリースと共に即完売状態に。

増産を繰り返し通販もされましたが、現在は廃盤となっています。

今回ご紹介する「高層ビルと人工衛星」は、このEPで初めて音源化されました。

「高層ビルと人工衛星」をピックアップ!

teto「高層ビルと人工衛星」の歌詞に込められた意味を解釈!今更気づいた失ったものとは?!の画像

2018年9月26日リリース、tetoの1stフルアルバム「手」

全15曲中2曲目に収録されている「高層ビルと人工衛星」歌詞をご紹介します。

ヴォーカル・ギターの小池貞利の言葉遊びや韻踏み遊びが心地よい一曲。

ガレージ色は薄め、軽快なパンクサウンドはtetoのキラーチューンと言えるでしょう。

懇願するようにも聴こえる歌声で紡がれる歌詞に込められた喪失とは何なのか。

ライトな音に相反するように潜む孤独を紐解いていきます。

喪失感は遅れてやって来る

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別れの瞬間は、それを甘んじて受け入れたのに、時が経つごとに寂しさが募ります。

彼女がここにいたら、自分はどうなっていたか。

自分の過ちを責める思いは、劣等感に変わっていきました。

海を見て別れ、海を見て思い出す

she see sea 甘い音に乗って
she see sea 苦い実含んで
she see sea 風に吹かれて泣いて
she see sea 今更わかって
わかって

出典: 高層ビルと人工衛星/作詞:小池貞利 作曲:小池貞利

”彼女は海を見ている”

英詞部分を直訳するとこのような歌詞になります。

海を眺めている彼女の姿を思い浮かべると、失った存在の大きさを痛感する「俺」。

恋人同士だった二人に訪れた恋愛の終わりを歌った曲なのでしょう。

海辺で隣に並んだ彼女の、優しくて甘い声で告げられた別れの言葉。

それは彼にとっては苦々しい味だったに違いありません。

別れを切り出されても仕方がない状況だったのか、甘んじてその味を受け入れました。

彼はその後一人で、海を訪れたのでしょう。

隣に誰もいない海は、別れた日よりも風を強く感じます。

隣りにあったはずの体温は消え、二人でいたあの日よりも潮風が冷たかったはずです。

彼女がいなくなったのだと改めて思い知り、涙します。

いなくなった彼女の存在が、自分の中でどれほど大きなものだったのか。

失った今分かっても、もう遅いのです。

自分にはどうすることもできなかった結末

普遍と不変に
塗り固められる場所で失ったことも
失って失って

出典: 高層ビルと人工衛星/作詞:小池貞利 作曲:小池貞利

小池貞利の真骨頂、言葉遊びです。

「普遍」と「不変」は同音ですが意味あいが微妙に異なります。

「普遍」は多くの人にとって変わらない常識のようなものを意味する言葉です。

対して、自分だけが持つ信念などにも使える言葉が「不変」。

この両者に塗り固められている場所とは、どういった意味なのでしょうか。

誰が見ても別れの予感しかしない場所、自分でも別れに向かっていると分かる場所。

「終わり」から逃れられない状況、という意味にとらえました。

そういった場所で彼女を失った瞬間、悲しみやショックを感じたはずです。

しかし、それを考えないように、自らその感情を「失う」つまり「忘れる」ように努めたのでしょう。

ある日突然に
枯れた歌声の聞こえてくるような季節は
気付けば過ぎた

出典: 高層ビルと人工衛星/作詞:小池貞利 作曲:小池貞利