赤い椿一輪
ひとり握りしめて
面影を残したまま
あの子は走り続ける

上がる息殺して
後ろは見ないで
滲む景色を横目に
涙を拭いた

出典: https://twitter.com/tuki_cos_tk/status/857637449073254400

「少女椿」というタイトルから示されているように、椿はみどりの象徴として描かれています。

しかし、その「赤い椿一輪」を「ひとり握りしめて」いる様子から、他の意味を含ませていそうです。

「面影を残したまま~涙を拭いた」というところは、みどりの悲しい生い立ちとサーカス団での辛い日々を表していますよね。

亡くなった母親の面影を宿す少女は、どんな道でも前に向かって進むしかない。後ろを振り返っても悲しいだけ。どうせ同じなら、前だけ見て走り続けるしかない。

もしかしたら自分にも訪れたかもしれない、家族みんなで幸せに暮らす景色が掠めるけれど、そんな日は来なかったと涙を拭い、気丈にふるまうみどりの様子が描かれているように思います。

そんな日々で握りしめている「赤い椿」です。

まだ知らない恋心、もっと言えば、この先少女が女として目覚めることを暗示しているのではないでしょうか。

花びらの間から光が差し込む時
禁断の林檎一つあの子はかじった

出典: https://twitter.com/tuki_cos_tk/status/857637449073254400

みどりの光となる存在が現れたとき、転機が訪れるようです。

「禁断の林檎」というのは、旧約聖書でアダムとイブがかじった禁断の果実と同じです。

その実をかじったことにより、結果的に二人が楽園から追放されてしまう話はよく知られていますよね。

また、物語などではしばしば良くない快楽、悪いと知りながらも魅力的なことなどを表し、男女の性を表すメタファーとしても使われます。

童謡のフレーズで世界観を補強

ジンタジンタジンタッタ
行きはヨイヨイ帰りは怖い
ジンタジンタジンタッタ
赤い靴履いて
ジンタジンタジンタッタ
勝ったら嬉しい花いちもんめ
よってらっしゃい見てらっしゃい
後ろの正面誰でしょか

出典: https://twitter.com/tuki_cos_tk/status/857637449073254400

ここからはジンタのリズムに乗せて、みどりを待ち受ける数奇な運命を描いています。

有名な童謡のフレーズをそのまま引用したり、パロディにしているのが特徴的ですね。

  • 「通りゃんせ」から「行きはヨイヨイ帰りは怖い」
  • 「赤い靴」から「赤い靴履いて」
  • 「花いちもんめ」から「勝ったら嬉しい花いちもんめ」
  • 「かごめかごめ」から「後ろの正面誰でしょか」

「通りゃんせ」では、幸せになれると思って行った道の先、本当なら幸せな終わりを迎えたいけれど、怖い帰り道があることも示唆しています。

「赤い靴」では、連れていかれた少女は帰っては来ませんでした。どんなに戻りたくても、もう戻れないのです。

「花いちもんめ」は花を売り買いする様子を歌った遊びの歌ですが、みどりはサーカスに拾われる前、花を売って生計を立てていました。その花をよく買っていたのがサーカス団の団長です。

都市伝説では、昔の少女売買を歌ったものではないかという説があり、みどりは買われたと捉えることもできますね。

「かごめかごめ」も遊び歌として知られていますが、「後ろの正面」をはじめとする不思議な表現で構成されていて、遊び歌の範囲を越えた解釈があるのではと言われます。

本当にみどりを幸せにする(あるいは、不幸にする)のは誰なのか(それは誰にもわからない)と、矛盾した問いかけを投げかけているようにも聞こえます。

花びらの 間から 光が差し込む時
虹色のシャボン玉 壊れて消えた
月が 見てる 私の事
いくら 逃げても ついてくる

出典: https://twitter.com/brillar_elmar/status/859058041949372416

ここでもまた、童謡「シャボン玉」のパロディが見られます。

みどりは幸せな未来、「虹色のシャボン玉」が大きく膨らんで、どこまでも飛んでいってほしいと願います。

しかし、それは叶わず、壊れて消えてしまう。みどりの願った幸せな未来は、シャボン玉のようにはかない夢だったのかもしれません。

ただし、みどりはただ不幸で可哀想なだけの女の子ではありません

女の子がみんな、ただ可愛いだけの存在ではないように、したたかでずるい一面も同時に持ち合わせています。

「月が見てる」というのは、「お天道様が見ているので悪いことはできない」と言われることと、ほぼ同じだと思います。

根っからの悪人で良くない考えを持っているわけではなく、自分のしてしまったことへの罪悪感がみどりを苦しめている様子がうかがえます。

夢見た少女は
花と散る

出典: https://twitter.com/brillar_elmar/status/859058041949372416

そして、ラストは「花と散る」。

戦場で散る、など亡くなる際によく使われる表現ですが、映画のラストで実際にみどりが死んでしまうわけではありません。

しかし、この物語の後、みどりは果たして生きていると言えるのでしょうか。

「少女椿」のファンも、「チャラン・ポ・ランタン」のファンも

【あの子のジンタ/チャラン・ポ・ランタン】隠された歌詞の意味を徹底解釈!映画『少女椿』主題歌♪の画像

引用されたたくさんの童謡は「花いちもんめ」「かごめかごめ」の都市伝説のように、怖い意味や悲しい意味を隠し持つ歌なのではと語られることが多いものですよね。

そのイメージを上手く利用することで映画主題歌としてストーリーを追いながら、ひとつの楽曲として聞く人にも世界観が掴みやすくなっていると思います。

「少女椿」のファンの人も、「チャラン・ポ・ランタン」のファンの人も、昭和の雰囲気を色濃く残すエログロナンセンスなアングラの世界で、ひとりの少女の人生を賭けた見世物に心を奪われる。

ジンタのリズムに乗せて、チャラン・ポ・ランタンの持つ妖しい魅力が存分に発揮された1曲になっていると思います。

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