短い映像に深い意味が詰め込まれたAimer『We Two』のMV
今回ご紹介する曲は、Aimerの『We Two』。5thアルバムに収録されています。
この曲はタイアップ曲やシングル曲ではありませんが、ショートバージョンのMVが制作されました。
1分23秒という短い映像の中に、どんな世界が広がっているのでしょうか。
まずはMVをご覧ください。
『We Two』のMVから生じる疑問
実写でもアニメーションでもない、インパクト強めのMVですね。
曲調は比較的ダンサブルで、MVの中の女子高校生も楽しげに踊っています。
一度観ればおおよそのストーリーが理解できる、シンプルな構成です。
女子高校生が街で見かけたダンサーに憧れて、真似して踊ったもののうまくはいかない。
疲れ果てて眠ってしまった彼女の夢の中が映し出される、といった流れになっています。
MV中の「これは何?」を3つピックアップ!
MVのストーリー構成がシンプルだからこそ、いくつか気になるポイントがあります。
今回深掘りするのは次の3点です。
- 実写でもアニメでもない映像にしたのはなぜか
- 色がある世界・ない世界の意味
- 太陽は何を表現しているのか
この3つの謎を解きながら、MVの意味に迫ります!
実写でもアニメでもない映像にした理由
今回のMVで特徴的なのが、実写のようなアニメのような不思議な映像です。
実はこの映像、女優・石川瑠華をモデルとして制作されました。
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ロトスコープ
この撮影手法は「ロトスコープ」と呼ばれています。
ロトスコープ(アニメーション)
モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法。マックス・フライシャーにより考案され、短編アニメーション映画『インク壺の外へ』(1919年)で初めて商業作品に使用された。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ロトスコープ
Aimer以外にも、MVにロトスコープを用いているアーティストはいます。
アーティスト自身をシルエット映像にしているケースでは、シルエットを見ただけで「本人だ!」と分かります。
この場合はあまり違和感がありません。
しかし今回のMVに登場したのはAimer本人ではなく、公開時は名前も分かりませんでした。
またシルエットではないためリアリティがあるのに、口元以外の顔のパーツが描かれておらず、アンバランスです。
誰だか分からない。口元しか描かれていない。これが違和感の根本原因なのでしょう。
そしてこれが、MVの世界観にリスナーを巻き込む大きな効果を発揮しているのです。
誰か分からないから自分に置き換えるのも簡単!
もしもこのMVが通常のアニメーションだったら、キャラクターは表情を持ち、特徴を持つでしょう。
例え名前がなくても、リスナーは「MV・曲の主役はそのキャラクター」だと認識します。
もしもこのMVが石川瑠華出演の実写映像であれば、「MV・曲の主役は石川瑠華」なのだという認識を持つでしょう。
しかし、今回のMVで「主役は誰?」と質問されても答えようがありません。
つまり、誰でも良いのです。
ダンサーに憧れて、自宅で真似てみて、落胆して寝落ちしてしまう主人公。
そんなありふれた人物だからこそ、リスナーは「自分」を投影しやすくなるのではないでしょうか。
美少女キャラでも美人な女優でもないからこそ「一般人の自分」を重ねやすくなるのだと考察しました。
ロトスコープを用いたことによって、リスナーがより共感できるMVに仕上がっているのです。