ネバー・ギブアップ!

魚は全速力で泳ぐと鱗がはがれる

暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく
光ってるのは傷ついてはがれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね
やせこけて そんなにやせこけて魚たちのぼってゆく
勝つか負けるかそれはわからない それでもとにかく闘いの
出場通知を抱きしめて あいつは海になりました

出典: ファイト!/作詞/中島みゆき 作曲:中島みゆき

それでは2番の歌詞をみていきましょう。

2番の歌詞では主人公を魚に例えています

魚は危険が迫ると全速力で泳いで敵から逃げます。

しかし、それを続けすぎると全身を覆う鱗が剥がれ落ち、魚は死にます。

今、主人公が置かれている境遇は暗く冷たい世の中です。

それも大都会のど真ん中。

敵対心猜疑心に満ち溢れたところなのです。

魂が休まる暇もないくらい、毎日があわただしく過ぎ去ってゆく。

しかし、そこには休憩すら許されない激しい競争が待っています。

こんな場所で泳ぎ続けたら、いつか鱗が剥がれ落ちて脱落してゆくでしょう。

それでも必死に泳いで行け!

でも、そんな場所を選んだの主人公自身なのです。

選んだからには負けたくありません

嫉妬や妬み。意地悪。油断したらすぐに蹴落とされる欲望渦巻く世界。

しかし、ここで這い上がると主人公は決心したのです。

そう決めたからには「ネバー・ギブアップ!」です。

助けは誰からもないけれど自分で選んだ道だから。

弱音を吐かずに今日も主人公は世の中という大海原に飛び込んでいったのです。

負けるもんか!

主人公の頑張りを応援したくなりますね。

そして歌詞はサビの部分を繰り返します。

田舎者にされたくない

村社会の閉塞感

薄情もんが田舎の町に あと足で砂ばかけるって言われてさ
出てくならおまえの身内も住めんようにしちゃるって言われてさ
うっかり燃やしたことにしてやっぱり燃やせんかったこの切符
あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京ゆき

出典: ファイト!/作詞/中島みゆき 作曲:中島みゆき

主人公は田舎生まれの田舎育ちです。

そこには人情や義理というものが見えない掟をつくっています。

ルールを破るのものは「村八分」というむごい仕打ちを受けました。

よそ者は相手にしない。

出てゆくものも悪者扱い。

ずっと村に閉じこもって村を守るために生まれてきたのさ。

こんな考えがみんなを支配する村社会。

主人公が可能性夢を求めて都会に出てゆきたくなるのは当然の理なのです。

野望を叶える大志を持ってこそ、人間として生まれていた価値があるからです。

裏切り者と言われてもかまわない

主人公は意を決して大都会・東京へ行きます。

そこでどれだけもまれるかわからないけれど、頑張るつもりです。

しかし、気がかりは残してきた家族のこと。

村のみんなから悪くされていないだろうか?

それだけが心配なのです。

ああ、どうして人間というものはこんなにエゴイストなのだろうか。

村から出ていくことはそれほど罪悪なのだろうか?

まだ若い主人公は世の中の矛盾に思い悩みます。

しかし、その答えは自分が出して見せる。

きっと故郷を見返してみせる

それまで裏切り者とののしられてもかまわない。

お父さん、お母さん、心配かけるけどそれまで待っておいてほしい。

絶対、成功して帰ってくるから。

主人公は夜行の汽車に乗り、涙を流しながらそう誓うのでした。

歌詞は再び、サビを繰り返します。

男尊女卑の世の中

いわれないようのないこの差別感

あたし男だったらよかったわ 力ずくで男の思うままに
ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ
ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく
諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく

出典: ファイト!/作詞/中島みゆき 作曲:中島みゆき

どうしてこんなに不公平なの?

主人公は心底、そう思ったのです。

夢にまでみた都会に出てきた。そして死に物狂いで頑張った。

人の嫌がる仕事を率先してやり、人の倍、働いた。

でも、なんの報いもない。

あるのはいつまでたっても「女」であるがために受ける差別ばかり

これが夢にまでみた大都会・東京の実態なの?

現実の厳しさと絶望感に主人公は生きる術も勇気も失ってゆくのでした。