ボクらの間に
変わらないものを数え
約束にくらみ
いくつもの橋を渡った

出典: 金星/作詞:平沢進 作曲:平沢進

遠い存在の君とボクの間には、普遍的な約束があったのでしょう。

それが永遠に変わらないものだとしても、遠い存在のキミを感じられないのでは不安になってしまうものです。

その不安を抱えながら、それでもボクはその約束をなかったことにはできないようです。

キミとボクが交わした「約束」を頼りに、いくつもの橋を渡りさまよいます。

ひとすじの光が

あの日から消えた
星が今川面に映る
水かさよ増せ 溢れ キミへとボクを埋めて

出典: 金星/作詞:平沢進 作曲:平沢進

キミとボクをつなぐ星がついに川面に映りました。

待ちに待っていた瞬間です。ボクはこの日を待っていました。

星が消えたのは、キミが遠くへ離れてしまった日のことなのでしょう。

闇夜を照らすキミがいなくなったことで、ボクはずっと暗闇の中をさまよっていたのかもしれません。

しかし、ついにキミを感じられる瞬間が訪れたのです。

ボクの、キミに対する思いがあふれ出ているのがよくわかる歌詞になっています。

水は生命の根源ともいえる、人にとってなくてはならないものです。

その水を媒体として、キミとボクがつながりたいと願う気持ちが表れています。

互いの距離を埋めることは、きっと簡単なことではないのでしょう。

しかし、変幻自在に周囲を満たす水であれば、その距離を埋めることができるはずです。

水が溢れてくれればキミとボクはつながれるのに、といった熱い思いが込められています。

ボクの頼りは歌だった

いつか陽を仰いで
消えた星が見えた日は
地の果てに預けたあの
地図の歌をうたおう
“ボクはキミだから” と
“ボクはキミだから” と………

出典: 金星/作詞:平沢進 作曲:平沢進

金星の表現はいくつかありますが、ここで示されているのは「明けの明星」でしょう。

そこで頼りにしていた、地の果ての存在に預けた歌を歌います。

ボクとキミのつながりは強固で絶対に切れないものであることをボクはずっと分かっていたのでしょう。

ほんとは、ボクとキミは同じで一心同体ということに、魂レベルで初めからわかっていたのです。

しかし、どれだけ強くそう思っていても、側にいないことで不安は募ってしまいます。

その不安から一度は思いを遠くへ離してしまったけれど、もう一度キミとのつながりを再確認したのでしょう。

一度離したからこそ、ボクはキミへの思いを強くしているのだと読み取れます。

金星とボクから紐解く

歌と地図

言葉には不思議なほどのエネルギーがあり、人と思いを通わせるために欠かせないツールです。

そして歌にもその力は宿っており、目に見える形がなくても、歌や言葉でつながれます。

歌や言葉を発することで、言葉は「言霊」としてエネルギーを持ち、いつまでも残り続けるでしょう。

そして「地図」もちろん大事です。

「地図」は古くから航海の際にも用いられてきました。

道に迷わないように重要な役割を担う地図は、歴史の中で非常に重宝されてきたものです。

しかし「地図」はあくまでもツールであり、そこから何かを訴えかけることはできません。

「地図」ではなく「地図の歌」にして言葉を紡いだことがボクとキミをつなげたのでしょう。

思いを言霊にのせて形にし、それが地図に託されて迷わずキミの元へと届いたとも考えられます。

美の象徴でもある『金星』

金星は地球と大きさや重さはほぼ同じの惑星です。

ローマ神話においては豊かさをつかさどる女神の名前として知られています。

このため、美の象徴、愛の象徴、豊かな芸術性をつかさどる惑星として『金星』は名をはせているのです。

このように、『金星』は様々な観点からしても美の象徴とされていることがわかります。

ボクにとってキミは金星のように美や愛の象徴だったのでしょう。

美や愛を兼ね備えたキミのことは、遠く恋焦がれる存在だったのです。

しかし、本当は全く手の届かない遠い存在ではなく、心でつながっていることをボクは最後に自覚します。

それは、キミの存在を近くに感じることができたからこそのことでもあるでしょう。

どれだけ離れていようとも消えないつながりが、2人の間には確かに存在しているのです。

最後に

平沢進【金星】歌詞の意味を徹底考察!何のために船を急がせるの?キミへの変わらない想いを解き明かすの画像

今回は平沢進の『金星』の歌詞を読み解きました。

金星は美の象徴でもあります。

ボクは金星をキミになぞらえ、あふれる切なく、変わらない気持ちを歌い上げたのでしょう。

この楽曲は深堀りすればするほど、答えも終わりもなく、まさに果てしないものです。

無限の可能性を秘めた、文学的で素晴らしい楽曲といえるでしょう。

この楽曲のように、平沢進の楽曲には意味深で文学的な歌詞のものが多くあります。

『Lotus』もその中の1曲であり、その歌詞を解説しているのがこちらの記事です。