「野良り」という言葉を使って主人公の現実を表現しているサビ部分です。

主人公の重苦しい足取りがうまく表現されています。

何回も何回もつらく苦しい夜を越えた

私はずっと あれからずっと あのままずっと 変わってないよ
野良り 昏り 意味もなく歩いた夜を跨いで

出典: DROP/作詞:美波 作曲:美波

都会に出る前を知っている昔の仲間につぶやいているような歌詞です。

もしかして都会に出て変わったねと言われていたのかもしれません。

でも、1周回って現実に戻り、主人公は昔の自分から進化してはいない事実を知るのです。

普通だったら「のらりくらり」と書くところですが、美波はのらりを「野良り」と表現。

野良犬のようにさまよい歩くイメージを字に込めたのでしょう。

「昏り」は、黄昏(たそがれ)の「昏」の字を使って表現しています。

めったに目にすることはありませんが、「昏れる」と書いて「くれる」と読むケースもあります。

意味としては「日が沈みあたりが暗くなるようなさま」。

まさに野良犬のように夕暮れをさまよい歩く様子をうまく表しています。

「夜をまたぐ」というのは、何度も何度もそんな夜を重ねたということです。

いいことなんて何もなく自暴自棄に

朝にはきっと 治るからって 繰り返してって 元どおりなんだ
今宵も夢詐欺夢泥棒の
アバランチだな

出典: DROP/作詞:美波 作曲:美波

朝になったら、夢に見たようなキラキラした世界にいるって思いなおして朝を迎える。

けれどやっぱり、毎晩毎晩、どうにもならないすさんだ気持ちになってしまうのでしょう。

夢のような話をしてくれても実現しないし、自分の夢だったものを誰かが代わりに叶えてしまう。

結局どちらにしても、自分の夢だけは叶わない。

アバランチは「雪崩」を意味するのですが、夢が雪崩のように崩れ落ちていくという意味です。

主人公の見る東京の景色に安らぎはない

東京 激戦区
くだらない妄想しないように 見ないように
起きないように 覚めないようにって
今日も分かり易すぎんだろ
どこもかしこも赤と青だけの選択肢(おうだんほどう)だ

出典: DROP/作詞:美波 作曲:美波

東京は夢をかなえたい人が集まりすぎる激戦区なのです。

主人公が本気でかなえたかった夢は、妄想だったわけではありません。

でも、夢はかなわないから、単に妄想だったのかもしれないと卑下しています。

つらい現実は見たくないから、寝たまま起きたくもないし、そもそも目を覚ましたくもない。

どこもかしこも赤と青、どちらかしか選べない世界。

それはまるで横断歩道の信号機のようだと主人公は言っています。

夢をあきらめようとする主人公の葛藤

だんだん都会で生きていくのがつらくなってきた主人公が感じられるシーンです。

疲れてしまったのでしょう。自問自答をしながらも、徐々に心が解放されていきます。

もうちょっとがんばりたかった思いもある

それからずっと 僕らはきっと 明日(よあけ)にずっと 怯えるのだろうか
かなり 目迷(めまい)すぐに慣れてしまう自分怖くて
満たされたって 満たせなかった
前よりもずっと息(いき)づらくなった
まだきっと迷えたんだろうか

出典: DROP/作詞:美波 作曲:美波

主人公が満たされたのは、きっと東京に出て成功してやると思った部分でしょう。

でも、上京することは達成できても、そこで成功することまではできなかった。

成功したという心の充足感が得られないのが「満たされない」気持ちです。

結果的に、ふがいない自分に対するイライラやうまくいかない生きづらさ。

息をするのもつらい感覚と、生きづらい気持ちを「いきづらい」にかけています。

とはいえ、せっかく出てきた東京だし、もうちょっと頑張ればうまくいくのかな。

自分は今、夢がかなう道のどの段階にいるのだろうか。

あきらめたいけれどあきらめられない、淡い期待もまだ心の中にはあるようです。

慰め合える仲間ができたのもこの都会だった