歌謡曲の歌詞の味わい深い部分というのはいろいろありますが、直接的な表現ではなく、情景や情感を伝えるようなところがいいと思います。
「つぐない」も、そういう部分で歌謡曲の歌詞として非常に素晴らしいものになっていると思います。
舞台はおそらく、主人公の女性の部屋なのでしょう。
いつもあなたの匂いがする部屋。彼がこの部屋に来たときには、いつもこの部屋にいたのだと思います。
それを「窓に西陽が当たる部屋」と表現するのが非常に詩的で情感豊かですね。
彼が出て行ってしまった今、思い出がありすぎるこの部屋で過ごすのはつらい。そんな主人公の気持ちがよく伝わってきます。
「壁の傷も残したままおいてゆくわ」という歌詞も味わい深いです。
壁の傷がどのようにして付いたのかはわかりませんが、彼との思い出の一つとして残っているものなのでしょう。
それを残していく、と言うことで、あなたとの思い出もこれで終わり、と言うことを匂わせているのではないでしょうか。
愛をつぐなえば 別れになるけど
こんな女でも 忘れないでね
やさしすぎたの あなた
子供みたいな あなた
あすは他人同志に なるけれど
出典: つぐない/作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし
この曲はあからさまに不倫を歌った曲ではありません。
しかし、この「つぐない」というタイトルと、サビの「愛をつぐなえば 別れになるけど」と言う歌詞がその可能性をにおわせています。
つぐなうということは、「過ちだった」と言うことを示しています。
最初から過ちとわかっている愛、と考えると、不倫だったのかもと思えてきます。
このように全てをはっきりと言わないところも歌謡曲の「味」ではないでしょうか。
心のこりは あなたのこと
少し煙草も ひかえめにして
過去にしばられ 暮らすことより
わたしよりも可愛い人 探すことよ
出典: つぐない/作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし
別れることにはなっても、主人公はまだ彼のことを想っています。
煙草もひかえめにして、と体のことを気づかっています。
その反面、過去にしばられず私のことは忘れて、別の人を見つけてねと歌っています。
最後に少し強がって見せて、別れたくない気持ちを隠しているのかな、と思うような歌詞です。深いですね。
愛をつぐなえば 重荷になるから
この町を離れ 暮らしてみるわ
お酒のむのも ひとり
夢を見るのも ひとり
あすは他人同志に なるけれど
出典: つぐない/作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし
読めば読むほど、味わい深い歌詞だと思います。
歌っている歌詞は女性目線のものですが、こんな台詞を言われてみたい、と男性ファンがこぞってこの曲を買ったのもヒットの要因でした。
最後に
「アジアの歌姫」と呼ばれたテレサ・テンの代表曲「つぐない」をご紹介しました。
この曲は、石川さゆり、島倉千代子、つるの剛士、JUJUなど多くのアーティストによってカバーされています。
昭和歌謡曲を代表する名曲であると同時に、今も多くの人の心に刺さる名曲なのです。
演歌とか歌謡曲とか興味ない、という人にこそ聞いていただきたいと思います。
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